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”BASEBALL TRADE VALUES”で見つけた珍モックトレード集
皆さんお疲れ様です、イサシキです。
MLBではポストシーズンの真っ最中。WS制覇を目指してポストシーズン進出チームが熱戦を繰り広げています。
そんな中、カブスファンである私は完全なる手持無沙汰状態。チームはポストシーズン進出を逃し、今夏のTDLで放出した選手たちは(若干1名を除いて)軒並みポストシーズンでも活躍中という悲しいオフシーズンを過ごしています。
そんな中、私が以前からどうしても記事にしたかったとあるサイトについて今回はお話していこうと思います。
”BASEBALL TRADE VALUES”ってどんなサイト?
今年の6月にARAさんのnoteでも紹介されていますが、MLBのモックトレードサイトに”BASEBALL TRADE VALUES”というものがあります。
MLB、MiLBに所属する選手が、現在保有しているトレードバリュー(選手の価値)を知ることができるサイトで、それを基に自分自身の考えるトレードが釣り合うのかを調べることができます。また、無料登録をすれば自身の考えたトレードを他ユーザーに評価してもらえたり、コメントをもらうこともできます。
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6月に筆者が投稿したモックトレード。当時のチーム状況や成績、補強ポイントを加味して作りました。カブスファンからは多くサムズアップをいただきましたが、デトロイトのファンからはお怒りを買いました(笑)。
例えばこんな感じで、トレードバリューに見合った選手の選定をしてモックトレードを投稿すると、他ユーザーからサムズアップ、サムズダウンで評価をもらうことができます。興味があればぜひ試してみてくださいね!
ここからが本題です
今回のミソとなるのは「選手のトレードバリュー」です。これは選手の活躍やFAまでの期限などによって日に日に選手の持つトレードバリューが変わります。そのため、このサイトでは価値の釣り合ったトレードでも、現実的にはどう考えても成立しないだろというトレードが結構見られます。
そのため、僭越ながら筆者である私の独断と偏見で選んだ「とんでもトレード」をご紹介していきます。
※なおこの記事では、カブスと他チームのトレードのみをピックアップしています。そして衝撃度の高いトレードがあるので、他球団のファンの方は注意してご覧ください。
珍モックトレード1件目:マドリガルさんを呼び戻す
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今夏のTDLでカブスはキンブレルの見返りとしてホワイトソックスからニック・マドリガルを獲得しましたが、そのマドリガルを呼び戻そうというトレード案です。
このトレードの狙いは、ベテラン投手ダラス・カイクルのサラリーダンプを実現させて今オフFAになる先発投手の獲得資金(もしくはカルロス・ロドンの引き留め)を作ることと、今オフでFAになるシザー・ヘルナンデスやUTのルーリー・ガルシアに代わる2Bを、若くて才能溢れるマドリガルを呼び戻して埋めようという感じでしょうか。
ただ本当にこのトレードが実現したら、様々な点で突っ込みが入るのは間違いないでしょう。
まずはカイクルのサラリーダンプにカブスが協力するわけがないということです。カイクルは今季年俸が1800万ドルで、残りの保有期間(2年)で最大3600万ドル(Vesting Option含む)を支払う可能性があります。それに見合う投手であれば何も問題はありませんが、復活した昨シーズンとは打って変わって、今季は9勝を挙げたもののERAは自己ワーストとなる5.28を記録。被本塁打、四死球、失点・自責点も自己ワーストで、被バレル(%)も昨年の4.0→8.9と大幅悪化していることと来季で34歳となることから、ここからのバウンスバックは厳しいのではないかと予測されます。現在再建中のカブスがいくら先発ローテーションをグレードアップさせようとしても、そこまでしてカイクルを引き取るかと言われれば疑問は残りますし、何よりヘイワード、ヘンドリックス、ボートだけで約5400万ドルのペイロールを抱え込むカブスが、そのままの状態でカイクルを引き取るとは考えにくいと思います。
次に、ホワイトソックスが大量のプロスペクトをカブスへ移籍させてしまうというところです。既にカブスは今夏のTDLでキンブレル、テペラの見返りに3人のプロスペクト(元も含む)を獲得しています。今回のモックトレードでマドリガルは戻りますが、その分またプロスペクトを放出してしまうこととなります。
