特集 最近のうつ病の病型と治療非定形うつ病とパーソナリティ 多田幸司
前回は「難治性うつ」に該当する双極性障害についての論文を読んだが、そこでわかったこととしてうつ病には大きく二種類に分ける事ができる。
双極性障害はうつ病ではないと言うことと、双極性障害は細かく一人一人の症状が違った派生形が存在しており、複雑さがあると理解できた。
そこで今回は双極性障害のグループに該当しているうちの一つである「非定型うつ病」について調べる事にする。非定型うつ病は、私がうつ病を調べようと思ったきっかけを作ってくれた女の子がおそらくこれに該当しており、元々私はこれに対する知識を得て解決できるようになりたいという思いが強くあった。多様化してきているうつ病は病前性格の新しい捉え方が必要性を増してきている。
本論文では、従来のうつ病モデルや新しいタイプのうつ病の特徴についての説明があり、非定型うつ病における特徴的なパーソナリティ(拒絶に対する過敏性)について説明している。様々な記載があるが、まずうつ病の典型モデルに関して、日本では1940年代に下田光造によって初めて報告されたことが示されている。彼はうつ病を病前性格・誘因(心因とは異なり単なる引き金であり、原因は別の所にあるという意味)・発症と初めて統合的に理解し、これが日本では広く支持されてきた。
日本ではこの下田の粘着気質とテレンバッハのメランコリー親和性性格が有名で、この二人のうつ病の発症状況は内因性うつ病の典型的モデルとして良く知られている。この事実はこれまでの啓蒙書・うつ病パンフレット・様々な精神科教科書にもこの二つの計画傾向について必ず紹介されている事からも理解できる。だがこの二つに偏って解釈したが故に新たなうつ病に対する対策が不十分になってしまった。
新たなうつ病とは、1970年代頃から見られ、特徴として「比較的若い世代・真面目・几帳面・完全主義・他社配慮などの性格傾向を示さない・申し訳ないという感覚に乏しい・時には他人を責める・抑うつ自体は軽い・好きな事をしている時は楽しめる事もあるように見える・自分はうつ病だと認めたがる・社会復帰を嫌がるなどの特徴がある。これは1977年にエリートサラリーマンの男性に特徴的に見られた抑制が主体の逃避的色彩の濃い抑うつ状態である「逃避形うつ病」として初めて報告された。1995年には若年者において不安焦燥感が強く、他者に対して依存と攻撃を移すうつ病軍について「未熟型うつ病」と名付けた。2005年には「ディスチミア親和型うつ病」が報告されている。
上記から言える事として、近年の新型うつ病は時代・文化・価値観など様々な要因が影響して、従来の内因性うつ病の症状が変化したと考えられる。また、適応障害やストレス脆弱性を認める性格傾向の延長線上にあるような抑うつ状態、つまりうつ病群と薬物療法によって治療可能な軽傷うつ病のより困難な鑑別診断が求められるようになった。さらに、DSM-IVでは拒絶に対する過敏性という持続的な性格傾向が判断基準のなかに含まれるうつ病である否定型うつ病が新しく加えられ、病前性格の新しい捉え方が必要となってきた。
非定型うつ病は1959年に英国の医師によって名付けられたうつ病で、周囲の出来事に対する過剰な反応が性格特徴とされている。また、拒絶に対する過敏性が最も大きな症状だともされている。拒絶に対する過敏性に、何らかのストレスが加わることで鬱状態を引き起こし、その結果自己治癒的な仮眠や過食が生じると考えられている。さらに否定型うつ病は不安障害との結びつきが非常に強く、とりわけ社交不安障害との結びつきが強い。その為、社会機能の低下に絶望し鬱状態にいたる「不安の二次的抑うつモデル」の概要が当てはまる症状も少なくない。ある研究では非定形うつ病のおよそ18%が双極性障害と診断されたとの結果も存在する。
まとめとして、うつ病は時間の経過によって様々な症状が発生する新型のうつ病が生まれている。その為、一つ一つに視点を当ててうつ病の解決を図る研究のやり方は難しいと考える。
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1120111091.pdf