もう楽にして、、、4
「もう楽にして、、、」
美穂ちゃんが静かに眠りに入る。
長く、短い時間。
薬が切れ、美穂ちゃんがみんなの名前を叫びながら、首を激しく横に振った。
泣き叫ぶ声。
私の記憶も、途切れ途切れになる。
病院から向かった葬儀場では、すでに控え室に母と義兄と甥っ子が座っていた。
父の時と同じ部屋。何故だか懐かしく思えた。
何もかもが慌しく過ぎていった。
出棺。
美穂ちゃんの好きだったスターダストレビューが流れた。
「木蘭の涙」
こんなにベタな演出は嫌いだ。なのに涙がこみ上げてきて、私は「やだ、、、」と会場に響く声で叫んでいた。
涙が止まらなくて止まらなくて、まっすぐに立てなくて、恥ずかしいと冷静に感じる自分と、悲しさが溢れ出してくる自分。
美穂ちゃんの顔は、美しかった。
2020年5月19日
美穂ちゃん、お疲れ様。
私は、三人姉妹の末っ子で、美穂ちゃんは長女です。
姉2人は年子ですが、私だけ一回り離れています。そのためでしょうか。子供の頃はあまり接点が無く、正直に言うと、姉たちは私にとって怖い存在でした。
大人になって、少しずつ会話をするようになり、でも何となく他人行儀。
そんな私が、美穂ちゃんと色々話せるようになったのは、美穂ちゃんの病気がきっかけでした。
この事実を、どう受け止めたらいいか分かりませんが。
でも、美穂ちゃんが最後に私に残してくれた言葉は「ギブが妹で良かった。」
私は何もしてあげられませんでした。それなのに、私が妹で良かったと、言ってくれました。
それは、どう言うことなのでしょう。
分かりません。
ただ、私は、私にとってこの言葉は、とても支えになっています。
「もう楽にして、、、」
一人で全ての苦しさを抱えた私の姉。
とても自慢の姉でした。
その姉が私に残した言葉。
姉が生きて、そして最後まで姉らしく、激しくて美しかったこと。
私の姉が、最後の最後まで家族を大事にしていたこと。
誰かに聞いて欲しくて書きました。
誰かに伝えたくて。
私の姉が、この世にいたことを。