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『抽象のラビリンスー夢みる色と形』 鑑賞/観賞/観照/Misakiのアート万華鏡

前口上

夢ってせっけんの泡みたい。
ラビリンスって蛇の道みたい。では、友達って何みたい?
抽象は儚い幻影で、憂うつは無心になれば消え去るのかもしれない。
アートはすでに私の正体を明らかにした。
自分の中の別人を手繰り寄せることで、アートを楽しんだ。

アール・ブリュット(Art Brut)

アール・ブリュットとは何か、ご存知ですか?あまり聞きなれない。広く専門的な美術の教育を受けていない人などによる、独自の発想や表現方法が注目されるアートとのこと。元々、フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェによって提唱された言葉。

さて、昨日は、渋谷公園通りギャラリーまで『抽象のラビリンスー夢みる色と形』アール・ブリュット2024巡回展を観に行きました。

今回、アール・ブリュットにおける「抽象」の表現にあらためて注目し、日本の作家7名の自由で想像をかきたてる作品世界を都内3カ所に巡回して紹介するそうです。

気に入ったのは柴田鋭一さんの作品群。最初は数字の「2」と「3」を描いていたけれども、そのうち「せっけんのせ」と呼ばれる作品を描くようになったそう。水性ボールペン、マーカーなどで、石鹸の泡や、植物の蔓を思わせる曲線を描いてらっしゃいました。線の間には、大小の点や小さな四角い形が浮かんでいます。それぞれの線や形は反発しあい、重なり合いながら、
ひとつの世界を創り上げています。

柴田さんは水遊びが好きだとのこと。濡れた手で制作中の作品を触ることもあり、自然に絵に深みが出るのでしょう。最近では彼の作品では海外でも注目されているようですよ。

他にも6人の作家の作品がたくさん。箭内祐樹さんは元々は和紙作りの仕事をされていたそうです。「川口太陽の家」のスタッフと一緒に好きな色のボールペンで、四角く区切られたそれぞれのマスを塗りつぶしていきますが、その中に笑顔の人物を描いています。それがなかなか可愛い。観ているとほっこり、心が猫のようにやわらかに動き出すように感じましたねえ。

たとえば土橋美穂さん。養護学校卒業後、民間企業や複数の福祉事業所で就労されたとのこと。現在は自家焙煎のコーヒー店「8・18」で創作活動をされているそうです。絵を描くようになったのは「8・18」のスタッフにすすめられたから。水性ペンやアクリル絵の具を使って、抽象的な作品を制作しています。ゲストキュレーターのゴメズ氏によると、「水のように広がる圧倒的な色彩表現や、シンプルな円や平行線の集合体のような、より抑制された、静寂を伴なうミニマリストの手法を取り入れた表現など、さまざまな抽象的な表現を持っている」土橋さんの作品も心に残りました。

今回注目したのは、ゲストキュレーターの存在。エドワード・M・ゴメズ氏。美術評論家として『ニューヨークタイムズ』などで編集者として活躍された方です。

昨今、障害者アートという言葉がありますが、今回の展示の中の何名かは福祉作業所で働きながら同時にアーティスト活動されている方々がいらっしゃいます。ゴメズ氏は障害者だから、という観点で彼らのアートを評価しているのではなく、客観的に彼らのアートの素晴らしさを評価しているところが、本当にダイバーシティ、差別のない対応を感じた次第で、とても洗練された展示会だと感じました。

それでは、また~☆彡


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