似たもの同士の秘密
「ほんと最低、あり得ない!何でこんな奴がモテてるの!?」
仲の良い友人が集まった飲み会で男友達が女子たちに言いたい放題言われている。もう一人いる男子もどうやら女子側の味方であるようだ。
ついにバレたか。私はその光景をビール片手に枝豆をつまみながら眺めていた。
この男、彼女ができても平気な顔して女友達と二人きりで遊びに行く。別に浮気をしているわけではない。友達として遊びに行くだけである。
そこに恋愛感情はない、おそらく。
今、そのことがバレて非難囂々なのである。
さあ、どう逃げ切ろうかな。まずはいったんビールを追加しよう。店員さんを呼びビールを頼んだところで火の粉が飛んできた。
「ふぃずもそう思うよね?」
ああ、捕まったか。できれば傍観者で終わりたかったのに。この問いの選択肢はハイかイエスだ。
「そだね〜」
適当に答えながらやってきたビールを流し込む。
頼むからこれ以上私に意見を求めないでくれ。
「友達なんだから別にいいだろ!」
私が困っているのに気づいたのか、彼はこう言い放った。女子たちの視線が一斉に彼に戻る。その目は笑っていない。苦笑いしてこちらを見てきた彼にごめんと目で謝りながら、私は一安心して持っていたジョッキを空けた。
別に恋愛感情がないと言い切れるのなら、恋人がいても異性の友達と遊びに行ってもいいと私は思う。友達に性別は関係ないと思うから。いわゆる男女の友情も成り立つと思っている。
恋人ができたからといって今まで仲良くしていた男友達と遊びに行かないとか、新しく男友達をつくらないとか、理解できない。気が合う人がたまたま男だったというだけ。
恋人に対してもそう。恋人が「ただいま」って言ってくれるならそれでいい。つまり、私の隣に彼が戻ってきてくれるのなら私のいないところで誰といようと構わない。一緒にいない間の行動はお互い自由でありたい。
この考えがマジョリティだとは決して思わないし、押し付ける気もさらさらない。その代わり、彼氏がいたら他の男とは遊ばないのが普通とか、そういう考えを全員が持っている常識だとは思わないで欲しいし、押し付けないで欲しい。
彼と私はこのグループができる前からの知り合いで、この考えを共有できる数少ない友人である。お互い恋人がいる時にサシ飲みに行ったこともある。だけど、彼はこの考えを持っていることが知り合いにバレても良いと思っているのに対し、私は絶対にバレなくないと思っている。だから、私は彼に絶対に言うなと釘を刺しているのである。
バレたくない理由はちゃんとある。女の子たちはたいてい同じ女である私がこの考えを持っていると分かったら必ず男の場合の2倍は引いてくる。そして距離を置かれる。
昔も一回あった。友達の彼氏と仲良くして嫌われたことが。私としてはあくまでも友達だった。彼氏にしたいとか、奪いたいとかそういう感情は一切なかった。だけど、友達からは「そんなわけない」と決めつけられ、距離を置かれた。それ以来、友達の彼氏と知ったら二人きりでは話さないようにしている。納得はできないが仕方がない。友達の幸せを壊したいとは思わないし、嫌われたくもない。
今回みたいなことがあるたびに、彼はいつも私を庇ってくれる。「女子たちよ、こういうことが普通にできちゃうから、この男はモテるんだ。」冒頭の発言に私は心の中でそう答えた。でも、私に言われなくても、この男の魅力にはもう十分気づいているんだろうね。非難している女子たちは多分この男のことを狙ってた。だから、目は笑っていないのに、まだ嘘だと信じたいって顔に書いてある。
そんなことより、庇ってくれてありがとう。味方できなくてごめん。今度ご飯奢るから許してくれ。