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WHOのファイナンス

何をするにせよ、その元手となる金が必要である。一従業員として、雇用主がどのようにファイナンスされているのか知っておくべきだろう。と言うことで、さっそく以下にまとめてみた。ちなみに本稿ではResults Report 2016-17を例として取り上げたい。

Retrieved from http://www.who.int/about/finances-accountability/budget-portal/rr_2016-17.pdf (18 June 2018)

予算

WHOの活動予算(Programme Budget)は2年単位(biennium)で決められている。現在は2018-2019年の予算年度である。規模は、例えばProgramme Budget 2016-2017はUS$ 4385 million だった。予算は"base"が7割、その他が3割に別れており、この「その他」にはポリオ根絶やアウトブレイク・健康危機対応等が含まれる。予算は世界保健総会(World Health Assembly; WHA)で承認される必要がある。

歳入

WHOの歳入は、大まかに以下の2つから構成される。

1. 義務的拠出金 (Assessed contribution; AC)

WHOに加盟するために、全ての加盟国(Member States)や準加盟員(Associate Members)に課せられる拠出金である。ACは使途に制限がない(=non-earmark)。しかしWHOの歳入全体に占める割合は1/4未満である。

2. 任意拠出金 (Voluntary contribution; VC)

加盟国等より自発的に拠出される資金であり、WHOの歳入の3/4以上を占める。VCにはcore voluntary contribution (CVC)とVC specifiedの2種類がある。

2-1. CVC:使途に制限がない(=non-earmark)VCである。WHO自身の判断で資金を使うことができるので、歳入に対するCore VCの割合が増えることがWHO的には望ましい。しかし現実には全VCの1割に満たない。なおGPW13でテドロス事務局長は、このnon-earmarkな拠出金を増やすように加盟国に要請している。

2-2. VC specified:特定の事業領域や国・地域に支出するようにあらかじめ紐づけられた(earmarkedな)資金である。VCの9割以上、歳入の7割を占める。拠出する加盟国側にしても、納税者や寄付者への説明責任があるので、何の用途でもいいから金を使ってくれとは言いにくい事情は理解できる。しかしその結果として、WHOの活動は制限を受けてしまう。

誰が拠出しているのか?

例えば2016-2017年度の拠出元を見てみると、① 米国、②ゲイツ財団、③英国、④GAVIアライアンスのトップ4ドナーで全歳入の半分を拠出していた。加盟国からの直接的な拠出は全歳入の半分程度だった。ゲイツのような民間の財団が日本のような先進国よりも多額の資金を拠出してるあたりが、昨今のグローバルヘルス業界を象徴している。

一方でCVCに限って見てみると、この順位が激変する。①スェーデン、② 英国、③ オーストラリア、④ ノルウェー、⑤ オランダ…とヨーロッパ勢が多くを占める。この現象は興味深い。

予算成立 ≠ 資金が付く(funds available)

仮に予算が承認されたからと言って、自動的に資金が確保される訳ではない。例えばProgramme Budget 2016-2017のResults Reportを参照すると、承認された予算のうち1割以上の資金を確保できなかった(=shortfall)ことに気づく。要するにWHAで予算を承認しておきながら、拠出金を出ない加盟国がいる…というこで、なんか釈然としないが…。またWHOは国や地方自治体と異なり債券を発行できる訳ではないので、不足分は不足したままである。

歳出

どこで支出されているのか?

2016-2017年度の支出先トップ3は① アフリカ、② 本部、③ 中東だった。

どの事業領域に支出されているのか?

2016-2017年度の支出分野トップ3は① ポリオ根絶、② アウトブレイク・危機対応、③ ワクチンで予防可能な疾病(VPD)対策で、全歳出の6割以上を占めた。ちなみに①のポリオ根絶は先述のトップ3ドナーが活動資金の半分を拠出している。ゲイツ財団など拠出金の6割をポリオ対策に配分している。

支出の科目は?

2016-2017年度の支出科目のトップ3は人件費が約4割、業務委託費(コンサルタントの雇用も含まれる)が3割、(カウンターパート等への)資金供与が1割だった。

決算

決算の締め切りは12月末日である。予算とは異なり決算書は毎年作成される。監査は内部から、外部から、さらに執行理事会(Exective Board; EB)下の Independent Expert Oversight Advisory Committeeから受ける。最終的に監査済みの財務諸表はWHAで承認を受けなければならない。

参考

WHO Programme Budget Web Portal 
WHO Results Report Programme Budget 2016-2017

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