詩）言い難いもの

母が急に「アプリというのは何ね？」「そういうものがあるからみんな騙されるんね？」と聞くので　スマホを使っていない母にアプリとは何かをどう説明したもんだろうと考えて　アプリというのは薬みたいなものでちゃんと使えば効くけど悪い使い方をしたらだめだよねとよくわからない説明をしてしまう　金が欲しい若者が秘匿性の高い通信アプリで指示されて「闇バイト」を働いているというニュースを聞いて「アプリ」という「悪者」がいると思ってもしかたがないだろう　でもこう思うのは　けっして母だけのことでもないような気がするのだ　

先日ある都市の敬老パスの適用範囲を縮小する説明会の映像がながれていたが、説明会参加者は７０代以上がほとんどで「パスがなくなると病院がいけなくなる」「スーパーが遠いのでパスがなくなるのは困る」という意見が続いていた　ただ２０代の参加者が「私たちの税金がこのような制度を維持するために使われるのは我慢できない！」と発言し　市長はアンケートも同様の意見が多いということで見直しの方針を進めたいと締めくくった　
なんだか一方通行なのだ　お互いのことを思いあう気持ちが消え　他者への無関心　正論という名で封じ込めていく　

どうしようもなく　言い難いもの　そういうものに囲われてしまって　埋没した感情が裏からまともだと思われてきたものを引き倒していく　一番大切にしてきたと思ってきたものは薄っぺらい紙きれ１枚だったのか　いとも簡単にひっくり返されて　その先に何があるかは　もうわからなくなってしまった　　それを嘘だといえば　本当だか嘘かはもうわからなくなる　繰り返し　検証されることもなく　それが何だったかも忘れ去られ　その結果に従って　どうしようもなく生きている　意味不明の言い難いものの下で