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[解説と設問を発表]グローバル経済 vs. 宗教、ナショナリズム、連帯【英語で学ぶ未完の資本主義】第10回1/5(日)20時@オンライン
2024年9月から始まった講座&ワークショップ「英語で学ぶ未完の資本主義」。第10回はトーマス・フリードマン「フラット化する世界」での主張をもとにグローバル経済と「ナショナリズム、宗教など人々を国家に繋ぎとめるもの」との関係性について英語で議論。
2024年9月から始まった「英語で学ぶ未完の資本主義」に関するワークショップの2025年のお知らせです。2025年1月5日(日)夜20時@オンラインで開催するワークショップ第10回は書籍「英語で理解する未完の資本主義」で、3度ピューリッツア賞を受賞したジャーナリスト、作家のトーマス・フリードマン氏が「グローバル経済 vs. 宗教、ナショナリズム、連帯」について述べている第2章の5番目のセクション「レクサスとオリーブの木」(P58-61)を使い、英語で議論します。設問はこの記事の以下のセクションの内容も踏まえた形で設定しますので、書籍の購入がまだの方も、ぜひご参加ください。このワークショップの解説と設問を発表します。
グローバル経済 vs. 宗教、ナショナリズム、連帯【英語で学ぶ未完の資本主義】第10回12/15(日)20時@オンライン
2005年に発表後、全世界でベストセラーとなり、その後も2度にわたって内容が大幅に更新されたトーマス・フリードマン氏の著作「フラット化する世界:経済の大転換と人間の未来」での議論を取り上げます。今回はその第4
回です。
フラット化する世界: 経済の大転換と人間の未来
以下は英語版の著書の紹介です。
The World Is Flat, 3.0
A Brief History of the Twenty-First Century
トーマス・フリードマン氏は「フラット化する世界」を執筆前の1999年に「レクサスとオリーブの木 : グローバリゼーションの正体」を発表しています。
「レクサスとオリーブの木 : グローバリゼーションの正体」
この著作に対しては、上記の日本語版Amazonのサイトに「メディア掲載レビュー(日経ビジネス2000/3/20号)」として、ジャーナリスト、斎藤 貴男氏の書評が転載されていますが、以下のような一文から始まっています。
国際化を叫ぶ 米国エリートに 異議あり:傲慢きわまりない書物である。「ニューヨーク・タイムズ」のトップコラムニストが、世界を席巻するグローバリゼーションと地域の伝統文化との対立を分析し、解決のための処方箋までを提示したとの触れ込みだが、本書の内容をそのまま受け入れることのできる日本人がいるとすれば、よほど恵まれた立場にいるか、でなければ軽薄なアメリカかぶれのどちらかだろう。
このような批判を受ける一方、フリードマン氏は、自身の中東での長い取材経験を下に、著作発表後の2001年に起こった、9.11の世界貿易センタービル及び米国防省本部ペンタゴンへの襲撃、2000年代のパリ・ロンドンでの自爆テロ事件などを予測するような議論を著書内で展開しており、それらはその後の歴史的推移を見れば、注目に値する分析です。
フリードマン氏は、この書籍の中で、進化するグローバリゼーションを象徴する製品であるトヨタの高級車「レクサス」と(特にパレスチナにおける)土地・文化・民族の象徴である「オリーブの木」を題名に使うことで、冷戦後の新しい世界秩序と衝突の可能性を示唆しています。
The Lexus and the Olive Tree: Understanding Globalization
この著作は冷戦後の世界について予測した1990年代の以下の3つの著名な著作の次に発表されたものです。民主主義と新自由主義が世界を覆うと予測した、フランシス・フクヤマ「歴史の終わり」はその最初の作品です。その後の世界情勢の変化について、著書はNHKのインタビューで以下のように現状を分析しています。
歴史は終わらなかった?フランシス・フクヤマが語る「2.24後」 | NHK | WEB特集
1996年に発表されたサミュエル・ハンチントン「文明の衝突」は、冷戦時は政治イデオロギーによる協調と分断が国際政治の主軸であったが、その後は米国を中心とする新自由主義経済体制の国々と宗教や文化などの文明の異なる国々との対立が深まると予測した著作です。ハンチントン教授は日本の立ち位置にも言及しており、その関連書である「文明の衝突と21世紀の日本」も注目を集めました。
「文明の衝突」批判に応える
ジャーナリストのロバート・カプラン氏が1994年に雑誌アトランティック誌で連載を始め、後に書籍となった「The Coming Anarchy(未邦訳)」も大いに話題になりました。
The Coming Anarchy: Shattering the Dreams of the Post Cold War
この書籍の紹介文は以下のように始まっています。
冷戦の終結は、多くの人々が予想していたような世界的な平和と繁栄をもたらしたわけではない。東欧の不安定な新民主主義、アフリカの熾烈な部族主義、中近東の内戦と民族暴力、蔓延する飢饉と病気はもちろんのこと、裕福な国々が無限のように見えるテクノロジーの恩恵を享受する一方で、世界の他の地域が混沌に陥るという残酷な軋轢も、カプランが地政学の未来を描く上で最も重要だと指摘する問題のひとつである。
この著書の内容を要約したサイトによれば、記事の発表当時、その予測の的確さに当時のクリントン大統領が彼のスタッフに記事を読むように推奨していた、という逸話が紹介されていました。
The Coming Anarchy:Plot Summary
