![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151723918/rectangle_large_type_2_0543d49f7e8fb0ee2aed78fb63459870.png?width=1200)
【CHC】”Intelligent Spending...?”(カブス感想文)
お疲れ様です、お久しぶりです、イサシキです。
さてさて、「大物選手との契約はリスキーで正直気が引ける」だの「コストパフォーマンス」がどうだの「レイズのようなチーム編成に憧れる」などとおよそビックマーケットを持つ球団の編成総責任者の発言とは思えないJed Hoyer氏が作り上げたシカゴ・カブスが贅沢税(以降CBT)の閾値を跨ごうとしているお話をご存じでしょうか?
リグレーフィールドの球場周辺の再開発に莫大な費用をかけ、その後に新型コロナウイルスによる無観客試合に伴う大幅な収益減少も相まって、3年前に16年WS制覇に導いたコア選手を一気に放出した際にも頑なにRebuildを宣言せずにRetool(刷新)と銘打ち、当時評価の高かったNick Madrigalや現在センターのスタメンを勝ち取りつつあるPete Crow-Armstrongらを獲得するムーブメントを見せたかと思えば、そのオフにはMarcus Stromanを3年$71M、鈴木誠也を5年$85Mで獲得し、早速新たなチームを構築し始めたHoyer氏。この頃は贅沢税とは無縁でしたが、その翌年から状況は一変します。
23年にはブレーブスからFAとなっていたDansby Swansonを7年$177M、スターターのJameson Taillonを4年$68M、Cody Bellingerをバウンスバック狙いで1年$17.5Mで獲得するなど突如として資金を大量に投入しただけではなく、開幕前後には新たなチームのコアになりつつあったNico HoernerとIan Happにそれぞれ3年$35M、3年$61Mでエクステンションするなど、半ば2026年までに勝負をかけるかのようなムーブメントを見せていました。
そして83勝79敗とシーズン161試合目までプレーオフ争いを展開したチームは、寸でのところで逃がしたPO進出を我物にするため、昨オフには大谷翔平との契約に最後まで尽力し、さらにはトレードの噂として挙がっていたJuan SotoやPete Alonsoらの移籍先候補として一早く名前が挙がるなど、その挙動が注目されました。
結果的に上記の選手は誰も獲得できませんでしたが、同地区からCraig Counsellを5年$40MというMLB監督市場最高待遇で引き抜き、4年$53Mで今永昇太を獲得してStromanの穴を埋め、QOを拒否してFAとなっていたBellingerとも3年$80Mで再契約を果たして昨シーズンよりもチーム力を落とすことなく今シーズンに臨んだわけですが・・・現状結果は無残なものとなっています。
前置きはここまでにして、現状のカブスのCBTと贅沢税の閾値、そしてHoyer氏の進めてきた選手補強は果たして本当に”Intelligent Spending”であったのかを考察してみたいと思います。
上記リンクはBaseball Prospectusより
今季ここまでのカブスのCBT値は合計でおよそ$234Mとなっており、24年のCBT閾値である$237Mまであと$3M程度まで迫る勢いとなっています。
スプラッシュコントラクトになったSwannsonや$200M超えの契約を結ぶとの噂も挙がったBellingerのCBTが高額になっており、この2選手でCBTの約23%を占めています。その他コア選手である鈴木やHoerner、Happ、Taillon、Hendricks、今永の6選手で約40%となるので、合計8選手のCBTがチーム全体のCBTを63%占めているということになります。
残りの37%でリリーバーや年俸調停権取得選手などを雇っている…と思うのが普通ですが、実はカブスの場合、現在チームにいない選手への支払いをしているCBT選手が割と多いのはご存じでしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1724414602480-VT3DGyPbgu.png?width=1200)
つい先日リリースされたHector Nerisをはじめ、実に14名の選手が、約$28MのCBTスペースを喰ってしまっています。全体から見れば約10%のCBTがここに押し込まれているので、ハッキリ言ってもったいなさすぎます。
中には事情のある選手もいます。先ほど名前を挙げたNerisは今シーズン60試合の登板または45試合での投手完了をすると、来季に$9Mのプレイヤーオプションが発生する契約でした。正直不安定な成績でこのまま登板を重ね、決してリリーバーとしては安くない$9Mの契約を発生させてオプトインしてもらうほどの余裕はありませんし、きっとTDLでも売れなかったというのが本音でしょう。Mark Leiter Jr.やChristopher Morelといったトレードをされた選手もいます。
ですが、23年にバックアップ、プラトーン要員で獲得したTrey ManciniやTacker Barnhuartらの契約は完全に不発となって終わっていますし、CBT換算はされないものの、8年$154Mの契約が昨年終わったJason Heywardには繰り延べしていた契約金$20Mを昨年から4年分割で$5Mずつ支払っているなど、すべてがHoyer氏の責任ではありませんがどうみても結果論では済ませていけない金額のRetainが起きていることは事実です。
ここにプレイヤーベネフィット(選手の福利厚生金)等も加算されていくと、最終的にはCBTを圧迫することになりますし、何よりも勝負期に入るつもりだったカブスが、加入すれば間違いなくチームの戦力アップにつながるのに大型投資を拒んでこのような契約に手をかけてしまうが残念で仕方ありません。
これのどこがビックマーケットチームなのでしょうか?
そして何がビックマーケットチームなのでしょうか?
良いんです、アプローチをかけて失敗した、獲得できなかった、これは仕方ありません。そのような選手は獲得することですら難しいでしょうし。
それでもリスクばかりを考えて、今後数年ほぼ確実にMLBを代表する選手ですら敬遠をする。人それぞれ考え方には違いがありますが、私はこのチームのフロントが本気で勝つために動いているようには思えません。これではただ中堅選手に金払いの良い中途半端なブリッジチームという評価を下されてもおかしくないでしょう。
「プロスペクトは確実に充実してるんだから良いじゃん」なんて声も聞きますが、「所詮プロスペクトはプロスペクト」です。確かに適応を見せ始めたPCAや、既にファーストのレギュラーを勝ち取ったMichael Buschのような存在はいますが、すべてがこのようにMLBで活躍するわけではありませんし、カブスのプロスペクトは潤沢ではあるものの、MLBで爆発的なインパクトを残してくれる選手は少ないといわれています。
前任のTheo Epstin氏は、Kris Bryantらを擁して16年にWS制覇を達成した際、特に不安な投手陣の補強をするために、惜しげもなくプロスペクトもお金もつぎ込んでファームシステムもCBTも数年にわたって焼け野原にしました。それでも我々に見せてくれたのは、シカゴ・カブスというチームが毎年ポストシーズンに進んでWS制覇の夢を見せてくれるという「希望」であり、「光」だったように思います。
そしてそれは、Theoが本気で当時のカブスを”Dynasty”にしようとした
裏返しではないでしょうか?
もちろんHoyer氏が短期間でファームを再建させた手腕や随所で見せるトレード巧者ぶりを否定するつもりはありません。むしろ昨年オフまではそろそろ彼の功績を称えなければならないほどだと本気で考えていたほどです。まあファンなんて見えない部分のほうが多すぎるので9割型は適当ではない意見の方が多いんでしょうけど。
ただそのころからのファンとしては、現状のCBTを見ているとこのような感想まで抱いてしまうのが悲しいです。