ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.16 〜ジュニアアスリートの運動における血糖の重要性〜
ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。
第16回は「ジュニアアスリートの運動における血糖の重要性」を取り上げたいと思います。このメディカルサポート通信も16回になりましたが、序章をお伝えしている形になりますので、詳しい内容に興味がある方はHPよりご連絡いただければ幸いです。
今回は、15回までと少し異なり科学的データが少なく、我々の臨床的な印象を含む内容になりますので、雑談と思って読んで頂くとありがたいです。
ジュニアアスリートが、運動後の血糖値がどのように変動しているのか?については、帯同させていただく選手のリアルタイム採血で確認しており、1.5~3時間程度の中等度以上のトレーニングもしくは試合終了後ですと、
①血糖値が上がっているグループ
②変わらないグループ
③下がっているグループ
に分類されます。理論的には、運動をすることでエネルギー源として血液内のグルコース(血糖)が使用されますが、これは貯蔵量が多くないので減少してくると肝臓内や筋肉内のグリコーゲンがグルコースへ戻され、エネルギーの源として使用されます。そのため、運動を行い血糖が枯渇してくると代償機転が働き、グリコーゲンがグルコースとなり血糖の維持に働くため、運動後に血糖値が上がっているグループはこの代償機転が働いていると考えられます。同様に血糖値が変わらないグループにも代償機転は働いておりますが、活動量のバランスなどで平常状態を保てていると考えらえれます(もちろん、採血のタイミングもあるかと思います)。
では、血糖が下がっているグループはどうでしょうか?これは、運動により血糖が減り、代償機転としてグリコーゲンがグルコースに変換されますが、それが枯渇してきて脂肪や乳酸などでエネルギーを得ようとしている状態となっており、エネルギー不足を引き起こしています。Billat VL. ScientificWorldJournal.2012によるとマラソンレース中の走行スピードがスタートから12kmまでは時速12~13kmで走れているのに、36kmを過ぎた時点では、時速11kmを切るまでにスピードが落ちてしまうことが分かっており、これにエネルギーの枯渇が関係していると考えられています。サッカーでも同様に、スプリントといって時速16~22kmの速いスピードで走る距離が、前半最初と後半最後で比較するとかなり短くなっていることが証明されており、これについてもマラソンと同様にエネルギー不足が関係していると言われています。そのため、2020年にUEFA(欧州サッカー連盟)はプロサッカー選手の栄養に関する声明を発表し、試合に向けて糖質の取り方を細かく指導していました。
我々がコミットしている選手で、血糖値が運動後に低くなっているグループでありながらも、パフォーマンスがかなり高いジュニアアスリートで、本人も体力に自信がある子にフォーカスをあってて、UEFAの声明にある試合直前とハーフタイムの糖質補給(30~60g)を徹底して指導したところ、GPSでの走行距離が大幅に伸び(とくにスプリント回数)、本人の体感的にも「試合の後半でも身体が軽いままだった。自分はこんなに走れたんだ!今までが限界だと思っていた。」と実感したようで、1例ではありますが糖質補給の重要性を感じた出来事がありました。糖質補給もタイミングが重要で、試合前で早すぎると血糖値の上昇が急峻でインスリン濃度が上昇しすぎてしまい、血糖値がリバウンドしてしまうことがあるため、試合前の補給はウォーミングアップが終り、試合に入る直前と指導してリバウンド現象を発生させないようにアドバイスしました。また、ハーフタイムも甘いものを摂取することで口の中が気持ち悪くなることを防ぐために、必ずうがいをさせるようにして糖質補給の弊害を最小限に抑えました。
ジュニアアスリートは試合前の食事でのグリコーゲンの蓄えは十分でなく、試合中のエネルギーが枯渇しているケースが散見されているため、アメリカスポーツ医学会(ACSM)や欧州サッカー連盟(UEFA)などから発表されているガイドラインや声明を参考にジュニアアスリートに提案をしています。
このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?