マイケル・コーペックは25歳の元プロスペクト投手(2020年MLB全体プロスペクトランク18位など)で、今シーズン中継ぎとして44試合に登板しERA3.50ながら69.1IPで103奪三振をマークするなど、非常に高い奪三振能力を有する投手で、近い将来スターターになるとも囁かれる投手です。また、ジャレット・ケリーは昨年のドラフト2位(全体47位)で指名された高卒右腕で、2021年チーム内プロスペクトランク5位の選手。そしてカールソン・モンゴメリーに至っては今年のドラフトで1位指名(全体22位)をされたチーム内プロスペクトランク1位の高卒SSです。いくらマドリガルを取り戻すためとはいえ、これはさすがに出しすぎ感が否めません。そもそもマドリガルがカブスにトレードされた背景に、今季途中で負った右ハムストリングという厄介な部位のケガであることを憂慮したホワイトソックスがマドリガルを見返りとして放出した噂もあるくらいなので、もし本当にマドリガルを呼び戻すことがあればそのムーブに疑問を抱く人は少なくないでしょう。
珍モックトレード2件目:ナショナルズファン暴動不可避
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カブスはパトリック・コービンを、ナショナルズはジェイソン・ヘイワードをそれぞれ引き取り、それに加えて若手有望株のカーター・キーブームとビクター・ロブレスの抱き合わせと、カブスのエースであるカイル・ヘンドリックスと内野のUTデビット・ボートをそれぞれ獲得するというトレードです。
最初このモックトレードを見たときは衝撃でした。何よりもナショナルズファンが絶対に許さないだろうなあと。なぜかといえば、これがナショナルズのペイロールを大幅に縮小させてしまうトレードになるからです。
まず2019年の反動が大きく来てしまったのか、近年大きく成績を落としてしている先発左腕のパトリック・コービンは、今季年俸が2400万ドルで、これはチーム全体のペイロールの約17%を占めています。コービンは2018年にナショナルズと6年総額1億4000万ドルで契約しており、残り3年の保有期間で7800万ドルの支払いを残しています。今季も9勝16敗、ERA5.82と自己ワーストの成績に加え、武器であるスライダーの回転数も2398(2019シーズン)→2216(2021シーズン)と大幅に減少しているため、今はイニングをある程度稼げる技巧派左腕といって差し支えないですし、その投手に2400万ドルは、誰がどう見ても出しすぎと思うでしょう。
一方カブスは、現在チームで複数年契約を結んでいる3人全員をトレードに出すこととなります。ヘイワードは今季2100万ドル+αの年俸で、残り保有期間が2年(計4400万ドル)。ヘンドリックスは今季1400万ドルの年俸で、残り保有期間が最長3年(計2800万ドル+Vesting1600万ドル)。ボートは今季100万ドル+αの年俸で、残り保有期間が最長5年(計1200万ドル+クラブオプション2年総額1460万ドル)なので、先程も少し触れたように、この3人の2022シーズン分のペイロール約5400万ドルが空くことになります。
加えてMLBデビューからは評価を落としているものの、2019年チーム内プロスペクトランク1位の内野手カーター・キーブームと2017年MLB全体トッププロスペクトランク3位の外野手ビクター・ロブレスをもらえるため、将来性、ペイロール面などを考えたときに、ヘンドリックスが復調でもしない限りはどう考えてもカブスにしか大きなメリットが見込めないトレードになります。
そもそも両球団ともに現在は再建期であって、お互いがお互いの首を絞めるようなトレードをすることはないと思います。加えてナショナルズはスティーブン・ストラスバーグという超大型契約を保有している選手もいるので、いくらコービンを売却したくてもこんなトレードを自ら考案することはないでしょう。なのでこのトレードを考えたユーザーは100%カブスファンの方ですね、断言できます()。
珍モックトレード3件目:レイズらしさ全開のトレード
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上手くチーム作りを進めるために、限られた予算の中で主力選手であっても容赦なくトレードに出したりするレイズ。そのためにはエースのタイラー・グラスノウを放出することも躊躇しないようです。
レイズが放出するのはグラスノウに加え、プロスペクトSSのタイラー・ウォールズ(2020年チーム内プロスペクトランク18位)と内野の便利屋さんであるジョーイ・ウェンドルで、カブスはそれに対して2021年MLB全体プロスペクトランク14位のブレネン・デービスとチーム内プロスペクトランク3位のクリスチャン・ヘルナンデスという2人を見返りとして放出するトレードといったところでしょうか。
