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ツボでいきいきー東洋医学よもやま話

003_秘められたエネルギー回路

 ツボの歴史を考えるうえで、興味深い事例が1949年、千葉大学眼科学教室で見つかった。
視力障害で入院していた男性患者(51)に、鍼を打つと、しびれたような感覚が体内の経絡に沿って全身に伝播し、そのルートをなぞることができた。落雷を受けたことがあるという男性は「経絡敏感人」と名付けられたという。

 経絡はエネルギーの回路で、中国の紀元前の医書にも登場する。
手足の末端から、頭に至るまで体中に網の目のように分布、経絡上のツボを刺激すれば、影響は全身に及び、健康の維持や病気の治療ができる。
目に見えないので、観念的な産物と考える人が多かったが、この男性の伝播ルートは、古医書の記載とほとんど一致していた。

 教室は翌年、この男性の事例をもとに、「経絡の研究」(下写真)を出版した。冒頭には「春浅く、まだうすら寒いある日の夕刻、入院治療室の一角で図らずも経絡を如実に現す、その患者の鍼の響きを発見した。日ごろ頭に描いていた空想が、まのあたりに実現した感激で、私はただ興奮して夢心地であった」とつづられており、その驚きぶりが分かる。

 この著書は各方面に影響を与えた。本格的な調査が行われ、たくさんの「経絡敏感人」が見つかった。その結果、何か病気があると出現し、その“能力”は病気が治癒すると消えてしまうことがわかった。

 鍼灸の世界では、上顎の歯が痛い時には、足の指のツボに鍼をし、逆子には足の第5指の爪の生え際に灸をすれば良いとされる。なぜ効果があるのか。現代医学ではなかなか説明がつかないが、ヒトの体には、目には見えない秘められた情報伝達系が存在していることは間違いない。

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