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基山瑣末
2024年10月7日 20:28
突き放される感覚が欲しい崖際で背を押されるそれではつまらない刷毛で以て一息に塗り上げた濃紺の夜空その真中へ仄黄色く蟠る月陳腐な感傷的風景そこへ風のふっと流れ込んだかと思うと夜幕の端から竜が躍り出たごうと吠え嘶く私の鼓膜は粉々に砕け全くの森閑に感じる空気の震え 肌の痺れただその一声の勇猛たる残滓に酔い溺れる秋の夜長の風物は押し並べて物悲しいまさしく愁いそよぐ