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「暗黒面の寓話・#7:七人様」
(Sub:かつて人類を救ってくれたヒーローの素顔は、、、)
今日は俺の舎弟の話をする。
俺達はとあるチームのメンバーだ。
この世で最も効果的な交渉術、武力をもって相手を納得させるネゴシエーター集団、それが俺達だ。
俺たちのチームは “裏社会” でも武闘派として名が通っていて、些細なもめ事などは得意の交渉術を駆使するまでもなくチームの名前を出すだけで片付いてしまうほどだ。
チームのメンバーはそれぞれが一癖も二癖もある曲者ぞろいであったが、互いを “兄弟“ と呼びあい硬い信頼と絆で結ばれている。
俺自身もこのチームに身を寄せるまでは “憂う虎” と仇名された無法者だったが、リーダー(長兄)に諭(調伏)されてチームに加わり、“更生プログラム” なども経験して今は多少はまともな生き方ができるようになった。
だからこそ今、一人の舎弟のことを思うと心がいたたまれなくなる。
ヤツの破天荒ぶりはまさに “荒ぶる魂“ そのものだ。
ヤツは戦場で使う斧を日頃から頭頂部に括り付けて生活しており、
些細な事でも興奮すると問答無用にその斧で相手の頭を勝ち割ろうとする。
またヤツは、俺達無法者が “修羅の路をゆく証” として躰に刻む赤い入れ墨を入れすぎて、ほぼ全身が赤い墨に覆われてしまっている。
その異様な容姿からかつては “赤鬼” と呼ばれていたほどだ。
だがヤツは、今は “別の仇名“ で呼ばれている。
“七人様” と
戦場で相手を殺める際に、
「お前が七人目」
と呟いてから斧を振り下ろすからだ。
ヤツがこれまでに殺めた命は7つどころではないのだが、いつも “七人目” と呟くのだ。
ヤツには妙な信仰があり、なんでも地獄で張付けにされているヤツの魂が解放されるにはその身替わりとなる7つの特別な魂が必要なのだという。
そしてまだ7つ目の魂が揃わないのだそうだ。
戦場で初めてヤツを見たとき、さすがの俺も身震いがしたのを覚えている。
斧を振りまわして、“七人目”、“七人目”、と呟きながら襲い掛かってくる様はまさに悪鬼そのものだった。
獣のように襲い掛かってきたヤツをリーダー(長兄)と二人掛かりで諭(調伏)したのだ。
その後、ヤツが俺達についてくるようになったのでチームに入れることにした。
リーダー(長兄)曰く、野放しにしておくと世間の迷惑になるからと。
(因みにうちのリーダー(長兄)は凄まじく強い。彼と一緒でなかったら俺が “七人目” になっていたかもしれない)
チームに加わってからはリーダー(長兄)や俺の言うことには従うようになり、普段は大人しくなったのだが、日頃抑えているせいかいざ戦いとなるとヤツの暴れ方は以前にもまして凄まじくなった。
最近はリーダー(長兄)や俺を真似て少しは光線技も使うようにもなったが、逆上すると相変わらず頭の斧を振り回してめちゃくちゃに相手に飛び掛かってゆく。
このままではいつかそのデタラメな戦いの中でその身を滅ぼしてしまうかもしれない。
まるで自分自身の魂を7つ目の “ミサキ” として捧げようとしているかのようだ。
俺はそんなヤツが昔の自分を見ているようでいたたまれなくなる。
早くヤツの魂が安らぐ日が訪れてくれるように願わずにはいられない。
他者の命を狩り続け、いつしか “七人様” と呼ばれるようになった舎弟。
あるいは、裏社会の者は恐れを込めてヤツを呼ぶ “セブン” と。