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月をうむ 16

第十六話 生まれた月


 まっくら森に月が昇ります。

 待ち望んだ満月です。

 月の光は花となり、地上に降り注ぎました。
 
 火花を散らしたような美しい青い光を放つ花弁です。

 甘い蜜のような芳香が辺りにやさしく漂います。

 月見草畑にいたこびとじいさんは、地上に落ちた花の一つを手に取りました。

「これは、幻の月光花だ!」

 その花の輝きの前では、スズランランプの青白い明かりもぼんやりかすみます。

「しょせんはにせものの光か……」

 こびとじいさんはスズランランプを投げ捨てました。

 もともと伝説上の月光花をモデルとして作られたのがこのランプだったのです。

「月光花がこの森に根づけば、わしもランプ屋廃業だな……」

 こびとじいさんはそう言って、がっくり肩を落としました。

 それでも息を呑むような美しい光景にこびとじいさんはうっとりと目を細めました。

 まっくら森のぽっかり広場の真ん中で、ヒカリはモジャリが産んだ満月をじっと見上げていました。
 モジャリのおなかに触れた両手を今は大きく天に伸ばして降り注ぐ月光花を全身で受け止めています。

「きれい……。これが、ずっと見たかった月光花……」

 ヒカリの願いをかなえてくれたのはモジャリでした。

 満月を産む瞬間、月に引き上げられながら、モジャリは夜空に浮上して、音もなく破裂しました。

 破裂の寸前、モジャリの毛むくじゃらの毛の一本一本に青白い光が走り、そこからリン光の火花のような花が咲きました。

 それが月光花だったのです。

 ヒカリはいつまでも満月の光とともに降り注ぐ月光花を眺めていました。
 そうしてやっと夢から覚めて、もとの世界に戻ったのです。

つぎのおはなし

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