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読むべき本を選ぶための本4選


2019年もあとわずか。いまnoteが29本でこれが30本目。今年はこれで書き納めとします。これまで読んでくださったみなさん、スキしてくださったみなさん、フォローしてくださっているみなさん、ありがとうございました。2020年もよろしくお願いします。


さて、読みたい本は日に日に増していくし、やりたいことは増えていくし、でも人に与えられている時間はきっちり24時間。どれだけ時間を切り詰めても全ての本を読むことはできないんですよ。悲しいかな。

大事なのは読むべき本を仕分けることと、読む順番を間違えないこと。だいぶアカデミック寄りですが、わたしが頼りにしている羅針盤ともいうべき4冊を取り上げます。


(こういった「読むべき○○本○選」というのは誰が選んだかが大事であなたは何者かと言われれば一大学生でしかないですが、わたしがまとめたいと思ったのでまとめます。わたしのnoteが拙いかもしれませんが、選んだ本はどれも素晴らしい本です。それは間違いない。)


1.日本実業出版社編、茂木健一郎監修『学問のしくみ事典』(日本実業出版社、2016)



「ちょっと社会学に興味があるけどなにから読めばいいんだろう…」「文学って小説ならすぐ手に入るけど、学問として学ぶにはどうするのだろう…」

好奇心だけは旺盛なのでそう思うことがよくあるんです。大学で専攻している分野なら講義で学べるからいいものの分野が違うと本の良し悪しの選択もひと苦労。最近ではこの本で最初に読むべき本の目星をつけています。

人文科学、社会科学、自然科学、文化芸術という4つの大テーマの中に哲学、社会学から数学、映画、写真、さらには航空宇宙工学まで学問の成り立ち(複雑な学問は図解も)から重要概念、そして参考図書ガイドと盛り沢山の内容。

目次を見ていると自然科学の分野はあまり手を出していないかな。医学は医者になるための勉強のイメージが強いし、数学は……それでも医療サスペンス小説は大好きだし、『博士の愛した数式』は好きなので普段読まない分野も意図的に読んでいきたいですね。

気になる分野からこつこつと集めて読んでいます。2020年はその成果をnoteでいかせればいいですね。特に文化人類学、教育学、文学あたりを。



2.松岡正剛・佐藤優『読む力』(中央公論新社、2018)



「東西論壇130年を振り返って150冊を選ぶ」という対論集。初級、中級、上級と分かれているわけではなく、紹介している本の歴史的意義にフォーカスして選んでいます。

この本で注目すべきは第5章。専門的で難解な学問を一般の人々にも分かる言葉でまとめた「通俗本」の名著を50冊取り上げています。

「通俗」って何かといえば、例えば聖書を理解したいとなったときに1番正確なのは原本を原本に書かれている言語で理解することです。ただそれって日本人にとってまず語学の勉強、キリスト教の文化の勉強をしたうえで読むということです。ものすごく時間と労力がかかります。

しかし、聖書の内容を理解する方法が一つかといえばそうではなく

原本 → 各国語に翻訳された本 → 注釈が入った本 → 原文と解説が混ざった本 → マンガ のような順で(この流れはわたしが難解な原本が分かりやすくなる流れを勝手にイメージしました。)より多くの人が大まかな内容理解ができるようになります。

この章で取り上げられている本は(もちろん勉強してからの方がより深く理解できますが)読めばわたしたちに多くの気づきを与えてくれるはずです。

難しい内容を本質をはずさず分かりやすくしてくれる方々によって、わたしは短い時間と労力で多くのことを知ることができているのです。感謝。



そろそろ「ながいな」と思われてそう…。本当に読んでいただきありがたいです。


3.立花隆・佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文藝春秋、2009)


さらにさらに人類の知見の奥深くへと進んでいきます。

この本では400冊選ばれているため、ジャンルごとに読むべき古典が見つかります。また紹介されている本の多くにセレクトした著者の概説が書かれているため、実際に読む際にある程度その本の言いたいことが分かった状態で読めるのが良い点だと思います。

この本もまた対論集です。対論が面白い。

個人的には18世期のコーヒー・ハウス(日本でいう喫茶店、いまだと居酒屋の雰囲気の方が近い)は政治的空間(公共圏)だったとか、その怖さをわかっていたソ連のスターリンは長居して井戸端会議ができる場所自体をなくした(あっても政府サイドの盗聴&定期報告付き)という話(pp.130-136)や

