【大人の発達障害】仕事のミスの意外な原因は「暗唱」にあった。
電話をとって取次をする際に相手の名前と会社名を覚えたはずなのに受話器を置いたら忘れているなど、頭の中で覚えていたはずなのにいざそれを伝えようとすると忘れている経験はないでしょうか。
電話対応などではメモを取れば済む話ですが、その場所にメモがなかったりメモが取れる状況でない場合もあります。
このように覚えていたはずのものを忘れてしまうのはなぜでしょうか。実はこのような物忘れの原因を認知心理学が明らかにしています。その原因には「暗唱」があると考えられています。
このnoteではなぜ暗唱をするとミスをするのか。そしてその対策はどうしたら良いかをお伝えしたいと思います。
暗唱の問題点は「言葉」
暗唱がミスの原因になると考えている理由にワーキングメモリが関係があります。ワーキングメモリとは一時的に情報を保持して記憶する能力のことです。
たとえば、あなたが仕事で見積書を作る場合を考えてみましょう。あなたはまず仕事に取り掛かる前に一件一件の仕様を確認するでしょう。
しかし、その見積書の作成が終わればその仕様の全てをずっと覚えていることはなく、また別の見積書を作成するときには別の仕様を記憶して仕事に取り掛かるでしょう。
このような記憶の働きをワーキングメモリと言います。ヨーク大学のアラン・バッドリーはワーキングメモリが3つのシステムを組み合わせだとしてバッドリーモデルを提唱しました。それは次の3つからなります。
・音韻ループ
→頭の中で言葉を反復させてシミュレーションをする
・エピソードバッファー
→長期記憶へ情報を検索する役割をする
・視空間的スケッチパッド
→視覚イメージを使って情報を保持する
今回取り上げている暗唱は音韻ループという記憶方法によって一時的に記憶を保持する方法なのです。私のように暗唱をするとミスをしてしまう人はこの音韻ループに問題があると考えられるわけです。
以前、私はnoteで内言(※心の中の言葉)について取り上げました。発達障害があると内言の機能に何らかの問題があるということをお話ししましたが、音韻ループはこの内言を使った記憶法なのです。
私のように音韻ループに問題がある場合にはその方法を別の方法に切り替えるなどの工夫が必要になるわけです。では、どのような工夫をしたら良いのでしょうか。その簡単なポイントを2点お伝えしたいと思います。
音韻ループから視空間スケッチパッドへ
私は仕事では視覚イメージを使って物事を覚えるようにしています。例えば、見積書を作成する場合には細かい仕様を視覚イメージと対応させるようにしています。そして入力する際も視覚イメージを連想しながら入力をするようにしています。
そうすることで、言葉だけでは不十分な記憶を視覚イメージで補完して正しく入力することができるようになります。
また、視覚イメージを考える際にはその商品全体を連想しなくてはいけません。そのときに必然的に細かいところにも目を向けなければいけませんので見落としのミスも減っていきます。
暗唱ではなく復唱する
暗唱は心の中の言葉を使った記憶方法です。暗唱したことをもとに実際に行動したり言葉にするときにズレが生じるのが内言による言行不一致の状態です。
しかし私の経験から言えば、最初から声に出して覚えれば問題ありません。なので私は人から仕事を頼まれた時に復唱して理解があっているか確認を取ります。
暗唱ではダメでなぜ復唱では上手くいくのでしょうか。また復唱は暗唱とどのように違うのでしょうか。私の考えだとこれは最初に内言ではなく外言(※声に出して言う言葉)で処理しているという点です。
もっとわかりやすく言えば次のような違いがあるからです。
・相手の言葉→内言→行動
・相手の言葉→外言(復唱&確認)→フィードバック→行動
また、復唱をする際には自分の行動がイメージできていないと相手に伝えることができませんし、相手も私が理解しているか確認が取れます。そういった理由から復唱という方法を私は実践しています。
まとめ
今回の記事の内容の要点は次の通りになります。
・暗唱してもミスするのは音韻ループが原因
・言葉ではなくて視覚イメージで覚える
・暗唱ではなく復唱する
視覚イメージは複雑なものを覚えるのには向かないとされています。しかし実際のところメモと併用するなど複数の方法を用いる場合が多いので、私自身そのような難しさを感じたことは今のところありません。
視覚イメージによる記憶法をぜひ一度試してみてください。この記事が自分に合う仕事術を見つける一助となったら嬉しいです。
参考文献:黄淵煕,立花良之「発達障害のある児童のワーキングメモリは改善できるのか--広汎性発達障害のある児童を対象とした試み」『東北福祉大学研究紀要』第34巻 2010年
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