国際機関職員の配偶者の仕事と帯同に関する深い悩み
過去の記事でも言及したが、多くの国際協力従事者にとって、配偶者の仕事をどうするか、それに伴い配偶者が帯同&同居するか否かは悩ましい問題である。特に国際機関職員は海外赴任が長期化する可能性があり、しかも赴任先は不便な途上国であることが多い。長くても数年間で日本に帰国&復職できる、JTC駐在員の妻/夫とは状況がだいぶ異なる。
どんな家族の形が正解なのかは人によりけりで単一な正解がないが、どのような選択肢があるのか、まず理解した方が良いだろう。本稿では、以下の以下のような四分表に従ってまとめてみたい。
1. 夫婦共働き&同居のパターン
このパターンは、いない訳ではないが、現実的には少ない。私が見聞きする範囲では以下のような夫婦ではあり得そうだ。
配偶者も国際機関の正規職員で、夫婦共にジュネーブ等の国際機関が集中する赴任地で働いている
配偶者がIT企業勤務、フリーランス、国際機関のコンサルタント(=正規職員ではない)をしており、リモートワークが許されている
あなたが国際機関とコンサルタント契約をしており、リモートワークが許されている
ちなみに上記1は、国際機関の本部職員がMobilityに抵抗しがちな理由の1つでもある。仮に配偶者が異動になった場合に、配偶者の新しい赴任先であなたの仕事が見つかるとは限らない。あなたは仕事を辞めて配偶者に着いて行くか、配偶者と別居するかの選択を迫られる。子供も転校させるのか否か考えなければならない。
また上記2には、駐妻/夫が業務委託という形でリモートでもできる仕事を請け負っている例も含まれる。しかし特別なスキルがなければ、翻訳や動画編集等の単価が安い仕事しかない。JTCの海外駐在で期間が決まってるなら別だが、海外赴任期間が長期化するとなると、こうした仕事では満足できなくなる可能性がある。
2. 夫婦共働き&別居のパターン
恐らく、若手の国際機関職員の間ではこのパターンが増えていると思われる。昨今は共働き志向の夫婦が増えているが、配偶者があなたの赴任先で満足できる仕事を得られる可能性は低い。多くの国では配偶者ビザによる就労を認めていない(例外はある)。赴任先によっては外国人向けの仕事(ビザスポンサー付き)がある国もあるが、職種は限定され、必ずしも配偶者がやりたい仕事ではないかもしれない。そもそも配偶者が英語ができなかったりすると、そうしたポストにすら採用されないかもしれない。当然「日本であれば好きな仕事ができたのに!」という不満が生じる。また国際機関職員同士のカップルでも赴任先が別々なら、このパターンになる。
このパターンの問題は、妊活をどうするのか、だろう。夫婦共に20代なら気にしなくても良いが、30代で子供が欲しいとなると、国外別居しながら妊活をするのは容易ではない。人工授精や体外受精をするとなると、国外別居しながらできるのか私は知らない。また無事に妊娠・出産したとして、育児をどうするのか問題に直面する。国際機関職員は1~3ヶ月の産休・育休が取得できるが(契約形態や期間による)、その後はどちらかがワンオペ育児をしなければいけなくなる。十分な支援が得られるのか、事前にしっかり調べた方が良い。
3. 配偶者が専業主婦/夫&同居のパターン
いわゆる従来型の家族のスタイルである。既にベテランと呼ばれている国際協力従事者の家庭は、こうなっている例が多そうだ。女性が国際機関職員としてバリバリ働いており、夫が専業主夫をしている家庭も結構多い。
このパターンの場合は、まず配偶者が専業主婦/夫になることを受け入れなければならない。元から専業主婦/夫だったり、激務に疲れ切って仕事を辞めたい元バリキャリでなければ難しそうだ。また配偶者に相応の社交性が求められる。あなたに連れられて縁もゆかりも友達もいない土地に住み、ゼロから人間関係を構築しなければならない。しかも、あなたの定期的な異動に伴って、3-4年に一度の頻度で繰り返す。配偶者が新しい環境に適応するまで、あなたが配偶者のストレスを受け止める相応の覚悟がいる。
4. 配偶者が専業主婦/夫&別居のパターン
このパターンは、元々は同居だったのが、子供が中高生になったのをきっかけに配偶者&子供が帰国し、あなたが単身赴任する例がほとんどだ。日本人駐在員が多い国では日本人学校があるが、中学校までしかないので、日本に帰って高校受験するか、どこかのインターに入れるか選択を迫られる。またインターと言っても、質の高いインターが赴任先にあるとは限らず、場合によっては配偶者&子供は第三国に行く必要があるかもしれない。
この場合は、家計のやりくりが問題になるかもしれない。1馬力で住居を2つ構えることになるので、固定費が上がる。生活費の見直しや、可能なら配偶者にパートで働いてもらうことも考えよう。