ヘルニアとへんろ
めおとへんろのすすめ ~夫(わたし)のへんろエッセイ~
2008年の夏、椎間板ヘルニアになりました。クルーザーのトイレの扉に腰を打ちつけてしまったのが原因です。しばらくは間歇跛行の状態で歩くこともままならない状況でした。16年経った未だに左足先までの痺れは残ったままです。
当初は手術をしようかどうか悩みましたが、してもしなくても1年後の状態にそう変わりはない、という話もあったため、可能な範囲で歩くことで痛みを改善していく保存療法を治療方針としました。帰宅時の通勤電車への乗車駅を一駅先、二駅先と伸ばしながら、歩くことを続けました。間歇跛行なので、歩いては止まり、歩いては止まり、を繰り返しながら、夕暮れの街を家路に向かっていた頃を思い出します。
その四年後に四国に転勤、五年後の春から歩き遍路に出かけることになったわけですが、その頃には、痺れは残ってはいるものの、歩いていると、痛みや痺れは忘れてしまうようになっていました。椎間板ヘルニアでも歩き遍路は可能、ということを身をもって体験してきました。
普段でも、痛みや痺れには慣れっこになってしまい、古くからの友達のように、いつもそこにいる、という感覚になっています。
ところが、今年2024年の夏、別のヘルニアになってしまいました。鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸です。先週月曜日に診断を受け、今度は手術をすることになりました。放っておいて善くなることはなく、早めの処置が良いとの判断です。
0歳児の時にも、鼠径ヘルニアになって手術跡が残っているのですが、当時のことは憶えているはずもなく、58年ぶりの手術に少し怯えている状態です。聞いてみると、兄弟親戚や友人など、身近な人たちの中にも経験者が3人いたので、そんなポピュラーな疾患なのかと認識を新たにしました。
ともあれ、油断をすると、ぷっくりと腸がはみ出してくるので、何をするにしても気を遣いながらになります。それでも運動不足にならないように、最低限の体操や歩行をしてはいますが、手術日までまだ2週間以上あり、なんとか乗り切っていかねばなりません。
以前、自ら書いたへんろエッセイの中に、「自由とは、不自由を不自由と思わないこと」という言葉がありました。遍路を通して学んだことを、今こそ生かす時かと、身に染みて感じているところです。
ともかく、無事に手術を終えて、また気兼ねなく、遍路道に戻っていけますように…。