カルロス・ゴーン氏の逮捕に見る日本の企業統治・司法制度

今年最後の「朝英語の会梅田@スタートアップカフェ大阪~The Japan Times紙記事について議論する」12/13(木)7:30AM~のテーマに関する記事の配信されました。12/4(火)発売のThe Japan Times紙を利用します。参加費は珈琲付きで500円です。

『朝英語の会』梅田@スタートアップカフェ大阪~The Japan Times 紙記事について議論する~第40回が開催されます。

本年度最大の経営スキャンダルの一つである日産自動車カルロス・ゴーン氏の逮捕劇。日本の経営・会計・法制度の公正性・透明性が改めて問われている事件です。

Let’s discuss the arrest of Carlos Ghosn

以下はカルロス・ゴーン氏逮捕にかかわる対立する見解、問題点を分かりやすく整理した記事です。日産自動車だけではなく、全ての日本企業のコーポレートガバナンスに関わる事件でしょう。

Was the Ghosn sting compliance or coup d'etat?

検察及び日産自動車経営陣の主張は「ゴーン氏が会長職の座に長らく留まり続けた結果、様々な不正が見過ごされ、隠蔽され続けた」というものです。「ゴーン氏が受け取るべき報酬額が財務諸表上で過少に申告され、私的な出費が会社の経費として計上されたことにより、日産自動車の経営に損害を与えている」という内部告発からこの事件はスタートしました。

一方「日産自動車のような上場企業で、長年にわたり、会長とその側近だけで巨額の裏報酬を隠蔽し続けることには無理がある。また告発の時期もルノーが日産自動車の経営に大きく関与する意思を示していた時期でもあり、ゴーン氏の告発は日産自動車経営幹部が経営の主導権をゴーン氏から取り戻すための一種のクーデターである」といった陰謀論も説得力があります。

そして当然のことながら、「このような不正を見逃した会計監査人や監査役は何をしていたのか?何故、他の経営幹部は不正に気付かなかったのか?」会長逮捕という不祥事に日産自動車のコーポレートガバナンス(企業統治)のあり方が問われているのもやむを得ないでしょう。

事実、ゴーン氏は「過少申告された報酬は退職時に受け取る予定になっているものの、あくまで予定であって、実際にその記載された額が受け取れる保証はないので、なんら不正にはあたらない」と主張しています。

Carlos Ghosn continues to deny wrongdoing as experts question prosecutors' framing of case 

そして、さらに海外から批判を浴びているのが、ゴーン氏の逮捕に至るまでの司法手続きや逮捕後の拘留期間です。ゴーン氏の拘留から既に23日以上が経っていますが、未だに起訴もされておらず、尋問に弁護士は立ち会えません。英フィナンシャル・タイムズ紙は日本の刑法の成り立ちと発展を検証し、検察の捜査手法、裁判のあり方に至るまで、日本の法制度に対する厳しい批判を展開しています。もちろん、ゴーン氏がいまだ社長を務めるルノーが本拠を置くフランスでは日本の法制度に対する不満も相当に高まっているのではないでしょうか。

Carlos Ghosn arrest shines light on Japan’s justice system

また、数年前にトヨタの外国人役員が米国の家族から送られた鎮痛剤のオキシコドン密輸容疑で逮捕され、やはり相当の期間(2015年6月18日から7月8日)拘留された事件がありました。結果として、当時常務役員であった米国人のジュリー・ハンプ氏は拘留中の7月1日にトヨタ自動車を辞任することになったのです。彼女は7月8日に不起訴処分となりましたが、もしゴーン氏が不起訴になったら、日本の司法制度と経済には相当なダメージになることは避けられません。

ジュリー・ハンプ氏、元トヨタ常務役員が不起訴で釈放へ

企業活動がグローバル化し、法制度の運営において、ますます公平性・透明性が求められる時代です。ゴーン氏の逮捕は時期を同じくして問題が表面化した外国人技能実習制度における日本の法制度の運用とも全く無関係とはいえない部分もあります。この件は日本人が海外でビジネスをするとき、多くの外国人から説明を求められる事案になるでしょう。皆さんの当日の議論に期待します。






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