あなたは「ソーシャル」をどう考える??―『ソーシャル』を問い続ける企業を増やす― Social Good Day 5F ー+モデルワークショップ
こんにちは、グローカルセンタ-インターン生のヤスです!!
今回は、1月20日(土)にSocial Good Day内で開催した「ー+モデルワークショップ」の様子をお届けします。
10月に開催したフォーラムの参加者の内の1人、ソーシャル認証機構の石井さんが是非S認証企業の方を対象にワークショップを行いたいというリクエストをいただき実現に至りました。
今回は、初の中小企業様向けの開催となり、地域や国を超えたー+モデル自体の普遍性を確認すると共に、業種、業態、規模により、アプローチ方法や表現を変える必要があるんだなという気づきがありました。それでは、当日の様子をお届けします!
▼これまでのワークショップの様子はこちらから!!
12/4(月) Panasonicデザイン本部のみなさん×Corey×学生とのWorkshopコラボレーション
【10/12(木)開催】気候変動と貧困の同時解決を図るPOWER TO CHANGE FORUM(後編)
▼これまでのー+モデルに関するグローカルセンターでの取り組みの様子はこちらから!
Japan×Taiwan × Thailand PBL|NPO法人グローカル人材開発センター|note
チェックイン
昨年のSocial Good Dayでは、「今更聞けない!でもわからない!「ソーシャル」の意味を学生と学ぶ」というテーマのセッションで登壇者の1人として話していましたが、今年は1つのワークショップを託されたことに感慨を感じつつ、ワークショップを始めました。
▼Social Good Day2022の登壇時の様子
【EVENT REPORT】12月10日SOCIAL GOOD DAY2022座談会に学生が登壇しました!|NPO法人グローカル人材開発センター (note.com)
チェックインでは、名前、ご所属、年末年始の思い出に加え、「気候変動と聞いて思いつくキーワード」を皆さんに共有いただきました。
参加者の中で挙がったキーワード
温暖化
災害(南海トラフ、輪島地震)
雪が降らない、雨も降らない
食品産地の変化(どんどん産地が北上している)
環境は潰すのは早いが、作るのはとても時間がかかる
熊の被害の増加と生態系の変化
気候変動の取り組みに既に関心がある方、実際にプロジェクトとして始めている方、まだじっくりと考えたことがなかった方まで多様なメンバーが揃っている場であることをまずは認識し合うことができました。
取り組みの紹介
チェックインが終わった後は、Power to ChangeやDOMIの取り組みの活動紹介からスタート。台湾の取り組みの紹介をする前に、世界の現状と、その中での日本のソーシャルな活動の実態と立ち位置について「持続可能なソリューション・ネットワークのSDGsの達成度」の調査を用いて、クイズ形式で共有。その後、台湾での取り組みの紹介をしました。
特に、参加してくださったみなさんは、ー+モデルでは、-パートでロスを減らす企業、+パートでDOMIを筆頭に貧困家庭への還元に従事する企業・団体、さらにこのー+モデルやDOMIの取り組みを周知・普及させるためのPower to Changeプロジェクトに協力する企業のように、普段の業務では関わらないであろう企業同士が1つのプロセスの中で、それぞれの役割を考え、具体的なアクションをしていることに興味を持たれていました。
ワークショップ
説明後に休憩を挟んだのち、2つのチームに分けてワークショップを進めていきました。今回のワークは、3つのワークテーマを準備し、その問いを個人で考え書き出す時間と、チーム内で共有する時間を用意しました。
用意したワークテーマは下の3つ!
1.自社の無駄は何か??
2. 顧客をいかに巻き込む??
3.誰に還元する??
今回の参加者はソーシャル認証取得企業の代表の方々だったので、それぞれの企業が実際に取り組んでいらっしゃる環境保護活動やロスを減らす取り組みについて話してくださる場面がとても多い印象でした。
例えば、冷凍食品の製造を行う企業様からは、販売に至るまでに試作品が食べられる状態なのに捨てられてしまうというお話をされました。商品を販売するためには、試作品を大量に作らなければならない。しかし、未完成の試作品は表に出すことが業界でタブーとされているため、捨てるというルールは変えられない。そこについて課題意識はあるもののロス自体を減らすことへの限界に、他の企業様も共感されていました。また、食材を調達する上で、取引先の発注数の規定によりやむを得ず必要以上に購入してしまう場面が多々あることも伝えてくださいました。このように取引先との兼ね合いや行政の規定、自然環境(天気、災害など)をはじめとした「外部的な影響」から生まれるロスが多いことから、自社内で解決することへの限界・諦めの声も聞こえました。
自社で削減の努力をしていても、前述の影響によって、ロスが生まれてしまうという観点については、中小企業様が集まる場だからこそ出てきた意見だと感じます。
+(困窮者への還元)のワークでは、「環境負荷によりこれから負の影響を受ける人は誰か」について議論していただきました。ここでも、今までのワークで上がらなかった意見として、「自社の従業員に還元したい」という思いをお聞きすることができました。
この意見を挙げてくださった福祉事業をされている企業様からは、「自社の社員に還元することが、彼らの働く環境の向上につながる。会社外部の課題を解決するのはその後。」と。
その理由として、環境課題解決に興味はあるが、自社が対象とする課題解決に注力することに還元するのが最優先で、その他の活動にお金を回すのはその後にあることだからと。また、「還元先としても、まずは自社の従業員の働く環境や生活をより良いものにしたい。その後彼らが環境課題等に取り組むような未来が生まれたらよい」と話してくださいました。
このようなお話から僕の中で、「零細/中小企業が環境問題を自社の課題として取り組むにはまず『考えられるようになる段階』を設ける必要があるのではないか」という仮設が生まれました。
これまでのワークショップでお越しくださった企業様、台湾・タイの視察で伺った各国の連携企業は大企業がほとんどでした。こういった企業の方に、お話を伺っていると、会社とは直接関係のない外的社会課題解決に利益を還元することについての理解があることが前提にありました。しかし、中小企業の方々にとっては、まずは自社の社員の生活をはじめ、直接的に顔が見える距離にいる、会社に関わりある人達に利益を還元したいと思っていることを知ることができました。
これは、中小企業数が非常に多い日本でー+モデルを展開する上で、『考えられるようになる段階』を慎重に見定めた上で、連携先を募ることが必要であるという気付きにつながりました。
クロージングそして、
最後に各チーム1人ずつ発表していただいた後、皆様から今日の感想をいただきました。
問題意識が共通しているなという気づき、期待が持てる会だった。
人が動かないと何もできないと気づけた!!
