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天才が教えてくれたロック魂
天才が好きだ。
天才は努力の人と比較されがちだけれど、私は天才が努力していないなどとは思わない。凡人がどんなに努力してもできないことをするのが天才なのかな、と思っている。
技術でもいい。
センスでもいい。
ルックスでもいい。
自分が凡人なだけに、こーんなすごい人いるのか‥‥!!と驚愕させてくれる人を見るのはとても好きだし興奮する。
突然こんなことを言いだしたのは20数年ぶりにこの動画を見たから。
hideはX JAPANのギタリストだったミュージシャンで、1998年死去。
この動画は亡くなる直前に収録され、死後テレビ放映されたものだったと思う。
これを初めてみた当時はなんというかっこいい天才だろうか、と痺れたものだったが、まさか何十年かたった後に同じ動画を見て、同じ感想を抱くことになるとは思わなかった。
私は20代のころhideが好きで、CDはほとんど買い、ライブにも行った。
hideという人はX JAPANのギタリストとかビジュアル系といったイメージが強く、食わず嫌いをする人も多いのではないか。
私も初めはX JAPANのギタリストというイメージにとらわれていて、hideがソロ活動を始めると聞いて、そっち系(どっちだよ)なんだろうなあ、などと思っていた。
だからソロアルバム「HIDE YOUR FACE」を聴いたときは驚いた。
とにかく良かったのだ。
幅広い音楽性。あれもしたい、これもしたい、という衝動に突き動かされたような、疾走するぶっ飛んだアルバム。
それは私の中の「X JAPANのギタリスト」という固定概念をきれいに払しょくしてくれた。
衣装もオシャレ。
赤い髪に、相当のセンスがないと着こなせないような極彩色や蛍光色の服。全身真っ白、なんていう時もあった。デザインも細部まで凝っていて、強いこだわりを感じる。
しかし、天才には天才の苦悩があったことは想像に難くない。
この動画の「DOUBT」という曲、「HIDE YOUR FACE」に収録されているが、とにかく怒りに満ちた曲なのである。
うまい話 おあずけチワワのまんまじゃ
割りが合わねえぜ
踊った自分 ヂレンマの池で泳ぐ
自己嫌悪のJelly Fish
顔も知らぬヘノヘノモヘジのキサマラノツラにゃ
喰い残しの音符がブラさがってるだろうよ
会社員というものは、ミュージシャンという職業を自由の象徴のように思っている節がある。
好きなことを仕事にできていいな。
嫌なことはしなくていいんだろうな。
キャーキャー言われてうらやましい。
当然そんなわけはない。
好きなことを仕事にしようと思ったら、当然好きじゃないこともしなくちゃいけないわけで。
「DOUBT」の歌詞はミュージシャンに群がる魑魅魍魎と、それに巻き込まれる自分に対する怒りが爆発している。
動画のhideは赤い髪に黒縁メガネ、黒いスーツ姿。(白いシャツの襟や袖は切りっぱなし風で、こだわりを感じる凝ったデザイン)
サラリーマンが持っているようなカバンを持ち、一礼してスタジオに入ってくる。
イントロが始まるとタバコに火をつけ、腕時計をチラリ。そして、
「ぜったい嘘じゃん」
とつぶやく。
曲は激しさを増していき、横山やすしのような動き。サビでは、
「Doubt Doubt Doubt You!!」
と怒りを込めた絶叫。
曲が終わると一礼して、作り笑顔でニコリ。
長いものに巻かれなければ生きられない世の中でも、心の中にこんなロック魂は持ち続けたいとしみじみ思うんである。
56歳になったhideが見たかった。
それが残念でならない。