見出し画像

123)ココナッツオイルは健康に悪い!

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術123

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【ココナッツオイルは飽和脂肪酸が多い】

以前は、ココナッツオイルは健康に良いオイルとされていましたが、最近の研究により、その健康への影響についての見方が変わってきています。
 
コナッツオイルの特徴的な成分は、中鎖脂肪酸です。中鎖脂肪酸は他の飽和脂肪酸と比べて消化吸収が速く、エネルギーとしてすばやく利用される傾向があります。このため、ココナッツオイルが代謝を促進し、体重管理に役立つ可能性があると考えています。

実際に、ココナッツオイルには中鎖脂肪酸(炭素数が8から12の脂肪酸)が約65%含まれています。しかし、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸の75% 以上は炭素数12(C12)のラウリン酸で、代謝が早くケトン体生成能が高いC8とC10の脂肪酸は、ココナッツオイルの総脂肪酸の15%以下です。(下図)


図:ココナッツオイルには中鎖脂肪酸(炭素数が8から12の脂肪酸)が65%以上含まれるが、中鎖脂肪酸の約75%は炭素数12(C12)のラウリン酸で、炭素数8(C8)のカプリル酸と炭素数10(C10)のカプリン酸は合わせて脂肪全体の15%以下しか含まれない。
 
一方で、ココナッツオイルは飽和脂肪酸多く、飽和脂肪酸の摂取が悪玉コレステロールのLDL-コレステロールの血中濃度を高め、動脈硬化を促進し、心臓病のリスクを増加させることが多くの臨床研究で明らかになっています。これにより、循環器の専門家はココナッツオイルの摂取を制限することを勧めています。



【ココナッツオイルは動脈硬化を促進する】

ココナッツオイルが健康に悪いと言われても、多くの人は信じないかもしれませんが、医学界では常識です。少なくとも健康に良いという根拠はありません。米国心臓協会(American Heart Association)の代表的な学会誌で、循環器関連の学術雑誌としてトップレベルの評価を受けている「Circulation」という学術誌に以下のような報告があります。

The Effect of Coconut Oil Consumption on Cardiovascular Risk Factors: A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Trials(心血管リスク因子に対するココナッツオイル摂取の影響: 臨床試験の体系的レビューとメタアナリシス)Circulation. 2020 Mar 10;141(10):803-814.

【要旨の抜粋】
背景: ココナッツオイルには飽和脂肪が多く含まれているため、血清コレステロール濃度が上昇する可能性があるが、他の心血管危険因子に対する有益な効果も示唆されている。したがって、臨床試験のデータを使用して、ココナッツオイル摂取が血中脂質やその他の心血管リスク因子に及ぼす影響を他の食用油と比較して体系的にレビューした。

方法: 2019年6月までに報告された文献を検索した。ココナッツオイル摂取の効果を他の脂肪と比較し、少なくとも2週間続いた試験を選択した。
結果: 16 件の論文がメタ分析に含まれた。ココナッツオイルの摂取により、非熱帯植物油と比較してLDL-コレステロールが10.47 mg/dL、HDL-コレステロールが4.00 mg/dL、それぞれ有意に増加した。ココナッツオイルの摂取は、非熱帯植物油と比較して、血糖、炎症、肥満のマーカーに大きな影響を与えなかった。

結論: ココナッツオイルを摂取すると、非熱帯植物油よりも LDL コレステロールが大幅に高くなる。これは、ココナッツオイルの消費を選択する際の参考にすべきである。



つまり、ココナッツオイルは悪玉コレステロールのLDL-コレステロールの血中濃度を高めるので、心血管疾患のリスクを高める可能性があるという報告です。この論文に対して、編集部は以下ののようなEditorial(論説)を掲載しています。その内容を抜粋して掲載します。


Coconut Oil and Heart Health: Fact or Fiction?(ココナッツオイルと心臓の健康: 事実か作り話か?)Circulation. 2020 Mar 10;141(10):815-817.

