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【琴爪の一筆】#10『「複雑系」入門』金重明⑤
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文学などを語り合う友はいる。しかしかれらに複雑系の科学についての話をしても、まったく反応を得ることはできなかった。
生命の謎まで』金重明著
講談社ブルーバックス 2023-04
p245より引用
浮いちゃったんですよね。勢いこんで熱く伝えた、もしくは、恐る恐る覗き込むように伝えたものの「え、なにこの空気」ってなっちゃった。これ、一抹の寂しさはあるけど、その反面、とても素敵なことであると思わずにはいられないのです。
周りから浮くほど豊富な知見と、それに伴う何かの確信を得てしまった。こんな風に何かが視えた、視えはじめてしまった人は、必然的に多かれ少なかれ孤独を感じるはずなんです。この孤独が実は「愛」につながるんじゃないかって思うわけです。
とんがればとんがるほど孤独になる。でも、とんがらずにはいられない。あくなき知への欲望にかられている。下手をすれば、自分が勝手に置いてけぼりにしてきた周囲の人たちに、甚だ理不尽な悪態をつきたくなるようなこともあるでしょう。
でも、孤独に覆われて、苦しんだり、へたり込んだり、憤ったりして自分の居場所すらわからなくなった時、ふと横を見れば、自分とは別の方向にとんがってしまった人が遥か遠くに見える。どうやらその人も苦しそうではある。だいじょうぶかな。倒れそうだな。でも遠くにいるから手を差し伸べられない。声だけなら掛けられる。あ、こっち向いた!無理して笑って親指なんか立てちゃってる。
人を慈しむことができるのは、同じ方向だからではなく、同じとんがり具合だからでもなく、ただその人のどうしようもない孤独を垣間見たときなのではないでしょうか。
それを見た私は、相手や自分がいかにボロボロになっていたとしても、その人の大事な大事な愛の種子とも言える孤独、いわば「その人たった一人しかいない宇宙」を壊さぬよう、ただ優しく呑気な挨拶を交わしたいのです。
「今夜も星が綺麗ですね。」と。