
個人的ベスト インド映画『パッドマン』は、ビジネスパーソンに効くスパイス
世の中は『ボヘミアン・ラプソディ』フィーバーからの『ファンタビ』祭り。そして師走を駆け抜け冬休み映画の時期になろうとしている中、あまり話題になっていないがとても熱いインド映画を観た。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』である。
PCで変換しようとすると「バッドマン」に変換されるし、予測変換を裏切り「パットマン」で検索しても「バッドマン」のリスティング広告が出てくる。
「パットマン」はハリウッド映画で、マーベルのコウモリヒーローの話ではない。ボリウッド映画で、インドの生理用品を作った男の話だ。
南インド出身の56歳アルナーチャラム・ムルガナンダム氏の実話を元にした作品である。
インドの小さな村で、貧しいながら幸せな新婚生活をおくるラクシュミ。
しかし最愛の妻は、貧しいがゆえにインドでは高価だった生理用ナプキンを買えず不衛生な布で処置をしている。妻を救うために立ち上がったラクシュミ。「高いのであれば自分で作ってしまえばいいじゃないか!」
そうして立ち上がったはいいものの、インドでは生理に関して話題に出すことは社会的なタブーとされていた。罵詈雑言をあびながら、どん底まで落ちながら、それでも諦めないラクシュミ。そしてついにラクシュミは安価なナプキン製造機を発明し…
そういう話だ。
このパットマン。何が熱いかというと、妻への愛ももちろん熱いのだが、彼の姿勢がとても熱い。
仕事や人生において大切な視点をいくつか提供してくれた。
1.イノベーションは狂気から
何しろパットマンことラクシュミは狂気とも言える情熱を持っている人物だ。
妻のこと思ってからこそ始めたことだが妻には「やめて恥ずかしい」と泣かれても辞めず、村八分となって自分が住んでいる町から追い出されても辞めない。
普通だったら、妻からやめろと言われたやめてしまうだろう。
しかし彼は違った。「皆言えないだけで求められていることで、絶対に必要なことだ」と確信を持ちどんなことがあろうと安価なナプキン作りを辞めようとしなかった。
イノベーションは、こういった狂気とも言える情熱から生まれるのだろう。
2.大元のユーザーベネフィットを忘れない
安価なナプキンを作れる機械を発明し賞をとった時、ラクシュミは、
「当然、特許を取るでしょ?そしたらあなたは大金持ち!」
と言われる。しかし彼は拒否をする。なぜか。
「そうして企業に売ってしまうと、せっかく安くするために機械を作ったのに、ナプキンの価格が上がってしまう。だから僕は特許を取らないよ」
彼はそう言って、決して特許をとったり、大企業に自分の作った機械を売り込もうとはしなかった。
それは彼が作ろうとしたものが、「ナプキンを、手の届く安価な価格で手に入れたい」というニーズを叶えるものだったからだ。
スケールをしてくると、往々にして大元のユーザーベネフィットが忘れられてしまう。
「誰の何のためのもの?」
それを常に前提に置き続けることが重要だ。
3.持続可能な仕組み
大企業に機械を売らなかったラクシュミがどうしたかというと「各地域で地産地消」という仕組みを構築した。
各地域にナプキン製造機を設置し、その土地の人が生産し、その土地の人が売って歩き、そしてその土地で消費する、という仕組みだ。
大企業が大量に生産し販売する形では続かない可能性がある。
大企業が潰れてしまう可能性もあるし、様々な事情により販売しなくなる可能性もある。また、消費者側が購入できなくなる可能性もある。
一方ラクシュミが構築した仕組みは、各地域で完結しているので
ニーズがある限り継続するようになっている。自走ができるのだ。
一部の企業が効率的な生産活動をし、個人の仕事がなくなる時代になると言われている現状において、
今後の生産のあり方について考える一助にもなる。
4.お金をもらうと自分だけが笑う。いいことをするとみんなが笑う
この言葉は、ラクシュミが国連で演説するシーンに出てくる言葉だ。
彼は特許をとって莫大な資産を得る選択をすることもできた。
しかし彼はそうしなかった。
なぜかは、この発言に集約される。
お金をもらうと自分だけが笑う。いいことをするとみんなが笑う
話題にならない原因は、「ダンス!」や「派手!」なイメージがあるボリウッドにしてはテーマがかなり社会的なことだったりとか、
裏でボヘミアンやファンタビが話題になっていたりとか、作品内で扱われるモノが「生理用ナプキン」と少し触れにくかったりするものだったりと、色々あろうとは思う。
ただ、決して「The社会派」な映画ではないとは言っておきたい。
ダンスはほんの1シーンしか出てこないが、ボリウッド特有の明るい音楽は随所に出てくるし、エンディングの音楽は最高。
『The Pad Man Song』
https://www.youtube.com/watch?v=8ktEOccsbbI
※映像にはネタバレも含むので、観てない方は音楽だけ聞いてほしい
Oh~Pad Man~♪
号泣必須(自分だけかも)、仕事のモチベーションUP、映画としてもしっかり楽しめる。
そんな素晴らしい作品なので、ファンタビの次でもいいので観てほしい作品である。