【 記事 】2022_06_21「私がお世話になっているクルマ屋さんの話」
私のクルマは現在6年ちょいで23.5万キロ走行している過走行車です。
長く、そして調子良く乗るためにはメンテナンスは必須です。たまたま縁があって今のクルマ屋さんと出会いました。本当に良くしてくれます。お世話になっています。オイル交換を始め、消耗品の交換や12ヶ月点検など、ほとんどすべてお任せしている感じです。新車も販売しています。スズキのサブディーラーもやっているお店で、まぁよくある街のクルマ屋さんです。
私はあまり浮気をしない人間です。もちろん自分に合わない店だったら変えますが、自分に合った信頼できるお店を見つけた場合、ほとんどそのお店でやってもらうようにしています。人によっては安いお店やガソリンスタンドなど、金額で決める人やこだわりがない人も勿論います。
私はなるべく同じ店に通い、顔を覚えてもらい、お店の人と客としての自分の信頼関係を深めたい人間です。少しくらい料金が高くても、そのお店でやってもらいます。代金は値切らず請求された金額をちゃんと払うようにします。そして何度も何度も通って会話をして信頼関係を深めます。それが客としての私のやり方です。
今のクルマ屋さんに初めて入ったのは、たまたま前にお世話になっていたクルマ屋さんが急に入院してしまい、他のクルマ屋さんを探さなければいけなくなったからでした。グーグルマップの口コミを見たりして、前から良さそうなクルマ屋さんに入ってみました。知らないクルマ屋さんに新規で入るのは、私としてはなかなか敷居が高くて入りづらいのですが、お店に入ってみると意外と対応がフレンドリーなお店で安心しました。
エンジンオイルの交換をお願いしたのですが、ディーラーや一般のクルマ屋さんが請求するであろう金額よりもえらく安いのです。「えっ??」と思って聞いてみると、「うちはオイル交換は定価のほぼ半額で提供しているんです。その代わり、通常約5千キロで交換のところを、うちは3千キロくらいで交換することをオススメしているんですよ」と言います。
「えっ、半額??オイル交換、半額でやっているんですか?」
「銘柄によりますが、ワコーズのオイル以外はほぼ半額に近いですかね」
「お客としてはメチャクチャ有り難いですけど、でも…そんなことやってたら儲からないでしょ?」
「まぁ、そうですねぇ(苦笑)」
やり取りをしていたのは30代半ばくらいの背の高いお兄さんで、なかなかのイケメンの整備士さんでした。ちょっと会話をして、作業があってその場を離れましたが、お店に事務の女性がいたので、待っている間その女の人とずっと話していました。
「あの、、、余計なお世話かもしれないですけど、オイル交換半額って、何で儲からないことをあえてやっているんですか?」
事務をしている50代くらいの女性はとても和やかな可愛らしい人で、私の話にもよく付き合ってくれてこう言います。
「あぁ、それは、確かに儲からないっていうお店の事情はあるんですけどね。でも『エンジンオイル』という商品をなるべく早く回転させたいという意味もあるんですよ。オイルって長期在庫で持っているとやっぱり劣化して行くので、安く提供してお客さんが3千キロくらいでオイル交換をしてくれれば、オイルの回転率が早くなって、また新しいオイルを仕入れてお客さんにいつもフレッシュなオイルを提供することができるんですよね。うちは前からそういうやり方でずっとやっているんですよ~。またうちに来ていただけると嬉しいですしね!」
その女性はそうやってニコニコして言いました。
「あ、あとね、うちはオイル交換のスタンプカードもやってるんですよ。オイル交換でスタンプ1ヶ、12ヶ月点検でスタンプ3ヶ、車検でスタンプ5ヶ、スタンプ10ヶ貯まるとオイル交換一回分タダにしてるんですよ」
そう言って、私にスタンプカードをくれました。なんか発想が面白いw
「オイル交換のスタンプカード!そんなことやってる店聞いたことない!余計に儲からないじゃないですか!?w」
「いえいえ、いいんですよ~w」
聞けば納得なのですが、なんか…、なんて言えばいいのか…、私はその時感動してしまい、言葉が出ませんでした。だって本来の代金の半額をあえて放棄するわけです。私は自営業とか個人事業をやったことがない人間なので、そういった経営とか利益とかの話はまったく解りません。しかし、なぜかその時、日本の古き良き商売の理念とか、商売の基本とか、商売の伝統的なものを何となく感じました。うまく言えませんが。。。
クルマ屋さんにしてみたらオイル交換なんて朝飯前の作業でしょうから、すぐにやってくれてあっという間に終わり、私は言われた代金を支払いました。しかし、なぜか申し訳ない気持ちになりました。ディーラーで交換していた時は4千円くらい払っていたのに、2千円ちょっとで済んだのです。なんか申し訳ないのと感謝しかありませんでした。昔ながらの商売ってこういうのを言うんだろうなとふと思いました。何度も何度もお礼を言って帰りました。そのお店の人の温かみがなぜか嬉しくて涙が出そうでした。
日本の昔の商売用語で「おまけ」という言葉があります。今でもあります。
お菓子を買うとオマケが付いているとか、昔の八百屋さんや魚屋さんに行くとオマケでリンゴを1個もらったり、オマケで代金をちょっと安くしてもらったりというのが日常的にありました。ほら、サザエさんでもそういうやり取りありましたよね?w
「おまけ」の語源は何か知っていますか?
解りやすく書くと「お負け」です。簡単で解りやすいですよねw
売る側はあえて負ける(損する)わけです。そしてお客さんを勝たせる(得をさせる)わけです。お客さんは得したな!儲かったな!って当然なります。気分を良くしたお客さんはまたそのお店に行くわけです。そうやってまたお店に足を運んでもらうことによってお店は商売が成り立つ、儲かるわけですね。知ってましたか?w そういう話を知ると日本の大衆的な文化とか伝統とかって面白いなと思います。
このクルマ屋さんでオイル交換をしてもらった時、この話をふと思い出しました。なんか、商売人の鏡のように思えました。このクルマ屋さんはあえて損を取って、私に得をさせてくれたのです。だから私はそのクルマ屋さんに何でもお願いしようと決めました。私が何度も足を運んで、いろんなことをお願いすれば、結果そのクルマ屋さんの儲けにも繋がり、そのお店で働いている整備士さん達や事務の女性の方のお給料にも繋がり、お店が繁盛することに貢献できると思いました。
私はクルマでよく走るので、ほとんど毎月のようにオイル交換に行きます。
今では顔なじみで、事務の方や整備士の方と話すのが楽しいです。クルマ屋さんに通うようになって1年弱になります。信頼関係も築けてお世話になりっぱなしです。以前、複数の作業をお願いした時、後で明細を見てみると、工賃をサービスしてくれた作業がありました。お店の人はそれをあえて言いません。工賃サービスは口頭では言わず、明細にさり気なく作業料金0円となっているのです。カッコイイですよね!本当に有り難いことです。
私はこのお店をとても気に入りました。クルマを買い換える時が来たら、ここで新車なり中古車なり注文しようと思います。それでまた喜んでいただけたら、お客としてもこんなに嬉しいことはありません。お客だから立場が上というのは通用しません。代金を払う側でもお客はお店にお願いする立場ですから、対等な立場でなければいけません。お願いして、整備してもらって、こうして安心してクルマに乗ることができるわけです。
自分で整備しろと言われても、お金を貰ったとしても、私にはまったく整備なんてできませんからね。クルマ屋さんのお陰で私の愛車は絶好調です。まだまだ走れます。30万キロ行けます。本当にプロフェッショナルだなぁと思います。感謝感謝です。