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『爆弾』(呉勝弘)=”無敵の人:爆弾魔”×ドラマ『緊急取調室』×『怒り』(吉田修一)★★★★☆*ネタバレあり

あらすじ

 「わたしの霊感じゃあ、ここから三度、次は一時間後に爆発します。」
些細な事件で連行された身元不明の容疑者 スズキタゴサク。おもむろに、連行された原因の事件とは全く関係のない爆弾予告を始める。取調室で繰り広げられる心理戦。スズキとの対話の中、刑事たちの信念は揺らぐ。

 スズキとの対話の中、浮き彫りになる社会格差、差別、ホームレス、インターネットのモラルなどの問題。そしてそれに対するあなた自身の信念。
彼らは自らの正義を守り、東京を守ることはできるのか。

感想

この本を一言でいうと、ミステリ小説でありながら、取調室でめちゃくちゃ凶悪な大福神様と禅問答する話。です!

まず、スズキタゴサクのようなキャラに初めて出会いました。真っ黒ないがぐり頭、太い眉、ひげのある二重顎、ぷっくりとした頬。

(私の中では、万城目学さんの『パーマネント神喜劇』の表紙の左側の神様のビジュに近いです。)

一見重松清さんの『トンビ』に出てきそうな優しい、人好きのキャラかと思いきや、そいつが性悪な爆弾魔というえぐい設定でございます。

私はミステリをあまり読まない(というか、アホやから読めない)たちなのですが、『爆弾』はするすると読めました。

理由としては、複雑な種明かしがある訳ではなく、あくまでも刑事と一緒に次の爆弾の場所をスズキタゴサクの出すヒントから考えていくので、臨場感があり置いてけぼりにされない!

かつ、スズキタゴサクとの会話では、世の中の不条理が、よく議題に挙がるので、そういうことについてはっとさせられたり、ドキッとしたりします。

吉田修一さんの『怒り』では、犯人はだれなのかというミステリでありつつも、”信じる”とはどういうことなのかも同時に訴えかけてくる作品だと思っているのですが、それに似たものを感じました。

とくに、女刑事が上司からのセクハラについて回想するシーンでは、著者の簡潔ながらも思考の深さを如実に表している文章に心奪われました。

言葉尻をとらえて、ジェンダー問題だの差別だのとすぐに炎上する世の中にうんざりした気持ちを抱えつつ、セクハラにもやっとする自分もいて、でも下ネタも愛があれば嫌じゃない、、、という沙良の複雑な気持ちにめちゃめちゃ共感しました。

それぞれのキャラクターに嘘がないので、スズキとの対話がめちゃ迫力があって魅入ってしまいます。

そして、最後の一文「最後の爆弾は見つかっていない」
こわいいい!!
やっぱ見つかってないやんな?
自分の読み飛ばしかなとか思ってたけど、やっぱり見つかってなかったですよね?

はやく続きが読みたいいいい!となっている次第でございます。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
またシリーズ第二弾『法定占拠』も読んだら、レビューさせていただきます!!

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