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セミ〈『CONCORD』サービス終了〉

⒈『CONCORD』について

2024年9月6日、ソニー・インタラクティブエンタテイメント(以下SIE)が発売したヒーローシューティングゲームの『CONCORD』が、販売から二週間足らずでサービス終了する事態となりました。
本作は開発期間に8年、費用に約2億ドルという大規模な開発の元で制作されたことが明らかにされていましたが……キャラクターのビジュアルがDEI、俗に言うポリコレに寄せていたことで、あまり喜ばしくない意味でも話題となっていました。

より詳しい内容はクソゲーハンターこと、からすまaチャンネルさんの動画を見ていただけると幸いです。

2.敗因

近年、ストリーマーによるゲーム配信やe-スポーツの発展によって、ビジネスという意味でもゲーム産業は熾烈を極めています。
今回話題となった『CONCORD』もその流行に乗る形で開発されており、実際、同じFPSというジャンルで人気のゲームには『APEX Legends』『Overwatch2』『VALORANT』があります。
しかし、『CONCORD』は長い開発期間を経たにもかかわらず、これらのゲームを上回るほどに人気を得られませんでした。現在、人気の三つのゲームと比較し、ネットで散見されている意見をまとめた結果、以下の三点が挙げられます。

①戦略性

従来のFPSゲームと言えば、銃で撃ち合い、投擲物で戦況を打開しーーといったサバイバルゲームに近い形式での戦闘が主でした。
しかし、近年のFPSゲームはそこにキャラクターの特性と、カジュアルな競技性のルールが取り入れられ、単なるサバイバルゲームとはまた違う形式となっています。
『APEX Legends』では、キャラクターの有するアビリティ、役割が存在しており、組み合わせることでチームごとに個性が出るようになっています。
『Overwatch2』では、タンク、ダメージ、サポートと明確な役割がキャラクターに示されており、チームで行動することの重要性が極めて高く示されております。
『VALORANT』では、戦闘前に所持する物資、マップの特性、キャラクターのアビリティなど、高い戦略性とキャラクターの戦術性が強力なシナジーを発揮しております。
また、全てのゲームにおいても、全てのキャラクターはアルティメットと呼ばれる必殺技を有していることも特徴的で、使い所によっては不利な状況から一気に逆転することも可能です。
演出も『アルティメット』の名の通り、派手で非常に分かりやすいものが多いです。『Overwatch』を例に挙げるとーー

・「龍神の剣を喰らえ!!」というセリフと共に刀を振るって進むゲンジ
・「俺は速いぜ?」というセリフと共に、射線に入った敵に言葉通りの素早い銃撃を放つキャスディ
・「〇ね……〇ね……〇ね……!!」と言いながら周囲にショットガンを放ちながら動くリーパー

彼らのセリフは少しゲームを知っている方なら誰でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
こういったキャッチ―な部分も初心者に受ける要素となっているのでしょう。

一方『CONCORD』は、5v5のチームバトルであり、『VALORANT』や『Overwatch』に近いゲーム性でした。
上記のゲームと同じく、キャラクターごとに個性はつけてはいるものの、アルティメットに相当する必殺技は無く、プレイしていても、地味な印象しか残らないというユーザーの声が非常に多かったです。
また、各種ルールも上記のゲームに似たものが多く、目新しさが無かったという意見もあります。目新しさが無いということはつまり、たとえ初動のユーザー数が多かったとしても、その後離れていくユーザー数の方が圧倒的に多くなる可能性が高いです。〇〇っぽいゲームをプレイするぐらいなら、〇〇そのものをプレイする。それがユーザーとしては当然の行動です。

②キャラクターの魅力

キャッチーなデザイン、大まかなストーリーに紐付けられたキャラクターのバックストーリーなど、どのゲームも各キャラクターに分かりやすい魅力が存在しています。
『APEX Legends』『Overwatch2』は共に、特定のキャラクター間でのやり取りが存在しており、それらのちょっとした部分でキャラクターへの理解度を深められる工夫がなされています。
そのため、ファンコミュニティにおける二次創作活動で、キャラクター単体だけでなく、二人以上のキャラクターが描かれているイラストも多く見受けられます。
『CONCORD』のキャラクターデザインに関しては、後々別の角度から詳しく触れますが、デザイン面に関しては私以上に詳しく解説している方がいるので、こちらを参照ください。

近年話題になっているポリティカル・コレクトネス(以降、ポリコレ)に関しても、いずれのゲームも僅かに触れられるか、あるいは丁寧に描くことで魅力の一つとしているのが特徴的です。

これは主に『APEX Legends』での話になりますが、例えばオクタンというキャラクターは義足を付けており、両足を欠損した身体障害者であることが明確に示されていますが、そのようなことを感じさせないほどに明快なキャラクターとして描かれている上、それどころか義足を戦闘用に改造してしまうなど、障害になるどころかキャラクター性に一役買うための、文字通り武器にしています

