紅葉のお節介
新しいプロジェクト参画を決め、直人は空港に到着し、フライト情報を確認していた。
慣れ親しんだ仲間との別れの哀しみが心に影を落としていたが、空港のあちこちで見られるフライトアテンダントや他のスタッフの明るい笑顔が、その寂しさを払拭していた。
フライト前の貴重な時間を、美味しい食事でリラックスしながら過ごす事にしていた。そして、限られた時間の中でお気に入りの料理を楽しんだ。
会計を済ませてチェックインのためにゲートへと歩いていると、スマホが鳴り響いた。LINEの通知だ。画面を見ると、そこには思わず笑みがこぼれるようなメッセージが表示されていた。直人は、そのメッセージを見て、困ったような顔をしながらも、どこか嬉しそうにしていた。
「どこにいるの?たかしさんと一緒に送りに来たよ」
と実世からのメッセージが届いた。
直人は周囲を見渡し、スマートフォンの画面に返信を打った。
その時、後ろからたかしが
「おい、見送りさせてくれよ」と声をかけてきた。
直人は少し照れくさそうに
「ありがとうございます。行ってくるね」と返事をした。
たかしの隣から現れた実世は、耳を赤く染めながら直人に
「はい」と小さな声で答え、一冊の本を差し出した。
その瞬間、二人の間には言葉以上の何かが通じ合ったような、不思議な静けさが流れた。
飛行機に乗り込むと、窓の外から差し込む眩しい光が目に飛び込んできた。その光を眺めながら、これから始まる旅のことを考えていた。
新しい場所への期待、そして少しの不安。
それらが心の中で混ざり合いながら、直人は自分の席に身を沈めた。
飛行機は滑走路を進み始め、やがて大空へと舞い上がる。
窓の外の景色は次第に小さくなり、やがて見えなくなる。
しかし、直人の心には新たな景色が広がり始めていた。
本を開くと、ページの間に挟まれた手書きの栞が現れた。
「頑張ってきてください、三智より」という言葉だった。