「レクサスとオリーブの木 : グローバリゼーションの正体」は、グローバル経済と民主主義の勝利によるその後の世界経済の繁栄を確信していた1990年代の初めのユートピア的幻想を打ち破り、21世紀の世界の混沌を予測した書籍として、一読に値するでしょう。
グローバル経済と国際政治について考えるこのワークショップの詳細は以下のとおりです。教材としては、書籍を利用しますが、上記の資料及び下記の記事も参考資料とします。
Interview with Thomas Friedman
https://www.britishcouncil.org/research-insight/interview-thomas-friedman
日時: 2024年1月5日(日)20時~21時30分
場所: オンライン
定員: 10名程度まで
費用: 見学のみ: 500円、初回参加者:800円~
【チケット】
チケットの申し込みは以下のYahooチケットサイトから、または銀行振り込みでお願いします。
グローバル経済 vs. 宗教、ナショナリズム、連帯【英語で学ぶ未完の資本主義】第10回12/15(日)20時@オンライン
【銀行振込での申し込み】
振込用紙は以下のサイトからダウンロードお願いいたします。
このワークショップの設問は参加申し込み者、サロン会員、有料ニュースレター購読者及び後日発表するnote記事購入者にのみ送付します。過去の【英語で学ぶ大人の社会科】ワークショップと同様の設問を設定しますので、以下のマガジンの2020年4&5月の記事(設問を公開しています)を参考にしてください。
【英語で学ぶ大人の社会科】世界の知性が語る現代社会
【未完の資本主義】
2019年に出版されたインタビュー集『未完の資本主義』。その特徴は、現代社会で「知の巨人」たちと呼ばれる気鋭の識者7人に、「テクノロジー」と「経済」の観点から今後の資本主義の行く末について尋ねる内容となっています。
未完の資本主義:テクノロジーが変える経済の形と未来
今回新たに、この書籍の英語版の内容と関連記事について月2回のペースでワークショップを開催していく予定です。以下、それらの識者のラインナップです。
◆ポール・クルーグマン(ノーベル賞経済学者)――我々は大きな分岐点の前に立っている
◆トーマス・フリードマン(『フラット化する世界』著者・NYタイムズコラムニスト)――「雇用の完新世」が終わり「人新世」がはじまる
◆デヴィッド・グレーバー(文化人類学者・ウォール街占拠運動の理論的指導者)――職業の半分がなくなり、「どうでもいい仕事」が急増する
◆トーマス・セドラチェク(『善と悪の経済学』著者・チェコ共和国経済学者)――成長を追い求める経済学が世界を破壊する
◆タイラー・コーエン(ジョージメイソン大学教授・経済学者)――テクノロジーは働く人の格差をますます広げていく
◆ルトガー・ブレグマン(ジャーナリスト・歴史家)――ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う
◆V・M=ショーンベルガ―(オックスフォード大学教授・ビッグデータの第一人者)――「データ資本主義」が激変させる未来
英語版の書籍はこちらです。今後、参加を希望される方は、以下の書籍を購入してください。特にグローバル経済について学びたい方に、うってつけのワークショップです。
英語で理解する未完の資本主義
「インタビューの英語書き起こし」「日本語訳」「用語解説」「7人のインタビュー音声」をまとめた、「英語を学びながら、英語で学べる」1冊です。英語を使って勉学・仕事をしたり、最先端の知に関心のある人におすすめの内容です。
【解説】
今年は21世紀になって四半世紀の25年の節目の年です。これを機に21世紀の出来事を振り返り、検証するという企画が各地で始まりつつあります。BBCも歴史家と専門家を招いてのPodcastシリーズを企画しており、私も楽しみにしています。
25 years of the 21st Century
Sideways "What will the first 25 years of the 21st century mean and how will historians see this period? A panel of historians and leading experts join Matthew Syed to evaluate this quarter."
個人的には、2000年の初めに抱いていた新しい世紀への期待が、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件から始まった米軍によるイラクとアフガニスタン攻撃により、急速に萎んでいったように感じています。その後に欧州で起こったテロ事件を自分も経験しましたし、多くの人が同じような失望を感じているのではないでしょうか。その極めつけが、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻であり、2023年10月7日に始まったガザでのイスラエルとハマス間の戦争です。
フランシス・フクヤマ氏が予想したような「新しい平和な未来」は、やってこなかったわけですが、数々のテロ事件とガザでの紛争には、過去の欧米諸国の植民地支配に遡る異民族、異教徒への弾圧の歴史がその背景にあります。国際紛争の背景にある「宗教と政治」の関連についての、専門家の討論番組が昨年末にNHKで放送されており、そのうちの一部をYouTubeで視聴することができます。一般のニュースの解説より、はるかに分かりやすく、より深い内容でした。
【徹底討論シリーズ】VOL.7&8「宗教と政治」世界各地で起きている紛争やテロと宗教の関係は?人々を分断や暴力に向かわせるものとは何か?宗教と政治の関係を徹底討論 NHK [こころの時代]
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