SHISAKU=「 」
こんにちは、行元です。「GLOCAL CENTERって何をしてるの?」とよく聞かれます。大切な関係者のみなさんから語られることばを通じて自分たちを見つめていきたい、手触りのあるリアルな社会、京都の産業や世界の今を、人を通じて理解したい。と思いスタートしたこの企画。寄稿文インタビュー編 第13弾は、京都試作ネット代表佐々木さんと、京都試作センター代表名高さんです!
📝前回Vol.12はコチラ
顧客の思いを素早く形に変える「試作(Shisaku)」という概念を世界に轟かせ、京都を試作の一大集積地にする!というVISIONを掲げ2001年から活動をされているお二人に、現在の活動、これからの若者の可能性についてお話を伺いました。GLOCAL CENTER法人メンバーであり、学生プロジェクト連携もいただいています。
私自身、GLOCAL CENTERとして、高校生や大学生と共にこれまで試作ネット所属企業の先進的な技術や人間力ある人々に触れ「試作」という概念に魅せられてきました。(高校生プログラムでのHILL TOPさん訪問など)けれど、よく考えるとそれらのプラットホームである試作ネット、試作センターの成り立ちについて知らないことに気が付いて、恥ずかしくなりました。
純粋に知りたい、折角なら学生と一緒に学びたいという気持ちで、まずは私が!と思い、試作ネット、試作センターの組織体や歴史、機能を1つ1つ分解して理解しようとしました。
・・・甘かったです。
セクショナリズムの壁を超えろ。
すべては、佐々木さん、名高さんの中では一体のものなのです。
組織体に付随して、【試作ネット=ビジネス】【試作センター=まちづくり・人づくり】と機能や役割は分かれてはいるものの、すべての活動は目指す大きなところ「京都を、試作の一大集積地にする」というVISIONに通じています。
「知財などどうなっているんだろう?」というくらい、組織間での透明性が高い状態とスピードで情報を共有し、そのVISION実現一点を見据え奔走されています。まず、組織体制や機能面、実績の形式知からではなく、何をなそうとしているのか、を徹底的に相手に伝えきる態度に全てが現れ、はっとさせられました。
この始まりから「試作」そのもののの本質・実態をつかんで欲しいというメッセージとして受け取りました。私は、形式から理解しようとしたインタビューイメージや質問項目をすべて手放し「試作」を企てる、事業構想を行う人、二人から語られる言葉から立ち上がるものに意識を向けることにしました。
お二人は、どんな人物なのか?
一言でいうと、相当ユニークです。
試作は「事業探索」緊急性はないが、重要度が高い領域へのコミットである
下記の図は、おなじみのマトリクス。試作ネット、試作センターに集うメンバーは、意識的に、右上の第二領域である、重要性が高く、緊急度が低いことを緊急度をもって取り組まれているそうです。
(…重要度が高く、緊急度が高いことばかりしている私。💦みなさんはいかがでしょうか?)
当初は「自社のことだけやればいいのでは?」という声もある中で、所属各社が未来の思索の意義を社内メンバーに時間をかけて理解してもらい、経営者自らが、未来の思索の時間を捻出しているそうです。この事業探索、思索の時間を日常や製品をつくる工程に埋め込むこと自体が鍵であり、結果、試作という実験・アクションに必然的に連動してくるのだと感じました。
手法や方法論(How)の前の、構想段階(Why, What)から入り込む。試作という工程は、個々人の思索というプロセスなしには生み出せないことを表しています。
また、こうした未来の思索の時間自体一社、一人ではむずかしく、多方面のニーズに呼応する技術が求められるため領域的にも素早く共有し、多角的な視点でみつめ、協働できるプラットホームが必要だといいます。
フィードバックの力
上記は、佐々木さんからの言葉です。社長は立場上、フィードバックをもらいにくいといいます。つまり、人によって磨かれる機会が失われる。未来の事業探索をするにあたり、忖度が飛び交っていては何も生まれません。試作ネットには、信頼関係をベースにした本音の対話、フィードバックをしあうカルチャーがあると言います。
例えば・・・
「いいもの創ってるのに、PR下手やな」
「試作ネット初の、非ものづくり系代表やな」
「量産はルーティン作業の塊で人が育たない」
「資質があるのだから、ARTとかけあわせたら?」
これらの一見はっとする言葉は、佐々木さん、名高さんを揺り動かし今の活動に至った、お二人に欠かせないフィードバックの言葉の数々だそうです。
フィードバックがない故に資質を生かせていない、そのミスマッチが多いといいます。自分の得意なことや組織として発揮しきれていないポテンシャルに気づいていないことが圧倒的でとても勿体ない状況が世の中には溢れているといいます。
ステージをあげようと思ったら、ぶれる。
今回のインタビューで、私が1番頭をぐらぐらさせられたお話はこれです。色んな意見を聞きすぎたり、反対されたり、理解者がいないときに、ぶれることってありますか?と質問しました。するとお二人からはこんな回答が。
ぶれたり悩むのはステージがあがるからという発想、そして失敗と成功は分かれ道ではない、道はすべて1本でプロセスに失敗(実験)があるだけという考え方。はっとさせられました。
自分もどうやっていいかわからないけど、中庸は大事にしている。全部はバランス。自分一人でバランスとるのはむずかしいので、目指すところを人に話、そこに対して、バランスをとってくれる人が必ず現れるといいます。
日々、人や社会的な出来事から影響を受けながら、前進し、次のステージや変化の兆しとしてのゆらぎやぶれが生じる。そのプロセスを味わい尽くすためにも都度ことばにするように、形にしていくことが自然であり、それが試作なのでしょうか。
自分を明らかにすること。
・・・へ!?
