子どもは生きているだけで 哲学者
哲学者近年の社会の変化や多様化にともない、これからの社会を生きる子どもたちには、「生きる力」を育むことが必要だといわれています。
「生きる力」とは、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、
· 学ぶ意欲や自分で課題を見つけ、自ら学ぶ力
· 主体的に判断し、自らを律しつつ他人とともに協調する力
· 他人を思いやる心や感動する心を備える力
· さまざまな問題に積極的に対応し、解決する力
を指しています。
こうした「生きる力」を育てるためには、子どもが豊かな人間性と社会性を備え、自ら学び自ら考える主体的な力を身につけるようになることが最優先課題とされていますが、これからの幼児教育は従来の知識詰め込み型の指導から脱皮して、子どもの発達に沿ってその主体的な活動を重視する指導へと変換させていくことが不可欠といえるでしょう。
子どもの発達の研究で先駆的な役割を果たしたのが、スイスの発達心理学者、ジャン・ピアジェ(1896~1980)です。ピアジェは人間の論理的思考が育っていく過程を数多くの観察・実験によって確かめ、体系化しました。そして実証的研究を通して、乳幼児期から青年期の資質・能力の発達過程のメカニズムを解明し、その理論は全世界の幼児教育の基盤となっています。
ピアジェ理論は、生きる力の育成をめざす現代の幼児教育のあり方にも、大きな示唆を与えています。つまり、感性の発達と知性の発達とは不可分であり、したがって情操の教育と思考の教育とを切り離して実施するべきではないこと、および子どもは本来、与えられた知識をただ受け入れるだけの受身的な存在ではなく、積極的に自ら知識を求めようとする能動的な存在であることを明らかにしたのです。 ピアジェはまた、次のような事柄についても明らかにしました。
子どもは小さなおとなではなく、
各発達段階でそれ特有の感じ方や考え方をする独自の存在である。
子どもはおとなの思考とは異なり、
頭だけで考えるのではなく、身体も使って考える。
子どもの思考は論理的というよりも直感的であり、
それだけに想像力が豊かにはたらく。
子どもは人とのかかわりの中で、物事を自分の立場だけからみる自己中心的な見方を脱して、相手の立場にも立って考える見方が生まれ、自分の立場と相手の立場とをうまく協調させるようになっていく。
子どもの思考力は、正しい知識が累積されて発達していくのではなく、
子どもが自分の考えの過ちに気づき、自ら修正していく活動を通して発達する。
子どもが発達するには、遺伝や成熟のような個人の素質的なものだけでもなければ、訓練のような環境からのはたらきかけだけでもなく、子どもが自ら周りにかかわり、周りからの反応に即して子どもが新たな仕方でかかわっていくという相互作用が不可欠である。
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