【3年目のデザイナーコラム】ワンポイント解説:富山市路面電車南北接続開業式の記念品ができるまで
第54回日本サインデザイン賞において「富山駅路面電車南北接続開業記念事業のプロモーション・サイン」が金賞・諏訪光洋賞・高橋俊宏賞を受賞しました。https://www.facebook.com/GKSekkei.inc/posts/833447697414924
GK設計はこれまで駅空間から街路空間、LRV車両デザインから電停、照明柱やベンチなどのストリートファニチャーに至るまで富山市路面電車南北接続事業においてトータールデザインの視点で長く関わってきました。
2020年3月21日、富山市の長年の夢であった富山駅路面電車南北接続がついに実現し、当日は街全体で盛大なお披露目イベントが開催されました。駅空間の南北がシームレスにつながることで、これまで以上に人々の行き来が加速し、富山のまちは一体となって発展していくでしょう。
南北接続開業日のお披露目イベントにおいてGK設計はプロモーション・サインを担当し、街中のバナーやポスター、車両ラッピング、会場などの環境演出、記念式典招待状やパンフレット、様々な記念品などのグッズ展開を含めたあらゆるものをデザイン対象とし、都市空間全体が一体となるような演出を行い、地元のデザイナーや地場産業と協働しデザインを展開することで本当の意味で街で親しまれる開業式を目指しました。
今回は2020年3月21日の開業イベント時に来賓に配られた記念品のデザインについて解説します。
1.100年の思いを託した記念品のデザインコンセプト
約100年前から河川や鉄道によって街が2つに分断されていた富山市の人々にとって、今回の南北接続事業の実現は長い年月を感じさせるものであり、記念品はその「時間」の価値や重みを感じさせるものであるべきだと考えました。
デザインモチーフとして、ガラス底の盛り上がりを富山の立山連峰に、降り注ぐ砂を100年の時を経ても変わらない立山の雪景色と見立てガラス細工として表現することで、悠久の時間を感じながら楽しめる記念品をつくりました。
2.富山市名産のガラスとのデザインコラボレーション
製作は富山市の代表的なガラス工芸の工房である富山ガラス工房と協働し、内部の砂を含め全てを富山名産の工芸ガラスで仕上げました。吹きガラスによってひょうたん型のベースを作り、底面に立山を形どった金属鋳物を押し当てることで「ガラスの立山」を成形しました。
本来、上下の膨らみやくびれ部分の穴の大きさを調整することが非常に難しいため、機械生産レベルの高い精度の求めらる工程ですが、職人さんにお願いをすることで、高精度かつ個々に微妙な違いのある工芸ガラスらしい造形の魅力を両立して可視化することができました。富山のガラス職人さんの吹きの技術の高さには、試作段階から大変驚かされました。
パッケージは外箱を富山の澄み切った青空に、内箱を立山の雪げ景色に見立てたデザインとし、個々に微妙に違う形をしたガラスを包み込むパッケージにも細心の注意を払い、封を開けた時の驚きとガラスの造形の美しさを損なわず、かつ安全に配布することができる梱包方法を検討しました。
3.地元デザイナーとのデザインコラボレーション
記念式典やプレイベント等に参加された市民の方へ配布した記念バッジや、市の行ってきた事業全体をまとめたパンフレットなど、地元デザイナーのアイアンオー株式会社の山口久美子さんがデザインしたキーグラフィックを共通のアイコンとしてデザイン展開し、街全体が一体となった都市プロモーションとなるように努めました。
まとめ
今回は、一見プロダクトデザインのようでいて、ハンドメイドであり、地元の人々の思いをのせた特殊なデザイン・プロジェクトでもありましたが、今後も地元の方々や職人さんの思いを伺いながら、地元ならではの価値や造形のあり方を考えていきます。(西川啓)
富山市南北接続開業記念記念品 デザイン:株式会社GK設計+株式会社GK京都 製 作:砂時計-富山ガラス工房 / パッケージ制作-富山スガキ株式会社
富山市南北接続開業イベント 開 業 日 :2020年3月21日
施 主 :富山市、富山市路面電車南北接続開業記念事業実行委員会
全体デザイン監修:GK設計+GK京都
各種デザイン :GK設計+GK京都
キーグラフィック:アイアンオー株式会社(山口久美子・石井陽一・成田有希)
ポスター・バナー:アイアンオー株式会社(山口久美子・石井陽一・成田有希)
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