戦争から学んだことを継承する N105
戦争を経験した人が年々減っている。当たり前のことだが実際に経験した人が不在になることで、悪しき記憶のない日本人が暴走をすることになりかねないと昔から言われ続けてきた。しかし最近の若い方々の多くは身近な親類で戦争経験者が少なく生の言葉で何が起きていたかを聞く機会がなくなっている。少なくとも聞いたことのある私はその聞いた話を少しでも伝えるのが役目だと思うようになってきた。
さて「失敗の本質(*1)」という組織論の名著がある。今では経営学者や経営者は必ずといっていいほど読まれている本である。経営学者の野中郁次郎先生が企業の失敗例をケースに組織を分析することの難しさ(失敗を開示したくないため)より戦争における軍事組織の失敗例を分析することとなった経緯があるが、組織を運営する上で日本人はこの本を読みんこんで自分たち日本人がどんな過ちを犯すか?(すでに犯しているか?)を学ぶことができる。
この本を読んだ時に初めて私は祖父がどんな状況下で戦争に参加をしていたかを知った。祖父は戦艦大和の乗組員でこの本の半分を占めるほど戦略的な戦い、あるいは日本という組織の愚かな過ちに振り回されていたかを知った。
空気で決める意思決定、戦略なき一点豪華主義、属人的な組織構造、曖昧なゴール設定、精神論による評価・・・詳しくは書かないが読んだことがない方は是非とも騙されたと思って読んでもらいたい。なぜ日本が戦争に負けたのか?また戦争をしてしまったのか?という自らの愚かさを知ることができる。これを日本人全員が知ることでこの愚かな国民の思想を私は常に断絶させたいと思っている(そんな簡単ではないが)。
そんな理不尽な経験の中、沖縄海上特攻の途中で戦艦大和と共に沈没した。しかし祖父は乗組員3332人のうちの奇跡の生還者276人の1人だった。実に8.3%の確率で太平洋を木片にしがみついて泳いで生き延びたそうだ。その最後に戦艦に乗り込む時に大量のネズミが自分たちとは逆方向に列をなして逃げていくのを見て、自分たちは沈むことを覚悟したそうだ。
この経験をしたためか、帰ってきた祖父はその後ある会社の労働組合のトップとなり国(中曽根首相)と戦うことになる。子供の頃に中曽根、中曽根とお酒を飲むと叫んでいたが、実際に争っていたことを知ったのはつい最近のことである。祖母や母、そして孫の前ではただの家族の中の1人の存在だったが、のちのちに彼が行なっていたことを知ると日本という組織と戦っていた男だったのだと判明したのだ。
せめて私ができるのはnoteに記すことぐらいかもしれないが、日本人の底にある愚かさを少しづつ広めていきたい。戦争で命を失った人たちは誰も未来の戦争は望んでいないはずだから。
1*)「失敗の本質」戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎)
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