月をうむ 13
第13話 会合
ヒカリが戻ってきたというので、住人たちは全員ぽっかり広場に集合しました。
「よく戻ってきたのう、ヒカリ。どうかわしらの仕打ちを許して、月を取り戻すために力を貸してくれんかのう」
物知りフクロウは猫なで声で言いました。
ヒカリはフクロウの言葉などまったく耳に入らないといった様子で必死に訴えます。
「モジャリを助けて。おなかが痛くて苦しんでいるの」
「ふん、月を飲みすぎた罰だろう」
こびとじいさんは憎々しげに言いました。
「月溜まり池の蓮の葉にたまる月光や、こびと村のトタン屋根から流れる月をいつも飲んどるからじゃ!」
プンプン怒った様子のこびとじいさんを遮るように、モグラがずいっと前に出ました。
「それより、昼の世界と夜の世界の関わりについて教えていただけませんか? 月がなくなれば夜の世界は消えてなくなってしまうのですか?」
モグラ館長は緊張した面持ちでヒカリに尋ねました。
「この世界のことはよくわからないけれど、私の世界では太陽が月を照らしていたわ。太陽がなくなれば、昼の世界はなくなるし、月も見えなくなると思うけど、月がなくなって夜もなくなるなんてことはあるのかしら……」
「太陽とは昼の世界の光源ですね? それは一体どういうものですか? 月との関係をもっとくわしく教えてください」
モグラ館長は鼻先をつきあわせるようにしてヒカリに詰め寄ります。
「ちょっと待ってよ、それよりモジャリを助けるのが先よ。こんなに苦しんでいるのよ。お願い、誰か助けて」
ヒカリはスズランランプに照らされた住人たちの顔を見渡して必死になって言いますが、誰一人モジャリのことを気にかける者はいません。
ヒカリは泣きそうな顔でモジャリを見ました。
「おいらのことは気にするなぁ。おいら、森の嫌われ者だぁ。こんなことぐらい慣れてるさぁ」
モジャリは痛みをこらえて無理に笑ってみせました。
「今は非常時じゃ。モジャリのことをかまっているヒマはない」
フクロウは鋭い目でヒカリを見てきっぱりと言いました。
「この世界が消えてしまっては元も子ない。月を取り戻すことを第一に考えねばならん」
フクロウのもっともらしい言葉に住人たちもうなずきます。
誰もが月が戻ることを一番に願っているようでした。
「どうしたら月が戻るのか教えてくれ」
こびとたちは懇願するようにヒカリを見て言いました。
「月の子なら何か知っているでしょう?」
妖精たちもすがるような目でヒカリを見ます。
「何とかしてくれよ」
けものたちもそれぞれの鳴き声でヒカリに訴えかけます。
そのとき大ナマズの言葉がヒカリの頭をよぎりました。
―心から願えばかなう
ヒカリはみんなに言いました。
「心から願えば、きっと願いはかなうはずよ。みんなで一緒に月が戻るよう願いましょう」
住人たちは月の子であるヒカリの言葉を信じて、ぽっかり広場で三日三晩、月が再び現われることを一心に願っていました。
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