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「特権意識」のワークショップ

9月19日に実施した「特権について考える」という回の内容を紹介します。
その日もともとは男性学を実施する予定でしたが、手違いにより実施できず、私がやってみたかった付箋を用いたグループワークを試しにおこなってみました。


1.きっかけ

夏休みに、ティーチャーアシスタントのような役割で大学の先生の補助をさせていただく機会がありました。中高生向けのイベントで、大学で授業を受けてみよう!という主旨のイベントでした。そこで付箋を用いたグループワークを行い、私としても中高生の豊かな発想力に刺激をうけ、とてもたのしかったので、SODA.でもやってみたいなと思い、急遽試験的に実施してみることにしました!(今後、学外の中高生むけのイベントとして実施できる形にまで仕上げられたら超理想的です✨️)

2.方法

本当は模造紙と付箋をつかってやるのが理想なのですが、今回は急だったこともあって、Canvaの「ホワイトボード」という機能のなかにある、「アイデアボード」のテンプレートを使って行いました。10分ほど時間をとって、各自付箋に入力し、その後、一人の子にグループ分けをしてもらい、どういうグループとして分けたかを説明してもらったり、付箋の内容に質問をしてもらったりします。それをみて思いついたことをどんどん言い合いました。

3.「特権」を認識することの重要性

社会的公正教育の研究者である、ダイアン・J・グッドマン(2017)は、「特権」という言葉を用いて、マジョリティが持つ生きやすさが社会では認識されにくいこと、マジョリティ自身が自分が特権集団の一員であることを認めたがらないこと、そしてそれに関する批判を受け止めないことを説明しました。

私は、女性という属性が社会的弱者(マイノリティ)であることへの反発心からフェミニズムに興味を持ち、これまで学んできました。学ぶ過程で、男性という特権を持つマジョリティに対して、その特権をなぜ手放さないのかと不満を感じるようになりました。

しかし、性的マイノリティの視点から見ると、私がシス女性であることが大きな特権であることに気づきました。私も自分が特権を持つ存在であることに気づき、それを受け止め、内省するまでに時間がかかりました。

このように、自分が特権を持つ存在であることに気づくことは難しく、それを認めることはさらに困難です。多くの人は、ある面ではマジョリティであり、別の面ではマイノリティです。その一つ一つを認識し、内省することは、誰にとっても生きやすい社会を実現するために非常に重要です。
これまで見えていなかった他者の生きづらさについて、一緒に考えてみませんか?

4.特権①シスジェンダーの特権

まずはシスジェンダーの特権について考えてみました。シスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別とジェンダーアイデンティティが一致するの人たちのことをいいます。
シスジェンダーの特権としてでたものをいくつか紹介します!
・トイレを気軽に利用できる、多機能トイレの有無を確認しなくてもよい。
・温泉・プールに気軽に入れる
・修学旅行でトイレ、大浴場で困らない
・一人称に悩まなくていい
・就職難に陥りにくい
・自分の性表現を妨げられない
・制服を違和感なく受け入れられる
・男女でわけられる場面において違和感を覚えない

これらの特権について話し合う中で、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別とジェンダー・アイデンティティが一致しない人たち)は、公共の場から排除されているということを改めて感じました。

ディスカッション内でも登場しましたが、修学旅行や林間学校などお泊りがあるイベントにおいて、トランスジェンダーの方々の排除というのは顕著に現れてきます。古い学校もそうですが、林間学校などで用いられる施設において多機能トイレがある場所はほとんどないに等しい状況だと思います。トランスジェンダーの方々は、個人差はあると思いますが、トイレを利用する際に自分のため、他者のために生物学的な性別のトイレに入ることをためらう人もいます。そういった場合に多機能トイレを利用するという人も多くいるようです。ですが、多機能トイレがない施設では、トイレに行く術が限られ、トイレの利用者がすくないときに、こっそり入るしかなく、気軽にトイレに行くことができなくなってしまいます。

また、温泉やプールでも同様の問題が生じます。シスジェンダーの人々は何の躊躇もなく利用できるこれらの施設も、トランスジェンダーの人々にとっては大きな障壁となります。多くの場合、性別ごとに分かれた更衣室や入浴施設は、トランスジェンダーの方々にとって心理的・社会的な負担を強いるものです。

これらの事例を通じて、シスジェンダーの特権がいかに日常生活の中で当然のように享受されているかを再認識することができました。そして、その特権を持たない人々の視点に立ち、公共の場での平等な利用を実現するためにはどうしていけばいいのか考えることは非常に重要です。

5.特権②異性愛者の特権

次は異性愛者の特権について考えてみました。異性愛者の特権としてでてきたものをいくつか紹介します!

・合コンを開催されやすい、恋愛対象にされやすい
・恋バナが気軽にできる
・告白への障害が少ない
・お風呂に気軽に入れる
・家族として社会から認められる
・マンションなどに入居しやすい
・結婚して子どもを持つのが幸せという概念に適応しやすい

特に印象的だったのは、恋バナについての話です。特に女性同士で、恋バナをするとき、異性をすきになることを前提として「気になる男子いる?」、「すきなイケメン俳優は誰?」などと聞いてしまうことがあります。
ですが、好きになる人が異性と限らない人にとっては、異性愛を前提とした恋バナが苦痛だと感じる場合があります。

私もこのような話をしていた経験があるので、自分がいかに異性愛を前提としてきたか、同性を好きな子がいるかもしれないということを考えずに生きてきたかを実感しました。

6.おわりに

自身のもつ特権について考え、認識することはできたでしょうか?少しでもマイノリティに対して考えてみようというきっかけになれれば嬉しいです😊
今回の実施は、急遽だったので、うまくいくか不安でしたが、結構話も弾み、当初は健常者の特権もやろうとおもっていたのに、時間になってしまい、できなかったほど盛り上がりました。健常者の特権についてはまた機会を設けたいと思っております。
読んでくださってありがとうございました!


参考文献

周司あきら、井ゆと里(2023)『トランスジェンダー入門』集英社新書
堀川修平(2023)『「日本に性教育はなかった」と言う前に』柏書房
ダイアン・J・グッドマン、出口真紀子監訳、田辺希久子訳(2017)『真のダイバーシティをめざして―特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育』上智大学出版


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