ーー戦場の真っ只中でポーズを取るオクタン

また、クリプトというキャラクターは、韓国人のキャラクターとして登場しており、これは近年ヨーロッパなどで問題となっているアジア人差別に対する問題提起が根底にあることが想定されています。彼は無罪のまま犯罪者に仕立て上げられた凄腕のハッカーという設定や、言葉の端々に韓国語を織り交ぜて話す様子などがユーザーから好評であり、キャラクターの使用難易度とは対照的に非常にファンアートが多いキャラクターとなっています。

ーーAPEXを運営するEAが公式で出しているクリプトのイラスト

一方で『CONCORD』ですが、キャラクターに魅力を感じないという意見がよく見られました
キャラクターの描写はざっくばらんになされてはいるものの、それが更に深掘りされることはありません。それ故にユーザーはバックボーンではなく、ビジュアルでキャラクターを見るより他なくなるわけですが……
残念なことに、キャラクターのビジュアルはリリース前から散々な評価を受けているというのが現状です。
ポリコレに配慮した結果というお話が散見されており、その結果個性を出すことには成功していますが、キャッチーさは些か欠けているように思えました。
何においても、メッセージ性というものは大事です。しかし主張が強すぎると人はかえって敬遠してしまうというもの。デザインを担当された方は、その匙加減を誤ってしまったようですね……。

③値段

そもそもの話、基本プレイ無料がうたわれる昨今のオンラインゲームにおいて、『CONCORD』は4,480円の値段が設定されており、デラックスエディションともなるとそこから更に2,000円高い6,480円。
上記三つのゲームは圧倒的人気を誇りながら、基本プレイ無料であることを踏まえるとかなり挑戦的だと言わざるを得ません。
なお、基本プレイ無料のゲームは、全てキャラクターのスキンに対する課金によって売り上げを出しています。前述したキャラクターに対するキャッチ―な部分や、ファンコミュニティにおける二次創作活動においても重大な役割を担っており、それらを理解しているためか課金アイテムとして用意されるスキンは非常に気合が入っております。
推測でしかありませんが、『CONCORD』も同様の手法を取るつもりであったのならば、最初の購入金額がより大きなハードルになってしまった可能性が大いにあり得たでしょう。ゲームをプレイするためにお金もかけて、その上で更にお金を取ろうというのでしょうから、上記のゲームを圧倒的に上回る魅力が必要となります。そもそもポリコレに配慮している時点で絶対に無理

3.ゲーム市場の今後

①ビジネスとしてのゲーム市場

国内ゲーム市場規模は、2020年に2兆円を突破して過去最高規模を記録して以降も、高い水準を維持しています。

グローバル市場は、2021年時点で21兆650億円、2030年には95兆3770億円になるという市場予測もあり、引き続き大きく成長を続ける見込みです。

日本市場はまだ1割にも満たない点と、ゲーム市場が世界的に右肩上がりで推移している点から、今後の日本のゲーム業界は伸びしろが期待されています。

ーーGeekly Media『今後、ゲーム業界はどうなる?これから求められる人材についても合わせて解説』より引用

2030年まで成長を続けることが予測されているゲーム市場。これまでは娯楽として見られてきたゲームが、今や資本が行き交う大きな市場としての機能が付加される形となりました。
日本においてもVtuberやe-スポーツ選手、ストリーマーの方々に企業案件がもたらされたり、海外の大会進出が取り沙汰されたりと、いわゆるお金の話が聞こえてくることも珍しくありません。

②サブスクの普及

現在、各プラットフォームにおいてサブスクリプション型のサービスが急速に普及されています。その内容というのがーー

『月額料金を支払うことによって、いくつかのゲームが期間内で遊び放題になる』

というものです。料金も月500~600円と良心的なもの多く、ゲームタイトルも過去に話題になったものからマイナーゲームまで様々。このことからマイナーゲーム、インディーズゲームの注目度が今後上がってくるのではないかと有識者の間では予想されています。
元々マイナーゲームだったものの、一気に注目を浴びて有名になったゲームの例として挙げられるのが『スイカゲーム』と『Banana』です。お腹空いてんの?果物ばっかりじゃん……
どちらも以前からリリースされていたマイナーゲームではあったのですが、多くのストリーマーから注目を受けた結果、ユーザーが爆増。人気ゲームの仲間入りを果たしました。
サブスクリプション型のサービスが普及した場合、今後これらのようなゲームが増えていくことでしょう。

③VR、メタバースの存在

2010年代に『ソードアート・オンライン』が流行し、一気に話題となったバーチャルリアリティー、通称VR。キャラクターとプレイヤーの視点が一体化したことが特徴となるVR技術は、新たなゲームの可能性を秘めていることで注目を浴びています。
2021年には、Facebookの創始者であるマーク・ザッカーバーグ氏が、VR技術を応用したメタバースと呼ばれる、さながらもう一つの現実空間と呼べるような仮想空間を創り出したことも大きな話題となりました。