【論説の抜粋】
ココナッツオイルが心血管疾患のリスクを高めるということは、その飽和脂肪含有量が血漿低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール濃度を上昇させるため、議論の余地はないと思われる。LDLコレステロールは、動脈壁にコレステロールを沈着させ、動脈の閉塞や炎症を引き起こすため、アテローム性動脈硬化症の主な原因となる。
 
それにもかかわらず、ココナッツオイルは有益な食品として一般メディアで多くの注目を集めている。実際、2016 年の調査では、アメリカ人の 72% がココナッツオイルを健康食品と考えていることが明らかになった。
 
これは、ココナッツオイルにはアテローム性動脈硬化症や心血管イベントの原因として確立されているLDLコレステロールを増加させる作用があることが知られているにもかかわらず、ココナッツオイルを天然で健康的な製品と称するココナッツオイルおよび関連業界のマーケティングにおける目覚ましい成功を表している。

この雑誌に報告された「心血管リスク因子に対するココナッツオイル摂取の影響」に関する論文のメタ解析と体系的レビューでは、非熱帯植物油と比較して、ココナッツオイルは血漿LDLコレステロールと高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールを大幅に増加させ、トリグリセリド(中性脂肪)、体重、体脂肪、血糖と炎症のマーカーには影響を及ぼさないことが明らかになった。

ココナッツオイルは主に飽和脂肪酸であるラウリン酸(炭素原子12個)で構成されているが、他の長鎖飽和脂肪酸であるミリスチン酸(炭素原子14個)やパルミチン酸(炭素原子16個)からも構成されている。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸のいずれの飽和脂肪酸もLDL コレステロールを増加させることが明らかになっている。
 
ココナッツオイルに最も多く含まれる脂肪酸であるラウリン酸は、LDL-コレステロールに対して顕著な直線的な影響を及ぼした。
ラウリン酸は多くの場合、炭素数 6、8、または 10 の短鎖脂肪酸と一緒になって中鎖脂肪酸として分類されている。しかし、炭素数 12 のラウリン酸は、カイロミクロンにパッケージングされて吸収される長鎖脂肪酸のように生物学的に作用する。このメカニズムによりLDLコレステロールが増加する。
 
C6からC10の真の中鎖脂肪酸は門脈循環に直接吸収され、LDL コレステロールには影響を与えない。ココナッツオイルは、中鎖脂肪酸が主成分であるかのような働きをする油ではない。
 ココナッツオイルには、炭素数 6、8、または 10 の真性中鎖脂肪酸が約13% 程度含まれている。したがって、ラウリン酸を中鎖脂肪酸として分類することは誤った名称であり、長鎖脂肪酸と捉えるべきである。

心筋梗塞、心不全、脳卒中などの心血管イベントに対するココナッツオイルの効果を判定したランダム化臨床試験はまだ無い。数億ドルという高額な費用、多数の参加者、そしてココナッツオイルと適切な対照脂肪による長年の治療を理由に、このような試験が試みられる可能性は低い。ココナッツオイルに割り当てられた人々のLDLコレステロールの上昇は何年にもわたって避けられず、危害に対する倫理的懸念が生じ、最終的な結果が得られる前に試験が中止される可能性がある。

ココナッツオイルの広告は、飽和脂肪酸以外の有益な成分が LDL コレステロールへの悪影響を補っているかのような印象を与えている。しかし、心血管疾患の危険因子やメカニズムに対するココナッツオイルの成分の有益な作用を裏付ける、ヒトを対象とした対照試験は無い。
ココナッツオイルは、心血管疾患のリスクを高める最も有害な食用油の1つであると考えられている。飽和脂肪含有量が高い別の熱帯油であるパー​​ム油と比較しても、ココナッツオイルは LDL コレステロールを大きく増加させた。
 
ココナッツオイルを非熱帯性不飽和植物油、特に多価不飽和脂肪が豊富な植物油に置き換えると、健康上の利点がある。
 
私たちは、今回のメタ分析の結果が栄養推奨事項や米国農務省の食事ガイドラインの開発に役立つと信じている。料理の現場では、風味や質感を高めるためにココナッツオイルを控えめに使用することはできるが、通常の食用油として使用すべきではない。



