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母を歯医者に連れていく 上の歯茎が入れ歯に当たって痛いと前から言っているので予約を入れておいた 病院の帰り際 昨日91歳で亡くなった義姉の話になり 義姉はもう痴呆になっていたから死んでも怖くなかったやろうなあと ふっという なんと返していいのかわからず エレベーターの階数ボタンを押しながらしばらく黙っていた そういえば親父も入れ歯合ってなかったよね でももうすぐ死ぬんだから入れ歯直すのはいらん!とか言ってたよね そうかね最期までバリバリ何でも食べてたけどね いやいや入れ歯は合ってなかったよと 少しずれた会話をしながら帰る

僕は今日夜いないからよろしくねといい 出かけるために銀だらの煮つけと胡麻和え作っといたからというと そんだけあれば十分やといい でも寂しそうな顔をする 母は友達からの電話が2本来ていたのに返信していなかったと一生懸命電話している 電話の後 友達が誤嚥性肺炎で喉につまり危うく死にかけたという話をし 自分も危ないわ時々詰まるからとか明るく話して居るうちに いろいろと疲れたのか寝てしまった 毎日食べたり寝たりしながら 毎日歳を取る 一日一日が隙間なくあることもあれば 隙間だらけで何もない日もある そんなことが溜まって溜まって生きている 寂しい ときどき死ぬのが怖くなるし そういう繰り返し 近いからこそ遠く やっぱり独りがいいと思いながら 寂しい そこから離れられない

寝てしまった母を起こすこともできないので つけっぱなしのテレビを消して そっと家を出る 永遠の別れの予行演習 いや 毎日の繰り返しのなかにある寂しさの主体


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