対人援助者の情緒的・関係的健全性 I
私は卒業論文を書いていく構成の上で、うつ病を治療する上で薬を利用した治療法に関連した知識はすでに得ており、私が現在欲しいのは人との接し方や人の繋がりという部分である。この前提条件を踏まえた上で、今回取り上げた論文はうつ病というくくりのものではなく、対人援助者という大きなくくりの上での情緒的・関係的健全性になっている。健全者から見たうつ病患者における接し方は、ある意味で健全者が罹患者に対して対人援助するとも言える為、今回の論文は私の
本論文では、適切な援助の基礎である健全な援助関係を築くために不可欠である援助者の健全性について、情緒性と関係性の見地から考察を試みた論文となっている。対人援助には大きな課題が存在しており、それは援助者自身の関係性に関する健全性の喪失に起因する非援助的なかかわりが援助という名のもとに様々な場で今日も繰り返されているという現実的課題だ。言葉として理解するには非常に難しいが、援助とされない不健全な援助が援助としてなされているという事であり、援助を遂行していくはずである援助を行う側にいる者が抱える深刻な関係性の問題に起因し及ぼされる援助活動への否定的影響という根本的な課題を抱えているということだ。
大きな対人関係はこの図から読み解くことができる。今回はこの中でもうつ病に関して取り上げると、うつ状態にある人々の日常からは色が失われ、全てにおいて灰色がかったようになり、情緒的な機能不全に陥る。単なる社交的活動は彼(彼女)らの根本的必要を満たすものではないので、自ずと他者と何かの活動をしたり、共に時間を過ごしたりすることに対して興味が減退していく。特に他者が高揚感を覚えるような状況下においては情緒的な著しい距離感を感じるため、更なる孤立を招くことになるにもかかわらず、しばしば社会的な活動や他者とかかわりから自身の身を退こうとする傾向がある。
上記を踏まえた上で、他の論文でも記載されている事と同様の記載があったので紹介する。「個人的な生活において充分な友人がいなかったり、親密な関係を持てていなかったり、友人や同僚との関係に軋轢が生じていたり、満足いく他者との深いつながりを感じることができていないなどの満たされない部分を抱えている」といった点は、対人援助において悪い影響を非常に及ぼしやすいということだ。
本論文ではまとめとして、「セルフモニタリング、セルフリフレクションといった作業や、他者からの客観的なフィードバックによって自分自身の内側への旅を完成することはなくとも続けることは自分自身という存在を使って他者を援助す る対人援助専門職にとっては欠くことのできない意義あるプロセスなのである。」としている。これは援助者における健全性、すなわち社会的スキル(対人コミュニケーション、社会的相互作用、および職業的および個人的な存在の質を高める一連のソフトスキル)を持っている人というのが援助者の絶対的に必要なスキルであり、それが無いまま援助側に回っている人々が多い事が問題だと本論文で述べられているのだと考えられる。
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