ココナッツオイルの92%は飽和脂肪酸で、一価不飽和脂肪酸は6.6%、多価不飽和脂肪酸は1.5%程度です。脂肪酸組成の約半分(48%〜49%)は炭素数12のラウリン酸です。このラウリン酸の摂取量に比例して血中のLDLコレステロールが直線的に増加することが明らかになっています。
 
つまり、ココナッツオイルは不飽和脂肪酸が極めて少なく、飽和脂肪酸が多いことで、LDLコレステロールを増やし、動脈硬化を進行し、心血管疾患を増やすので、健康に悪いという結論です。

C12のラウリン酸まで中鎖脂肪酸に分類されていますが、ラウリン酸はカイロミクロンを形成して体内に吸収されるので、血中コレステロールを高めます。ラウリン酸はココナッツオイルの脂肪酸組成の50%を占めます。ラウリン酸が多いという点で心血管疾患のリスクを高めるということです。
 
米国心臓協会(American Heart Association)の代表的学会誌のCirculationの論説で「料理の現場では、風味や質感を高めるためにココナッツオイルを控えめに使用することはできるが、通常の食用油として使用すべきではない。」と、ココナッツオイルの使用が危険であると警告していることは認識しておく必要があります。



【中鎖脂肪酸の消化管からの吸収法は長鎖脂肪酸と異なる】

脂肪酸は水に不溶性ですが、胆嚢から十二指腸に分泌される胆汁中に含まれる胆汁酸やリン脂質(ホスファチジルコリン)やコレステロールによって乳化されたミセルを形成します。ミセルというのは、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)をもつ物質が、水の中で親水基を外に親油基を内に向けて球状に会合した粒子です。ミセルは水溶性で受動拡散によって消化管粘膜の吸収上皮細胞内に吸収されます。 (下図)


図:中性脂肪(トリグリセリド)は小腸内で膵液中のリパーゼによって加水分解され、グリセロールと脂肪酸に分解される。脂肪酸は胆汁中に含まれる胆汁酸やリン脂質(ホスファチジルコリン)やコレステロールによって乳化され、水の中で親水基(水になじむ部分)を外に、親油基(油になじむ部分)を内に向けて球状に会合した粒子を作る。この粒子をミセルという。 
 
脂肪酸が腸管から吸収されるとき、脂肪酸の大きさ(炭素鎖の長さ)の違いによって代謝のされ方が異なります。炭素数が13以上の長鎖脂肪酸の場合は、腸壁を通り抜けると、腸管粘膜上皮細胞内で再びグリセロールと結合して中性脂肪(トリグリセリド)になりタンパク質などと一緒になってカイロミクロンというリポ蛋白質粒子になります。
 
カイロミクロンはリンパ管から胸管に入り、鎖骨下静脈から大循環系に入って全身に運ばれます。主に脂肪組織や筋肉組織に取り込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費されます。つまり、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸です。 

一方、中鎖脂肪酸はカイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝されます。糖質摂取が少ない条件では、中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体を大量に産生することができます。(下図)


図:食事から摂取した脂肪は小腸内で膵液中のリパーゼによって加水分解され、トリグリセリド(中性脂肪)から脂肪酸とグリセロールが分離される。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)と長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)は吸収経路が異なる。長鎖脂肪酸はカイロミクロンというリポ蛋白質粒子となってリンパ管から大循環系に入り、主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費される。一方、中鎖脂肪酸はカイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝される。糖質摂取が少ない条件では、中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体を大量に産生することができる。



【中鎖脂肪酸は肝臓で速やかに代謝される】

中鎖トリアシルグリセリド (MCT) は、ケトーシスを誘発する市販の安価な栄養補助食品です。 βヒドロキシ酪酸は、代替エネルギー源として機能するだけでなく、エピジェネティック制御によるアンチエイジング効果など、カロリー制限時に観察されるものと同様の健康上の利点があると報告されています。

