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詩)生きているという事実

生きるという 逆らえない事実
生きなければならないという事実

何もないという 悲しくも うれしくもない事実
何もない という言葉にしても しなくても 変わらない事実

別世界 なんだろうか
昨日まで当たり前だった事実

写真さえなくなり
もうその昨日さえ 記憶の中にしかないという
事実

そこに立ち向かうとか そんな事じゃなく
明日 生きていかなきゃいけないとい
明後日も飯を食わなきゃいけないという
もがきたくても もがけないという
言いたくても言う相手もいないという
叫んだって叫んだって
何も変わらないって言う 

それだけが何も変わらない
目の前の瓦礫だけが 
そこに ある という
事実

体の震えが止まらなくて 眠れなくて
寒いのか寒くないのか分からなくて
海の底に沈んでいる悪夢にうなされて
地震がなくても地面が震えて
海なりに 風の音に 風に舞うビニール袋におびえて
生きるという
逆らえない事実
生きなければならないという
事実

《2011wrote》



2011.3月〈妻が大船渡に今日の深夜バスで向かいました。両親に会いに。〉
画像は大船渡の避難所で偶然テレビに映った妻の両親。3.11当時

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げん(高細玄一)文学フリマ東京39 な-20
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