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双極Ⅱ型障害の鑑別診断の重要性土屋 マチ・赤塚 大樹
うつ病は大きく分けて二種類に分けられ、それらはおおうつ病と双極性障害に判別される。その中でも双極性障害は病気の経過によって双極性障害Ⅰ型とⅡ型に分けて診断をしていく。双極性障害の発症頻度は 100人に1人弱くらいの頻度で、双極性障害の患者とまったく関わることなく人生を送る人はいないと言っても過言ではなく、双極性障害の症状が増加している昨今の現状をもってしても、単極性うつ病や双極Ⅰ型障害と比較するとまだまだ認知度が低い臨床状況がある。今回取り上げるのは双極性障害のⅡ型であり、双極Ⅱ型障害の概念の理解し、その病態像の特徴と診断をめぐる問題点や双極Ⅱ型障害を鑑別診断することの重要性について論述・検討しようとした論文だ。
双極Ⅱ型障害の歴史を遡ると、1970年に世界で初めて米国のDunner, DLらによって単極性うつ病と双極性の躁うつ病の二分法におさまらない気分障害の一類型として双極Ⅱ型という概念が提唱された事実がある。その後、Akiskal, HSが1983年にbipolar spectrum(双極スペクトラム)なる概念を提唱して、双極Ⅱ型障害に新たな位置づけを与えた。この概念をAkiskal, HSは「完全な躁病への連続性を保 ちながら、躁状態が弱められているという意味」と説明した。この概念は見落とされてきた可能性がある躁病エピソード・軽躁エピソードに対して、臨床家の注意を呼び起こしたという意味で診断学的功績は大きい。双極Ⅱ型障害は当初少数の研究者の関心を引くにすぎなかったが、一定の臨床単位であることを示す所見が集 積され、約4世紀半を経た1994年にはDSM-Ⅳに採用されるに至るなど、完全に双極Ⅱ型障害という病気として市民権を得た。
双極Ⅱ型障害は、うつ病相に加えて軽躁病相が見られる気分障害の一型であり軽躁という言葉が示すように、本格的な躁病エピソードまでには至らないという病気だ。特徴としては「軽躁」が挙げられる。躁状態は「本人が困る・周囲の人々が困るという状態」であるのに対して、軽躁状態は「本人もまわりもそれほど困らない程度の状態」を指す。その為、本人がそれを病的であると認めるのは難しいことや、その状態(軽躁)自体が本人の理想的な状態と思われている節もあると言われており、これを理由として軽躁であることについての病識を持ちにくいことが指摘されている。また他の特徴として、抑うつ症状に異質性が伴うこと・comorbidity(併病:二つの病気が並立していること)が起こりやすいこと・うつ症状と軽躁症状が同時に存在する混合状態が起こりやすいとされているなど様々あり、双極Ⅱ型障害の鑑別診断には困難を伴う。
まとめとして、軽躁というある意味・微妙な位置づけを持つ双極Ⅱ型障害を鑑別することが、相対的位置関係にある「現代型うつ病」と大雑把にひとまとめにされる病態群を同定し得ることになるであろうと考える。というものだった。やはりうつ病は判別が難しい病気であり、まだまだ研究して進展の余地がある取り組まなければならないものだと認識する事ができた。
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