前述のように、炭素数が少ない中鎖脂肪酸は胆汁酸によるミセル化は不要で、小腸吸収細胞に容易に吸収され、分子が小さいことから腸管で毛細血管に吸収され、長鎖脂肪酸のように中性脂肪に再合成されず、カイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝されます。(下図)


図:食事から摂取した脂肪は十二指腸や小腸内で膵液中のリパーゼ(①)によって加水分解され、トリグリセリド(中性脂肪)から脂肪酸とグリセロールが分離される。グリセロールは水溶性なのでそのまま小腸から毛細血管に吸収される。長鎖脂肪酸(②)はカイロミクロンというリポ蛋白質粒子となってリンパ管(③)から大循環系に入り、主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ(④)、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費される(⑤)。中鎖脂肪酸(⑥)はカイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈(⑦)に入って肝臓(⑧)へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝される(⑨)。糖質摂取が少ない条件では、中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体を大量に産生することができる(⑩)。



【ココナッツオイルはケトン食に使っても効果がない】

ケトン食では中鎖脂肪酸のMCTオイルを多く摂取するとケトン体を増やすことができます。ココナッツオイルは中鎖脂肪酸が65%以上含まれるからMCTオイルを使うケトン食に有用という意見があります。しかし、全くの間違いです。

一般に中鎖脂肪酸は炭素数6から12の脂肪酸が含まれます。ただし、炭素数6のカプロン酸 (C6) は、不快な臭いが強いため、一般的に栄養補助食品として消費されないため、除外されます。

カプロン酸はヤギの体臭様のきわめて不快な臭いを有します。カプリ (capri) とはヤギ (Capra aegagrus) のことであり、ヤギの毛の油の分解物から得られたことによります。

中鎖脂肪酸には単素数8のカプリル酸、炭素数10のカプリン酸、炭素数12のラウリン酸の3種類があります。(下図)


炭素数12のラウリン酸は長鎖脂肪酸に近く、ケトン体生成能が低いので、中鎖トリグリセリド(MCT オイル)にはカプリル酸 (C8) とカプリン酸 (C10)が主体のオイルが使われます。
具体的には、ココナッツオイルからラウリン酸などの他の脂肪酸を除去して、カプリル酸 (C8) とカプリン酸 (C10)が主体のMCTオイルが販売されています。

ラウリン酸はケトン体を高める目的では効果はありませんが、他の用途で汎用されています。MCTオイルはココナッツオイルから他の用途で使うラウリン酸を取り除いた後の廃棄物だったのですが、中鎖脂肪酸の健康作用が見つかってカプリル酸 (C8) とカプリン酸 (C10)を主体にしたMCTオイルが販売されるようになりました。
 
したがって、MCTオイルの方がココナッツオイルより安価で、MCTケトン食を実践するときは、ココナッツオイルを使っても無駄です。カプリル酸 (C8) とカプリン酸 (C10)を主体にしたMCTオイルを使うのが重要です。通常販売されているMCTオイルはカプリル酸 (C8) とカプリン酸 (C10)の割合が60%と40%程度です。この比率はココナッツオイルと同様です。
カプリル酸 (C8) の方がカプリン酸 (C10)よりケトン体生成能が高いので、カプリル酸 (C8)を主体にしたMCTオイルも販売されています。C8のケトジェニック効果 (ケトン体生成能) は、C10 と C12 の効果のそれぞれ 3 倍と 6 倍と言われています。

ケトン体を増やすことが目的であればカプリル酸 (C8)単独のMCTオイルが良いのですが、カプリン酸 (C10)にはケトン体生成以外にも有用な作用(抗老化や抗がん作用)があるので、C8単独とC8+C10のどちらが良いかは目的によります。