グラスノウは今シーズン途中のTJ手術によって来シーズンがほぼ絶望視されている投手ですが、その実力は本物。最速100マイルを超えるフォーシームと2700回転を超えるスライダー、低めへ鋭く落ちるカーブを武器に、離脱前まで14試合で先発登板。被打率は高いですが、88IPで5勝2敗、ERA2.66、奪三振は123とまさにエースらしい投球を披露していました。ウォールズは確実性のある打撃と堅実な守備能力が売りの元プロスペクト。今季5月に正遊撃手のウィリー・アダメスがブルワーズへとトレードされたことがきっかけでMLB昇格し、その試合で見事2安打を放つなど活躍。その後はMLBNo.1プロスペクトであるワンダー・フランコのMLB昇格により、2度マイナーとメジャーを行き来するシーズンを送り、通算54試合で打率.211、出塁率.314、長打率.296、DRS10を記録しました。ウェンドルは攻撃・守備の両面をそつなくこなすいぶし銀的プレイヤーで、今季はあらゆる部門でキャリアハイの成績を残しました。
この3人の今季年俸は合計で682万ドル。来年はグラスノウが調停3年目、ウェンドルが調停2年目となるためそれなりに年俸は吊り上がる予想(ウォールズはまだTC下)で、この2人だけで軽く1000万ドルは超えるかなと思います。それでもこのスペックを誇るのであれば、カブスにとっても悪くないトレードのように見えますが、無論デメリットも存在します。
まずはグラスノウについてです。現在年俸調停3年目ということで、普段であれば来シーズンオフにFAとなります。ですがグラスノウはスーパー2の保持者となるため、年俸調停があと2年続きます。その間に年俸はそれなりに高騰すると思いますし、先に述べたTJ手術の影響で来シーズンを棒にふるう可能性が高いことも相まって、実質の保有期間が1年となります。もちろんその期間中に複数年契約を結ぶことも可能ではありますが、如何せんどんな状態でグラスノウが戻ってくるかは未知数のため、うかつに大型契約を結ぶのは大きなリスクを伴うことになります。
ウェンドルに関してネックになるのは年齢です。来年32歳となるウェンドルも遅咲きの選手だったため、未だに年俸調停は2年目。グラスノウほど契約が大きなものに膨れ上がる可能性は低いですが、今季の成績をあと数年維持できるかと言われれば何とも言えない部分があります。まあウェンドルの場合は「スーパーサブ」とも呼べるポジションが最も似合う選手なので、レイズの方が逆にトレードを仕掛けてプロスペクトをもらおうと考えていそうでもありますが...。
これらの面を考えたときに、果たして本当に2人の有望なプロスペクトを出せるのかという部分が付き纏います。
ブレネン・デービスは将来的に「30‐30」を狙える21歳外野手のトッププロスペクト。今季は主にAAとAAAでプレーし、通算99試合に出場。打率.260、出塁率.375、長打率.494に加え、本塁打19、打点53、OPS.869と課題は残しながらも大気の片鱗を見せつける活躍を見せてくれました。また、7月のフューチャーズゲームでは1試合2本塁打を放ち、MVPを獲得。その名が大きく知れ渡ることになった1年となりました。
クリスチャン・ヘルナンデスは現在ルーキーリーグに所属するプロスペクトで、チーム内のランクでは3位。類稀なる才能を持ち、打撃、守備、走塁全てにおいてハイスペックな潜在能力を秘めている若干17歳の選手です。今季はDSLに47試合出場し、打率.295、出塁率.398、長打率.424と素晴らしい成績を残しております。
個人的な見解ですが、デービスはブルワーズで活躍し、今季限りでの引退を表明したライアン・ブラウン、ヘルナンデスはPipelineでも評されている通り、若き日のアレックス・ロドリゲスやマニー・マチャドを彷彿とさせる選手だと思っています。そのため、彼らは本当に出してはいけないプロスペクトで、何年かかっても成長させる価値のある選手たちであると言っても過言ではないでしょう。
まとめ
ということで、今回は”BASEBALL TRADE VALUES”に掲載されていた珍モックトレードを見ていきました。
あくまでも仮想のお話なので、面白いトレードを見かけたら鼻で笑うくらいに留めておきましょう。MLBではそんなトレードも過去には度々行われてきましたのでね。
ただ現在のトレードバリューに合わせてモックトレードを作成できるのは非常に楽しいと思います。新しいCBAさえ決まってしまえば移籍市場は動き出しますので、ぜひオフシーズンのお供にいかがですか?
今回の記事はここまでになります。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。