マガジンのカバー画像

エッセイとイタリアからのおいしいもの

39
日々の何気ない事柄、ふと道で思いついたことを書き綴っている、そのエッセイとともに繰り出されるイタリア料理のレシピ。色々と考えていると結局何かおいしいものにたどり着きます。Prim…
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

一面葡萄畑の中で

 縁の下がいっぱいになっていたので整理していたら、最近久しく見ていなかったボトルのガラス容器が見つかった。中にはやや緑がかった黄色の液体が入っている。なんだっけ、これ。梅酒は別の容器に入ってるしな。梅酒が変色しちゃったのかしら。それともずいぶん前に作ったリモンチェッロ??  これは果たして飲めるものなのだろうか、夫とおそるおそる飲んでみる。夫はそんな忘れ去られているものは腐っているものに違いないと、かなり試飲に抵抗していたが、無理やり付き合わせる。最初はリモンチェッロだと思

Sicilian Ghost Story

 この前も子供を育てることについて少し書いたけれども、夫とはたまに子供をどこで育てようという話になる。私は鼻息を荒くして日本の学校に通わせたくないの一点張りで、たぶん私のことをちょっとイタリアかぶれだと思っている夫は、「けど、イタリアの学校も別によくないよ」となだめる。 >>過去の参考記事  イタリアの学校は、もちろん地域によって全く異なると思うのだけれども、日本の学校のように全体主義、不自然な平等主義ではないし、子供たちがわりと楽観的なような気がする。(日本のうちの近所

感情が見える人

 最近の自粛生活になって良かったことの一つとして、庭の植物に水を朝と夕1日2回あげられているということがある。出勤しなくていいから朝に余裕があるし、夕方日の暮れる前には家にいてご飯を作っているから、それらのタイミングにプランターや庭に水をやれることは植物たちにとってすごく良い。だからいつもは咲かない花が咲いたりしたのかも知れない。(3年前にもらったカーラーがいきなり咲いた話)  家庭菜園がうまくいっているのは、我が家の日当たりがいいせいでもあるけれど、けれどなんとなく、なん

暑いけどクーラーを使わなかった日の話

 子気味のいい音がする。窓の外からだ。ちゃっちゃっちゃっちゃっちゃ。今日は隣の空き家に庭師さんが来ている。立派な大きなお庭で、松とかも馬の毛並みみたいに艶のある幹だし、最近はツツジ、3月ごろは蝋梅が良かった。近所に住んでいるらしいこのお家の娘さんが、家主亡きこの家にたまに庭師をよこす。風は気持ちいいけど、少し身体にまとわりつくような風になってきた。けれどまだリズミカルにハサミは鳴る。チャッチャッチャッチャっチャ。とろーんとまどろみ。そうだこの音はいつも私をうとうとさせるのであ

食育がわからなくなってきた

 イタリアの人って、レストランに行って注文のセンスがやっぱり抜群にいいと思う。私なんかは食べたいもの、食べたい食材だけで選んでしまったりするけれど、AntipastoがこれならPrimoはこれ、PrimoがこれならSecondoはこれ、なんというかバランスがいいということもあるが、素材、野菜や畜産などの土地のことまで考えている、あと季節感とか、なんか自然がつながっているなあとハッとさせられることがある。挙げ句の果てにはこの料理食べた後なら、Dolceはこれだよねとまでいう。

打って変わってボーッとしたい時は

 三年前に母からもらったカーラーがいきなり咲いた。この2年咲いてなかったのに。突然の出来事でいつもなら喜んだかもしれないが、私の心情が表れてしまっているのか、気が利かなくてボーッと突っ立てる人みたいにカーラーの写真がなってしまった。  私は化粧をしないと眠い顔になる。こないだ会社の上司とZOOM会議をした時は「寝てたの?」と言われた。超仕事モードで真剣にスタンバイしていたのに、なんかやる気がない人みたいに見えて、損する顔だ。けどだからって家の中にいるのに化粧をするのは気が進

おさるのジョージ論(カンノーロ)

 息子が毎日欠かさず見ているアニメ、それは「おさるのジョージ」である。子供が生まれる前は映画を毎日見て年間200本以上、独身時代は年間300本以上見ていたが、今やおさるのジョージにその時間を侵されてしまっている。私はあまり子供に子供番組を見せないようにしていて、というよりテレビがないので、自動的に何かのチャンネルを流すということができず、そういう週間がなかった。しかしイタリアの実家でイタリア語の勉強にいいかもと、アニメチャンネルを見せていたら、おさるのジョージが彼にどハマりし

母がもいだ甘夏が今(甘夏のリゾット)

 近所の家で、築何年なのだろう、木戸の雨戸を使っている家がある。大きいのに何となく一部屋一部屋が狭っこい部屋がたくさんある家。昔の家らしいあのそんなに幅が広くないベランダで、お父さんが一人肩身狭そうにキャンピングチェアに座ってタバコをふかしているのをよく見る。それに、どんなに暑い日でも薄い長袖を羽織っている痩せ細ったお母さんが、折れそうな物干し竿に布団を干しているのをよく見る。もともとなんとなく気になっていたお家なのであるが、そこの家の前に来ると、私の子供もいつも立ち止まるよ