【中鎖脂肪酸カルニチンがなくてもミトコンドリアに入れる】

中鎖脂肪酸は肝細胞内のミトコンドリアに入り、炭素分子が1つおきに酸化されるβ酸化という過程に入ってアセチルCoA を生じてTCA 回路に入って代謝されます。脂肪酸がβ酸化のためにミトコンドリアに取込まれるとき、長鎖脂肪酸はL-カルニチンが必要ですが、中鎖脂肪酸はL-カルニチンの助けなしにミトコンドリア内に入って、速やかに代謝されます。

炭素数の少ない中鎖脂肪酸ほどミトコンドリの膜を容易に通過できるので、炭素数8のカプリル酸がカプリン酸(炭素数10)やラウリン酸(炭素数12)よりもケトン体生成能力が高いのです。炭素鎖長が 8 以下の脂肪酸のみが、カルニチン パルミトイル トランスフェラーゼ I とは無関係にミトコンドリアの内膜を通過できます。 これが、C8(カプリル酸)がC10(カプリン酸)やC12(ラウリン酸)よりもケトジェニック効果が強い理由です。(下図)


図:脂肪酸は肝細胞内のミトコンドリアに入り、炭素分子が1つおきに酸化されるβ酸化という過程に入ってアセチルCoA を生じてTCA 回路に入って代謝されるが、ブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoAはケトン体産生に利用される。脂肪酸がβ酸化のためにミトコンドリアに取込まれるとき、長鎖脂肪酸はL-カルニチンが必要であるが、中鎖脂肪酸はL-カルニチンの助けなしにミトコンドリア内に入って速やかに代謝される。
 
中鎖脂肪酸はエネルギーとして燃焼される効率が高く、体脂肪として蓄積しにくいので、最近では中鎖脂肪酸を含む脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリドあるいは中鎖中性脂肪)はダイエットや健康によい油として急速に普及しています。
 
手術後や未熟児の栄養補給に医療現場でも利用されている健康的な脂肪です。中鎖脂肪酸の入った食用油は体脂肪をつきにくくする特定保健用食品の関与成分となっています。米国では、アルツハイマー病の治療にも利用されています。

中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も10 倍も速いと言われています。このように中鎖脂肪酸のエネルギー利用速度は速いので、激しい運動の持続時間を延長する効果も報告されています。また、長鎖脂肪酸は感染防御や免疫系に負荷がかかりますが中鎖脂肪は影響が少なく、また組織への蓄積傾向や臓器障害のもととなる脂質過酸化反応も少ないためより安全に摂取できます。(下表)


表:長鎖脂肪酸トリグリセリドと中鎖脂肪酸トリグリセリドの性状の違い
 


通常は、ミトコンドリアでβ酸化で産生されたアセチルCoAはTCA回路で分解されますが、飢餓状態などブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoAはケトン体産生に利用されます。 
 
すなわち、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoAの一部は肝臓でアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンに変換されます。これら3つをケトン体と言います。アセチルCoAがアセトアセチルCoAになり、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を経てアセト酢酸が生成され、これは脱炭酸によってアセトンへ、還元されてβヒドロキシ酪酸へと変換されます。

ケトン体のアセト酢酸はブドウ糖が枯渇した時のエネルギー源になります。さらにβヒドロキシ酪酸は、遺伝子発現やシグナル伝達系を制御する作用もあります。抗老化作用や寿命延長効果、減量効果などもあります。(下図)


図:グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で脂肪の摂取を増やすと、肝臓では脂肪酸のβ酸化が亢進されて生成されたアセチルCoAはケトン体の産生に振り分けられる。アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は血液を介して他の組織や細胞に運ばれて、アセチルCoAに変換されてTCA回路でATP産生に使用される。
 
 
以上、中鎖脂肪酸をケトン食で使用する場合は炭素数8(C8)のカプリル酸と炭素数10(C10)のカプリン酸が主体のMCTオイルを使用すべきで、ココナッツオイルはケトン食には向いていません。むしろ、ココナッツオイルの取り過ぎは動脈硬化を促進して、心血管疾患のリスクを高めるという事実を知っておくことが大切です。循環器の専門家はココナッツオイルを多く摂取すべきでないと警告しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?