Misaki

多文化体験を通じてアートに魅了されました。日本と世界のアートを多角的に紹介し、その魅力を発信します。 /「Misakiのアート万華鏡」

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多文化体験を通じてアートに魅了されました。日本と世界のアートを多角的に紹介し、その魅力を発信します。 /「Misakiのアート万華鏡」

最近の記事

建仁寺が教えてくれる「引き算の美学」/Misakiのアート万華鏡

建仁寺と禅文化の魅力  建仁寺は、京都最古の禅寺。源頼家の庇護を受け、栄西禅師が創建した。その庭や建築には、禅の精神が宿る。建仁寺は外国人観光客で賑わっていた。禅文化の粋を集めた貴重な寺院だ。伝統的な庭園、建築、茶道の神髄を体現し、世界中から観光客を魅了している。日本文化、とりわけ禅の思想と美学が、いかに普遍的な魅力を持つのか。その魅力の源泉を探る鍵となるのが、「引き算の美学」だ。  ここでは、建仁寺と「引き算の美学」について語っていきたい。「引き算の美学」とは、一体何を

    • なぜ起業家は現代アートに惹かれるのか/Misakiのアート万華鏡

      現代アートとは何か 現代アートとは何か。それは1917年、マルセル・デュシャンが男子用便器をさかさまにしてR・マットと署名したときに始まった。美術といえば絵画と彫刻しか存在しなかった時代、主催団体の理事たちは困惑し、激論の末に出展を拒否した。しかしデュシャンの代表作《泉》は、現代アートの歴史における重要な転換点となった。  20世紀初頭は、政治・社会制度、科学、技術に限らず、芸術の諸分野においても革新が行われた時代だった。デュシャンは、芸術の定義を問い直し、日常の物に芸術

      • なぜいま一村か| Misakiのアート万華鏡

         上野の東京都美術館で、近年再評価が高まる画家・田中一村(1908〜77)の大回顧展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」を鑑賞した。 孤高の画家、その波乱の生涯 その名は、どこか懐かしい響きとともに心に刻まれる。幼少の頃から南画に親しみ、東京美術学校(現 東京藝術大学)に入学するも、わずか2ヶ月で退学した一村。表向きは家庭の都合とされているが、実際には強い個性ゆえに学校を去ることを余儀なくされたという。当時の日本画界では厳格な師弟関係が支配的だったのだ。その後、独学で画道を

        • 空を発見する| Misakiのアート万華鏡

          空の表情、表情の空  朝の青空、夕暮れの茜空、星空、雨雲垂れ込める空...。私たちの上にはいつも空が広がっている。でも、この当たり前に存在する「空」は、日本の美術の中でどのように描かれてきたのだろうか。  渋谷区立松濤美術館の「空の発見」展は、そんな素朴な疑問から始まる。特に興味深いのは、日本美術において、なぜ長い間「空」があまり描かれてこなかったのか、という問いかけだ。 日本美術における空の変遷  展示室に入ってまず目に飛び込んでくるのは、金色の雲が画面いっぱいに広が

          シュールなお月さまよ、こんにちは | Misakiのアート万華鏡

           原宿のNANZUKA UNDERGROUNDで、いま注目のインドネシア人アーティスト、ロビィ・ドゥウィ・アントノによる新作個展『LUNAR RITUALS(月の儀式)』を観てきた。  展示されている作品群は、まるで現代のシュールレアリスムとでも呼びたくなるような独特の世界観を持っている。SFやファンタジー的な要素を取り入れながら、シュールレアリスムの精神を現代的に解釈した作品の数々は、見る者を不思議な空間へと誘ってくれる。  アントノの作品には、人間と空想上の生き物たち、

          シュールなお月さまよ、こんにちは | Misakiのアート万華鏡

          マティスのLet's Dance| Misakiのアート万華鏡

          マティスとの出会い: 新たな人生の光明として  人生の後半を迎え、残りの人生に限りが見え始める。人生の儚さを実感するとともに、永遠の生命を有するアートに何らかの形でかかわってみたい。そんなとき、マティスの絵が、まるでダンスパートナーのように私を新しい世界へと誘ってくれた。  マティスの絵には、人生を一変させる力がある。それは色彩とフォルムが織りなすリズミカルな世界であり、見る者の心を解き放つ自由なダンスのようだ。1953年、マティス自身がこう語っている:  たしかに私た

          マティスのLet's Dance| Misakiのアート万華鏡

          落合陽一の「鮨ヌル∴鰻ドラゴン」| Misakiのアート万華鏡

          人とAIの協働作品:うなぎドラゴン 鰻龍(うなぎドラゴン)は、「鰻屋」の御神体である。この作品は、AIが形を生み出し、人間が共同で3D構造を構成し、カリモク家具のCNC機械が削り出したものである。その後、カリモク家具の職人たちが丹念に仕上げ、塗装を施して完成したものである。鰻龍は、神仏習合の象徴として、八岐大蛇のように八体の鰻で構成され、その威厳を放っている。  ディテールへのこだわりもまた見事である。能装束は、1878年に千葉県佐倉市へと持ち込まれた竹生島龍神のものを再現し