現在、VR、及びメタバースは発展途上であり、今後のネットワーク技術が発展していけばより一層の市場価値が望めることが予想されております。

4.ゲーム市場が抱える問題点

①チーター

特にApexLegendsにおけるチート問題はユーザー間にも取り沙汰されており……

ーー配信者がオートエイム及びチーミングのチートを使用したプレイヤーによって倒される映像

ランクマッチにおける上位層はこういったチーターが特に多く、開発陣も日夜対応に追われているものの、現状としてはいたちごっことなっている状態です。

ーー上記の動画のコメント欄に出現した本人と思しきアカウント

というか30歳で親の金使ってチートをした挙句年収750万の公務員と嘘ついているのヤバい

とはいえ企業も指をくわえて見ているだけではなく、各々でチーターに対する制裁を行っております。
とりわけ『VALORANT』のアンチチートシステムは強力であり、海外のチーターの使用者からは大きな悲鳴が上がりました。


②ポリコレ

社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す。

ーー『ポリティカル・コレクトネス』wikipediaより引用

昨今、叫ばれているポリコレ。これがゲーム業界にも浸透しているようなのですが……

ーーゲーム『Horizon』の主人公、アーロイの変遷

やり過ぎだろコレ
外見の相違や性別の差に関しての問題に関しては私も同情しますが、現実的な問題を空想に持ち込むのはいかがなものかと思います。ポリコレの定義に則るならば、日常生活を過ごしている人にもちゃんとした権利はあるはずです。
大きな主体性を盾に自分達の意見を主張し、他者の権利を侵害することは差別主義者と何も変わらないです。
ゲームに関してはあくまで空想の世界です。過去の出来事を土台にしているストーリーならばやむを得ませんが、『APEX』のように少し匂わせるか、あるいはそのキャラクターの魅力のように描写するぐらいが丁度いいと私は思います。

③健康問題

2002年、韓国の光州市のネットカフェにて、86時間連続でオンラインゲームをし続けていた男性が意識を失い、そのまま亡くなってしまう事件が派生しました。
いわゆるゲーム依存症は、WHOが正式に認めた精神疾患であり、特に若年層において深刻な問題となっています。ゲームのやり過ぎによって視力低下や脳の萎縮はもちろん、エコノミークラス症候群による死亡事例も存在しています。ゲームをやったら時折休憩を挟むように心がけましょう!
上記の話はほんの一例に過ぎず、世界中ではゲームのやり過ぎによって様々な事件が巻き起こされています。

④労働環境

東京ゲームショーが終わるたび、欧米のジャーナリストたちは皆、目隠しをした観光客のように日本のスタジオや開発者を祭り上げています、非常に腹立たしいです。

実際の話、多くの日本の開発者は何年もの間、驚くほど低い賃金でかつクランチ(強制的な長時間労働)のような状況で働いています。

ーー上記ポストの意訳

昨今のゲーム業界の労働環境は非常に劣悪である……というのが直近までの話です。

日本政府は2019年に「働き方改革関連法」を施行したからだ。
同法の法律案要綱においては「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」などが掲げられており、施行後は同法に基づき法改正がおこなわれている。
具体的には、労働基準法においては時間外労働の上限規制などが設けられた。
そしてKellams氏が日本で働いていたと見られる時期は先述のとおり2005年から2017年にかけての約12年間であり、同氏の投稿は同法施行以前の経験に基づいている点に留意したい。

ーーオートマトンさんの記事「日本のゲーム会社は長時間労働で低賃金だった」と海外開発者がこぼし波紋を広げる。ただし賃上げや働き方改革で当時から業界も変化』より引用

働き方改革が行われた昨今では、環境が整備されている企業が徐々に増えてきています。ゲーム企業=ブラック企業という構図が過去のものになるのは近いのかもしれませんね。より詳細な内容は以下の記事をご参照ください。

5.最後に

ゲームに限らず、超人気のコンテンツを生み出し、その人気を維持することは大変難しいことです。FPSゲームにおいては既に覇権を握ったゲームが複数存在しており、現状として新規IPは参入することすら困難となっています。仮に話題となったとしても、しばらくすればすぐにほとぼりが冷めてしまい、すぐに元の覇権のゲームに戻ってしまいます。

とはいえ、ふとした瞬間に人気が爆発するゲームが出てこないわけでもありません。そしてそれは、私達の想像もしないゲーム性を有したものではないかと推測します。
今後のゲーム市場の発展がより良いものであることをお祈りして、今回の記事を締めさせていただきます。ここまでご高覧いただき、ありがとうございました。

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