「京都試作ネット」「京都試作センター」についてのお話しを聞きにきたはずの私は、佐々木さん、名高さんを前に「自分を明らかにすること」の重要性をつきつけられていました。
おそらく、このお二人に相談に来た方たちも、同じように立ち止まり、自社の使命、ひいては組織や自分は何のために存在するのか?と自問自答させられているのではと感じている。深いところまでおりて、思索し、考え抜くプロセスなしに試作は生まれない。
お二人の、考えの背骨にある思想や影響を与えた人物についてお伺いしました。
考えの背骨にある思想や影響を与えた人物
〇佐々木さん:中村元さん / 森信三さん
中村元さん:インド哲学の研究を出発点とされた中村さんは「自分を明らかにしていくことが人生」とセクショナリズムの壁を超えて、世界中の思想を比較研究することにより世界平和への道を示されたそうです。異質的なものに対する理解と寛容。そして、死ぬまで明らかにすることをやめない。
ちなみに、中村元さんはヒルトップの山本相談役から紹介されたそうで、相談役が唯一、参考にされた方だそうです✨
森信三さん:「国民教育の師父」と謳われ、86歳まで全国を講演、行脚したそう。森さんによると、全員が使命が書かれた手紙を渡されているという。 この手紙を開かずに、亡くなっていく人がどれくらいいることか?想像力を働かせて、手紙を開けるという行為をし続ける。これを、30後半から考えているそうです。
ー自分の会社は何のために存在するのか?自分自身は何者なのか?自分たちの事業の探索、自分自身の探索。を試作ネットを通じて常に体現されています。
〇名高さん:「進化思考」太刀川英輔さん
とにかく色んな本を読まれ、様々なコミュニティに所属し本や人から学び続ける勉強家の名高さん。中でも、「進化思考」の研究会にも所属されご自身の社内にもこの思考法の実装を行われています。 「進化思考」は、生物の進化のように「変異×適応」という二つのプロセスを繰り返すことで、本来だれのなかにもある創造性を発揮し、変化を生き残るコンセプトを生み出す再現可能な思考法だといいます。歴史やルーツを辿りそのうえで自分を観察し、多角的な問いで自分自身を揺り動かしながら「自分の人生はなぜあるのか?」を考える時間を持ち続けているそうです。
GLOCALの可能性について
最後に、おふたりにGLOCALの可能性についてもお話をいただきました。
編集後記)タイトルに込めた想い
タイトルを迷いました。なぜなら、おそらく試作ネットのメンバーのみなさんが感じておられる門外漢のダイナミックさすさまじさを私も追体験するようにひしひしと感じたからです。
インタビュー前は、私自身
のようなイメージだったのですが、そもそものアイデアや考え方の前提部分から、グラグラ揺らされるのです。もしかしたら、このお二人とお話したら当初のアイデアをあっさり手放し、しばらく思索するためにつくらない人もでてきているんじゃないかな?とさえ思うことも。試作ネットさんが提供されていることは、思索のための余白のスペースなのでは?と感じたためタイトルを
としました。SHISAKUはかかわる人によって色んな意味が引き出され、フェーズによって可変的なものなのだと感じたのであえてローマ字にしています。私にとっては、物事の本質を捉えるための視索かもしれません。
学生さんに伝わりますように!
佐々木さん、名高さん、お時間をいただきありがとうございました。
(2023/5/11グローカル人材論特殊講義にお越しいただきます♪)