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香りと記憶と少しセンチメンタル。

あ、この香りなんか懐かしい。

靴磨きの話でいうと、昔使ってた靴クリームの香りが
どこかで香ったりすると、靴磨きをやり始めた時の記憶が不意に出てきたりします。
22歳の時に実家のベッドの上で
ワクワクしながら磨き始めて..
結局全然光らなかった深夜3時。
今となっては良い思い出。

記憶なんて曖昧なもんなのですが
香りと記憶は妙にリンクしていて
フワッと香るだけでも
一気にフラッシュバックしたりします。

何気にその記憶って
最近じゃなくって昔のことの方が多くって
海っぽい磯の香りがすれば
学生の頃に弾丸で旅行した福井の海岸。
大学行って間もない時に
まだ仲良くなりきっていないのに行った海岸。
どこだかわからないけど、海の見える道で
朝方まで色々話してたっけ。
カビ臭い香りは
学生の頃によく通っていた古着屋さん。
バンド組んでた時になけなしのお金で買いに行った
ベロアのライダースジャケット。
塩素っぽい香りは
実家が建て替わった時の記憶。
まだ引っ越しも済んでいない時に
冷蔵庫だけ先に到着していて
お風呂あがりに飲んだ氷入りのファンタグレープ。

思い出すたびになんだか泣きそうになるんです。
それってあの頃は楽しかったなぁ..とかそういう感情なのかなと思いきや
そうでもなくって
何故か寂しく感じてしまうんです。
人間の感情って不思議だなぁって思ったのですが
これむしろ言葉のせいでややこしくなってしまってるって感じたんです。
”喜怒哀楽”っていう言葉で感情は括られてしまっていて
その中に細分化されてます。
寂しい、切ない、侘しい、エモい..
自分の言葉のセンスやボキャブラリーの無さで
その時の感情がなんなのか表現できない時があります。

日本語って感情や色の表現が多岐に渡ってるって聞いたことありますが
それでも尚、この感情がなんなのかわかりません。
もう”エモい”でいいじゃないと逃げたくなる、時もある。

それくらい、自分の中で香りってすごい大事に感じていて
いつか来るおじさまの香りにすごい怯えているわけです。
樺澤さんってすれ違った時になんか良い香りするーって言われる時があります。
まだギリギリ大丈夫なのかと
その言葉にめちゃくちゃ救われているわけなんですが
香りを大事にしている分、いろんな香りにこだわってます。
体につける香りは昔っからずっと気にかけていて
今はお店でも販売している香りと
ずっと愛用している香りを使っているのですが
郵送のご依頼や製品の発送の時に、ショップカードに
ソリッドパフュームや香水をちょこっとつけてお送りするんですよね。
ほんの少し香るくらいなので、ほとんどが気付かれないのですが
稀に気づいていただけることがあって
その時はこっそりしていたことがバレてしまって
嬉しいやら恥ずかしいやら、ムズムズした感覚になります。
少しでもお店の空気感を体感していただけたら嬉しいなって思うので
靴磨きだけじゃなくって、香りも少しだけお届けできたらと思ってるんです。

トータルスタイリングショップとして
香りもスタイリングの一部として提案しているのですが
その理由も、自分の香りの記憶や
そのなんとも言えない感情、そんな大事な何かを
ご提案できたらな..って思ってます。
販売したい、というよりかは
その提案が何かのきっかけになればいいなって。

意外と香りって気にかけていないこと、あると思うんですよね。
気にかけていないというか、日常で、当たり前にあるものというかなんというか。
雨が降る前のあの湿気の香りや、炊き立てのご飯の香り。
アイロンを当てた後のシャツの香りとか
本屋さんに入った時の紙の香り。
当たり前のように馴染んでいるすべての香りが
実は自分の記憶や思いを呼び覚ます鍵になっていたりします。
いつもは過ぎ去ってしまう出来事や生活も
一度立ち止まってスンって鼻から息を吸ってみると
新鮮に感じることもあるのかなって思ってます。
その時に何か新しい考えや発見が得られると
なんだか嬉しい気持ちになってきます。

人の五感って面白くって
例えば目を閉じた状態で、何かに触れると
今までと違った触り心地に感じることありませんか?
研ぎ澄ますってそういうことなんじゃないかなって。
情報は目で得られることが多いので
特に目を閉じた時にその研ぎ澄ました感覚を得られるような気がしています。
靴磨き、特に傷補修している時に
凹凸がしっかり埋まっているのかを確認するときに
目視だけではなく
目を閉じて指先で触ると、より明確に感じることができます。
これよくやってます。
よかったら今試してみてください。
目を閉じてみてください。

何かに触れると繊細に感じるようになります。
…もしくは寝ます。
最近深夜に作業することが多いので
僕は後者です。

嗅覚も同じで、普段当たり前のように流れている香りを
目を閉じて感じてみると
より繊細にそれを感じることができます。
普段忙しくってそんな時間ないって方も多いと思います。
だからこそ、ちょっとだけ、数秒だけでもいいので
目を閉じてスンってしてみてください。
研ぎ澄まされてることで
むしろお仕事が捗ったり、思考がクリアになるかもしれません。


僕はアレルギー性鼻炎です。
春と秋は、研ぎ澄ます前に
鼻が詰まっております。
ありがとうございました。

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