ゼロからイチを考えがちだった、マイナスをプラスにするという発想の重要性を感じた
公益性すべての人に心豊かな人に自分の気持ちを刷新しないといけないなという気持ちになった
ソーシャル企業として、ソーシャルについて普段考えていないなということに気づけた知らないというのがすべてのスタート、こういう活動を機にこんな問題があるんだよという発信することをしたい
誰に還元するかという意見を出す時にそれぞれが従事する仕事に還元したいんだなと気づきがあった
S認証を推進していく中で、他のフィールドで活躍している人たちと話す必要があると感じた
世界の事例全く知らなかった。気候変動というところから足踏みしてしまう、難しさはある、事業者だからできる身近な地域社会での課題解決社会性・経済性をやっていきたい
おわりに
ソーシャルとは何か?
ここで2022年の僕は、「ソーシャルについてどう思う??」という問いに対し、「社会課題を”自分事化”するにはどうしたらよい??」と書いていたのを思い出しました。
2年前の僕が挙げた問いに対し今の僕なら、「『ソーシャル』を具体的な言葉におとしこむために話すこと。そして、それぞれの企業がすでに取り組まれていること、業種や規模に伴う範囲や制約を踏まえることが必要だよ。」と答えます。
今回を含めこれまでワークショップに来てくださった企業様が考える「ソーシャル」なことへのコミットできる規模や期待、限界は、様々でした。
-+モデルが気候変動と貧困問題の解決をテーマにしており、特に気候変動への危機感がこのモデルのベースになっているのですが、中小企業の方々は、気候変動問題のような大きな社会課題への解決に対して、「こんなことができるのでは??」という可能性や期待よりも先に「こういう現状があるから、できることに限界がある」「どうしても変えられない」という限界に行き着きやすい。また、会社の外部で起こっていると感じることよりも自社の事業に関わる課題解決を最優先に解決したいと思う方が多いことも分かりました。
その上で、中小企業の皆さんに大企業を中心に展開されるー+モデルをこれまでと同様の形で導入したいと伝えると「気候変動問題=大企業が取り組むような活動」と伝わり、「気候変動の解決は、自分たちからは遠い存在である」と捉えられてしまう恐れがあると感じました。
気候変動は全人類にとって喫緊の「ソーシャル」課題であり、他の社会課題と様々な形で関連すると認識をしている自分にとって、ソーシャル認証を取得されている企業の皆さんにとっても興味・親和性のあるテーマであるはずと思っていたので、このことは大きな驚きでした。
今後このワークショップを中小企業さんを対象に進めていくのであれば、まずは「あなたの会社にとってのソーシャルとは何か?」「この会社が取り組みたい・取り組むべき・取り組むことができないソーシャルな取り組みは何か?」まで、各企業様の「ソーシャル」への思いや考えられる範囲・規模を深く洞察することがまず重要なプロセスであると思います。
また、「社会課題解決のアクションへ認証を与える」団体や企業、活動が増える中で、認証に当てはめてしまうことで活動が停滞してしまうものがあると考えることも必要ではないでしょうか。
指標や認証制度があること自体は良いことで、社会をよりよくするためのビジネスの価値観の認知やPRとして機能しています。しかし、認証を取ることが目的化し、活動の軸が認証を取ることになってしまうと、本来目指すべきであった事業の社会的目的を見失わせてしまう恐れがあることを忘れてはいけないと思います。
社会課題は時代や地域によっても異なり、ソーシャルの意味も可変で、多元的です。ですので、ソーシャルという言葉が一つの時期や価値観の中で固執しないように、「ソーシャルという意味を常に問い直し続けながらアクションができる」企業を増やすために、今後もワークショップを仕掛けていきたいと思います。
今回ご協力いただいた京都信用金庫の皆さま、ご参加いただいた皆さま、
本当にありがとうございました。
執筆者:
グローカル人材開発センター インターン
龍谷大学 政策学研究科 修士課程1年 松本安弘
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