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井出君に(詩)


あの頃の記憶は僕の中で止まったまま。
昨日は今日のように
今も

京都の大学で井出君は僕と同じ朝日新聞奨学生だった
ゼミも一緒
で、授業にあまり集中出来ないのも一緒
なんせ、眠かった。
バイクで大学へ。
ゼミをこなし、大教室では寝ていた。

僕の店は西大路七条 井出君は鳴滝
僕は朝夕の配達だけ 井出君は集金業務も担わされていた
集金はつらく大変だ。学生にはできる仕事ではない
僕は井出君に僕の店では集金は奨学生は外してもらっているから
店長にお願いしたらどうだろうと何度も言った

井出君は大学に来なくなった。
下宿に呼びに行ったりした
でももうだめだ
もうだめだ
といわれた

いまどうしてるだろう
時々胸の中で
ぐっとなるのだ

僕はその後、新聞労働者の労働組合「全商業新聞分会」に加入した
機関紙は「ごきぶり」
ヒコウゼンソシキだという
ヒコウゼン?
それが非公然だとわかるまで時間がかかった
もう1980年代
ディスコが四条河原町で繁盛している
そんな時代だった。

今コロナで思う。
あのとき、ぼくは井出君に
もっと出来ることがあった。
でも出来ずに終わってしまった。
自分のことでいっぱいだった。

いま、できること
しなければならないこと

後悔しない選択は何か。
人間らしい選択は何か
時代の変革期に
井出君に思う

附:第141回国会(臨時会) 質問主意書 質問第一二号 新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書(吉川春子:共産)

二、新聞奨学生について(部分)

奨学生の相談にはまず、「セールスは任意という条件だったのに、毎日やらされている。」、「パンフレットでは朝四時出勤のはずが、実際には二時半に出勤させられている。」、「パンフでは四週六休のはずが実際にはひと月で四日も休めない。」など、募集パンフレットの労働条件違反、「新聞の不着で罰金五〇〇円、客からのクレーム一回で二万円の罰金を取られる」、「寝坊したといっては給与支払いを遅らせる。」、「有休を取らせてくれない。」など明白な労働基準法違反、「夕刊を配ると予備校に行けない。」、「学校に行けずに進級が難しくなった。」、「奨学生をやめたいが一括返済義務があるのでやめられない。」など、仕事のために学業を放棄せざるを得なかったり、一括返済義務に縛られて奨学生をやめるにやめられない、などの奨学生の苦悩の声が寄せられている。

1 新聞奨学生に対し奨学資金を貸与する条件として、新聞各社は系列販売店で稼働することを条件としている。新聞販売店をやめることになれば、奨学資金の一括返済を迫られる。このような新聞奨学生制度は、労働基準法で禁止された前借金契約の疑いが強いので、一定期間返済を猶予する、あるいは長期の分割返済とするなどの是正指導をすべきと思うがどうか。


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げん(高細玄一)文学フリマ東京39 な-20
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