「暗黒面の寓話・#41:3人の魔人」
( Sub:1、Satu ・サトゥ 2、Dua・ドゥア 3、Tiga・ティガ )
“メル“ は急いでいた。
一刻も早くその場所に辿り着かなければならないのだ。
予言されていた “魔人” の復活が近づき、それを阻止するべく眠りについていたガーディアンの自分が目覚めたのはつい先日のことだ。
同じく遠い地で眠りについていた相棒の “ゴル“ も目覚めているはずだ。
だが、“ゴル” のやつは足が遅い。
“魔人” が完全に目覚めてしまったら、もう自分達に未来はない。
自分だけでも “その場” に駆け付けて魔人の復活を阻止しなければならない。
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遥かなむかし、この世界の覇権を争って2つの勢力が戦った。
争いは熾烈を極め、双方が死力を尽くして戦った結果、世界は荒廃した。
あまりにも激しく争った為、双方共に大きなダメージを負ってしまいそれ以上戦うことができなくなり、どちらの勢力も長い眠りについた。
だが、双方ともに遠い未来での決戦に備えて最大の戦力を温存していた。
メルの所属する勢力でも最強の “王“ がスリープしていたが、彼は強大であるがゆえに復活にとても時間がかかるのだ。
対して、敵勢力では3人の魔人が何処かでスリープしているはずだった。
3人の魔人はそれぞれがとても強力で、3人が揃って復活してしまったら、いかに強大な力を持っている我が ”王” であっても立ち向かうのは難しい。
だから、3人の魔人が揃って復活する前に、なんとしてもそれを妨害し、できることならば排除してしまうべきなのだ。
メルは飛行速度を限界まで上げながら、密かに覚悟を決めた。
たとえゴルが間に合わなくても、自分一人でも魔人の復活を阻止するのだ。
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音速で飛行するメルの視界に白銀に輝くピラミッドが見えてきた。
あれこそが魔人が眠る “光の墓所” に違いない。
その時、そのはるか向こうに濛々と立ち上がる土煙が見えた。
地上を巨大な何かが爆走してくるのだ。
メルにはそれが何かすぐにわかった。
それは山を突き崩しながら突進してくるゴルの姿だった。
“あの鈍足野郎、、間に合ったのか!?”
ゴルは力こそ強いが、空を飛ぶことができない “パワー・タイプ“ だ。
空を飛ぶことができる自分と違って、ゴルがこの場に駆け付けるのはどれほどの無理をしたことだろう。 それでもヤツはやってきた。
“鈍足のくせに無茶しやがって、、”、
予想を裏切って登場した相棒の姿に頼もしい気持ちが溢れてくる。
その気持ちと共にメルはピラミッドをめがけて突進した。
同時にゴルもピラミッドにとりつき突き崩し始めている。
ピラミッドの中には3体の石像が安置されていた。
その石像こそが眠っている魔人なのだ。
魔人はまだ目覚めることなく無力な石像のままそこに立っている。
《 間に合った! 》
メルは役目を果たせる喜びに震えながら、ゴルと共に石像を破壊してゆく。
だが、けしてガムシャラに破壊しているわけではなかった。
3人の魔人はそれぞれ強さが異なり、強さに準じて順位が決まっていた。
最も強い1位の魔人がSatu (サトゥ)、次ぐ強さの2位の魔人がDua (ドゥア)、3人の中で一番弱い3番目の魔人がTiga (ティガ)と呼ばれていた。
ここは冷静に脅威度の高い上位の魔人から排除してゆくのだ。
その考えはゴルにも伝わったらしく、メルが1位の魔人像を破壊し始めるとゴルは2位の魔人像を攻撃し始めた。
“脳筋バカだと思ってたけど、ちゃんと解ってるじゃん”
メルは感心しながらも、懸命に目の前の魔人像を突き崩し続けた。
その横では、すでに1体の魔人像を壊し終えたゴルが残った3番目の魔人像を破壊しようとしていた。
こうした力仕事はパワーがあるゴルの方がシゴトが早い。
ゴルが3番目の魔人像に襲いかかろうとしたその時、
一閃の光が奔り、魔人像が動き出した。
魔人が蘇ったのだ!
まさかの事態にメルは動揺した。
自分たちは魔人が復活する前にこの地に辿り着いていたはずだった。
最上位とそれに次ぐ2位の魔人の躰を破壊し、彼らの目的は順当に遂行されているように見えていた。
だが、今、、3番目の魔人が目覚めようとしている。
メルはとっさに覚悟を決めて、動き出した魔人に襲い掛かった。
ゴルも同じ判断をしたようで、第三の魔人に飛び掛かろうとしている。
だが、メルは判っていた。
飛行能力と敏捷性に特化した ”スカイ・タイプ” の自分では戦闘で魔人にかなうはずがない。
それでも、一瞬の時間を稼ぐことはできる。
自分が囮となって魔人の注意をひけば、一撃に勝るゴルが魔人を倒してくれるだろう。
メルは全てをゴルに託し、魔人と正面から激突するコースへと飛翔した。
少なくとも、最大の脅威であった1位と2位の魔人の復活は阻止することができたのだ。
第三位の魔人は復活してしまったが、それでも力に劣る第三位の魔人だけならば我らが王がおくれをとることはないだろう。
少なくとも自分は最低限の役目は果たすことができたのだ。
後はゴルとまだ目覚めていない仲間達に託してもよいはずだ。
《 メルバ 》 は蘇った魔人が放った “石化光線” をその身に受けながら、最後の咆哮をあげた。
《 ゴルザ 》よ、あとは頼む!”、
やさしさと静寂につつまれた夜の世界を守る為、蘇った魔人を倒すのだ!
蘇った魔人の名は《 ウリトラマン・ティガ 》、
この世界を無慈悲に照らす光の狂戦士だ。