宮崎駿の『風の谷のナウシカ』は映画はもちろん漫画の完全版(全7巻)を読むべきとの話(pp.52-54)が好きです。

ちなみにこの話から影響を受けて漫画の完全版は買いました。本当に映画と漫画では話が違うんです。映画の内容は漫画の最初の2巻までの話なんです。むしろ映画の制作陣はよく2巻までの内容でまとめたなぁと思います。気になる方は読んでみてください。

さて話を戻して最後の本を紹介します(わたしが勝手に逸れただけ)。


4.松岡正剛『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻』(求龍堂、2007)


さていままでの3冊よりも何倍も濃い本が最後にきました。なぜ濃いかというと…定価99750円全7巻の本が本体1600円(+税)の一冊の本に、1144冊分の内容が419ページに収まっているという…とんでもない。化物の本や。

もう少し詳しく説明すると著者の松岡正剛さんはウェブ発ブックアーカイブ『松岡正剛千夜千冊』というサイトを運営しています。

https://1000ya.isis.ne.jp/top/


ひとりの著者から紹介する本は1冊。本の内容以上に関連本や関連情報を盛り込む(ということは1冊分じゃない…数十冊分の記事ができそうな内容をひとつの記事にしている恐ろしさ)といった決まりごとを踏まえつつ2019年12月30日現在1728夜(つまり1728冊?!)。そのアーカイブ(出版当時までの記事)が全面加筆、構成の再構築を経て全7巻の本になってしまったと…。各巻約1400ページ。索引一冊あたり平均70ページ。


”おもしろいエピソードがあって、第7巻は〈男と女の資本主義〉というもので、全巻のなかでいちばん分厚いのですが、これは東京中の製本屋の、どの製本機械にもはまらなかったんです。岩波の『広辞苑』より厚くなった。おそらく日本一の本の厚みでしょう。これは岩波書店の山口昭男社長もびっくりしていました。そこで用紙のキロ数を落として(紙をちょっと薄くして)、牧製本というトップ技術の製本屋さんに頼んだのです。”(pp.14-15)

広辞苑よりも厚くなる、それがひとりの読み手の読書の記録だけで…。果たして人生でそこまで読めるものなのかとただただ圧倒されますが、同時にそれが本という媒体で共有されていることに喜びを感じますね。だって約10万円で選ばれた1144冊に加えて著者の知と思考が得られる、まとめられた本を読むことでショートカットすることができるんですよ?!わたしたちはショートカットと必要に応じて元の本を読みながらさらにその先の知見へと思考へと進める…なら進まなきゃ!絶対おもしろい!

あぁ…またもや脱線しました。広辞苑なみの全7巻の方は今後必ず買って読破するとして「松岡さん。その全7巻って要するに?」というのがこの本なんです。たとえ知見の一端であったとしてもわたしにはありあまるくらいのヒントの塊です。例えば「ノスタルジアを喚起させる本」という節では

“この章立てのなかに、ミルチャ・エリアーデの『聖なる空間と時間』、江戸時代の越後の昔日を綴った鈴木牧之の『北越雪譜』、和辻哲郎が若き日に試みた奈良探訪記『古寺巡礼』、堀正三が描いた『朝倉文夫の青春』、本郷の菊富士ホテルを舞台にした上村一夫のマンガ『菊坂ホテル』、失意ばかりあった竹久夢二の渡米の日々を追った袖井林次郎の『夢二のアメリカ』といった本を入れました。これらはもはや取り戻すことのできない日々を描いているものばかりなんだけれど、けれども、これらの本はそれらを取り戻しているんだね。エリアーデが「喪失と再生をおこす場所」と言ったその場所をありありと示しているんです。つまりノスタルジアの正体はこのように映画にしたり、書物にしたりすることでしか、示しえないんです。胸中ではわからない。(pp.59-60)“

この本で触れられていなければおそらくわたしが一生手に取ることがなかったであろう本たち。それらを知ることができた、手に取るきっかけを与えてくれる本の存在はわたしを助けてくれるのです。

ということで順番にアマゾンで買おっと。


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以上、目次をつくったことでかろうじて体裁を保っている(であろう)noteを最後まで読んでいただきありがとうございます。本を選ぶための本を読む、オススメです。

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