スプーンの中のモンブラン
「大丈夫?」たかしは心配そうに実世に尋ねた。
片手を軽く握り、親指を立て、の手を胸の前に持ってきて、軽く前後に動かした。そして、顔を赤くして、ベッドで横になったまま実世は「ごめんなさい」と小さな声で答えた。
奈津は仕事の都合で日本へ先に帰国し、風邪をひいてしまった実世の面倒を見るために、たかしはニューヨークに留まることにした。
実世は、自分の感情が焼け野原に放置されたかのような孤独感に包まれていた。彼女のたかしに対する想いは、ただ憧れるだけでなく、日々強くなる一方だった。彼女の心の中で、たかしはもはやただの友人ではなく、遠く手の届かない存在となっていたのだ。
たかしは直人に向かって「空港へ行ってくる」と告げた。それを聞いた直人は、「チケットが変更できたらいいですね」と応じた。
実世がベッドから起き上がると、直人は心配そうに彼女を見守っていた。そんな時、あの2人のことを尋ねるのは少し気まずいと感じていたが、スマホをいじっていた直人のもとへ実世が近づいてきた。
そして、彼女が話題を切り出してくれたのだった。
「三智と奈津がオーストラリアでホームステイをしているんだ」というメッセージを見せてもらった時、直人は複雑な感情を抱いていた。
喜びもあれば、寂しさもある。
それは、遠く離れた地で新しい生活を送る彼女たちへの淡い羨望と、再会を心待ちにする切ない想いが混ざり合ったものだった。
彼女には、伝わらないと分かりながらも直人は「へえ、そうなんだ。いいね、すごいね」と言葉を発した。
実世は、直人が冷蔵庫へ歩いていくのを横目に、スマホでメッセージを打っていた。
実世は直人に迫るように近づき、続けてスマホの画面を直人に見せながら「どっちが好きなの?」と質問した。
直人は急いでモンブランを口に放り込み、気づけば彼の口周りにはクリームがべったりついていた。
「えっ?・・・」と、直人は実世の突然の質問に驚きを隠せなかった。