          落合陽一の「鮨ヌル∴鰻ドラゴン」| Misakiのアート万華鏡

          落合陽一の聖獣と仏 神仏習合の世界| Misakiのアート万華鏡

           落合陽一は何者なのか。大学の先生なのか、作家なのか、アーティストなのか。正式な肩書はよくわからない。従来の肩書や区分では表現しきれない多彩な活動を展開している。それは松岡正剛とほぼ似ている。落合陽一自体がもう職業なのだ。肩書など、もういらない。落合陽一自体が一つのブランドなのだ。と、感じさせてくれたのが今回の展示会だった。 鰻屋の入り口で聖獣が出迎えてくれる  京橋のBAG Brillia Art Gallery, 京橋のホワイトキューヴで展示会は開催されている。何もな

          落合陽一の聖獣と仏 神仏習合の世界| Misakiのアート万華鏡

          山本容子さんの版画をみていると、どんどん世界がひろがるストーリーを感じます。この鳥は何を意味しているのか。謎めいていて、素敵な絵ですね。

          山本容子さんの版画をみていると、どんどん世界がひろがるストーリーを感じます。この鳥は何を意味しているのか。謎めいていて、素敵な絵ですね。

          物語を紡ぐ銅版画家 ~山本容子版画展に見る文学との出会い~| Misakiのアート万華鏡

           トルーマン・カポーティの中編小説『クリスマスの思い出』を村上春樹が翻訳したとき、この小説の長さだけで一冊の本にするには、いささかムリがあると村上春樹は感じたようだ。そこで「大人のための絵本」というコンセプトが生まれた。  誰に絵を描いてもらうかという問題については、この小説世界に寄り添った絵を描ける人は山本容子さんしかいないと、村上春樹は考えた。出来上がってきた絵を目にして、村上はホッと安堵したという。彼女の絵には彼女自身の物語があり、一枚一枚の絵にイキイキとしたつながりが

          物語を紡ぐ銅版画家 ~山本容子版画展に見る文学との出会い~| Misakiのアート万華鏡

          早稲田大学国際文学館  村上春樹ライブラリーにて。版画家の山本容子さんの展示会が開催されていましたよ。

          早稲田大学国際文学館  村上春樹ライブラリーにて。版画家の山本容子さんの展示会が開催されていましたよ。

          心の中がギンギンに燃え続けてる/田名網敬一展(4) | Misakiのアート万華鏡

          記憶とアート  アートや本は、私たちの心のタイムマシンのようなもの。過去へタイムトラベルして、様々な経験を思い出すことができます。それは、過去の出来事だけでなく、自然の美しさや社会の出来事、人々の喜びや悲しみといった、さまざまな経験が心の奥底に刻まれているからです。過去の経験を思い出すことで、私たちは今を、より深く理解し、未来を想像することができるのではないでしょうか。  記憶と鑑賞、読書は、そのように密接に関係し、中世の絵画や書物もまた、記憶に寄り添って作られ、親しまれて

          心の中がギンギンに燃え続けてる/田名網敬一展(4) | Misakiのアート万華鏡

          田名網が初めてアメリカへ行った時には、アンダーグラウンドのカルト映画シリーズが流行っていた。ニューヨーク全体が、不健全な方向に向かっていくような雰囲気の時代。草間彌生がハダカでハプニングをやったりというのもその頃でした。国立新美術館 コラージュ作品 撮影:MISAKI

          田名網が初めてアメリカへ行った時には、アンダーグラウンドのカルト映画シリーズが流行っていた。ニューヨーク全体が、不健全な方向に向かっていくような雰囲気の時代。草間彌生がハダカでハプニングをやったりというのもその頃でした。国立新美術館 コラージュ作品 撮影:MISAKI

          田名網敬一の《Good Bye Marilyn》を観て感じること。昔の方が表現の自由があったのだな。このマリリンのセクシャルな表情がとってもいい。 国立新美術館 大型作品《Good Bye Marilyn》 撮影:MISAKI 

          田名網敬一の《Good Bye Marilyn》を観て感じること。昔の方が表現の自由があったのだな。このマリリンのセクシャルな表情がとってもいい。 国立新美術館 大型作品《Good Bye Marilyn》 撮影:MISAKI 

          『NO MORE WAR』 - 田名網敬一展(3) | Misakiのアート万華鏡

          「NO MORE WAR」 日本のポップアートを牽引した革新的なアーティスト、田名網敬一。 彼の代表作「NO MORE WAR」は、反戦という普遍的なテーマを、鮮烈な色彩と独創的な表現で描き出し、多くの人々の心を揺さぶりました。 本記事では、田名網氏の生い立ちから、この象徴的な作品が生まれた背景を探り、彼の芸術が現代社会に投げかける問いを考察します。 芸術への目覚めとアメリカ文化の影響 1936年、東京・京橋の服地問屋の家に生まれた田名網敬一。幼少期に経験した第二次世

          『NO MORE WAR』 - 田名網敬一展(3) | Misakiのアート万華鏡

          「金魚が映す戦争の記憶 - 田名網敬一展レポート(2) | Misakiのアート万華鏡」

          金魚が好き  国立新美術館にて開催されている「田名網敬一 記憶の冒険」展に行ってきました。この展示会では、田名網さんが綴る幼少期のエピソードと、最新作のインスタレーション《百橋図》で構成された「プロローグ」からスタートします。11もの章立てで膨大な創作の変遷を丁寧にたどり、最後はアートディレクションを手がけたコラボレーションアイテムの数々と、インタビュー映像が流れる「エピローグ」で締めくくられます。  国立新美術館の前には、大型作品《金魚の大冒険》が出迎えてくれましたよ。

          「金魚が映す戦争の記憶 - 田名網敬一展レポート(2) | Misakiのアート万華鏡」