えんぴつ。
昨日、Yahoo!ニュースで、子供が使う鉛筆の種類、HよりBが多くなったという記事を読んだ。理由は筆圧が弱くて、硬い芯だと文字が書けないらしい。驚!
私が小学生の頃、持ち物の中で、一番好みで選べて、自由度が高いのは筆箱だった。サンリオなどのキャラクター、上からでも下かでも開けられた機能的な筆箱も人気があった。他には嵩張らない布製など、人と被らず、また人より可愛いものを選ぶことには命をかけた。中身も数々の色ペン、使い勝手のいい定規、痕を残さず消せる消しゴム、可愛い鉛筆削り。その子の個性は筆箱を見れば おおよそわかると言っても過言ではなかった←きっぱり。そしてメインとなる鉛筆においては壮大な派閥争いがあった。
大半の女子はHB、細い字を好んだ。綺麗なノートを書くにはもってこいの色の薄さ。さらに繊細さを求めて、下敷き無しで文字を書くと、穴を開けてしまうほどの硬さ、2H、4Hを求める強者もいた。そんな子は大抵、香り付きの消しゴムを使っていて、筆箱を開けるたびに『私の筆箱、いい匂い〜』といちいち大きな声で周りにアピールしていた。
私は断然B派。滑らかな書き心地を求めた。2Bもよく使った。友人のお姉さんからもらったデッサン用の4Bは色鉛筆気分で、算数の時間に円グラフを塗りつぶすのが大好きだった。が、当然ノートが汚くなる。注意散漫な小学生、袖口を気にする知恵がない。
したがって、私のノートは人気がなかった。細い文字、カラフルなペンで装飾されたノートを見せ合う女子の中で私は浮いていた。完全なる少数派。流行りのペン(蛍光ペン)の貸し借りもしたかったけど、真っ黒ノートには蛍光ピンクは眩しすぎた。書き心地を捨ててまで、H派には歩み寄れず、B派の男子と『砂消しはボールペンまでも消せる』という機能の話なんかで盛り上がってた。
だけど、ちょっとかっこいいなと思ってた運動神経抜群な男子が、Hの鉛筆を使っているのを見て心が揺らいだ。
男のくせに、球技上手いくせに、給食いっぱい食べるくせにH使うんだー。H派の女子と仲良いんだー。
書き心地を優先してこのままBを貫くか、日和ってH派に流れて、話に加わるか。あああああ、迷う。小学生は馬鹿なので、こんなことで迷う。
そんな時、救世主が現れた、Fだ。
HでもBでもない、新しい鉛筆のFを私は知った。
ちなみにそれぞれの意味はHはハード、Bはブラック。Fはフォーム、しっかり、と言うこと。Fは、HとBの中間だ。つまりHほど硬くなくてBくらい真っ黒にはならない。イメージ的には
こんなだ。
急にHにはなれないが、Fなら私だって許容範囲。私の中のFを使う者のイメージは最高にイカしていた←ばか。
問題は住んでるとこが田舎すぎて近所の文房具屋にはF鉛筆は売ってなかった。また、小学校は学区制だったので皆、住んでいるところが近くて、同じ文房具屋を使うので、鉛筆も同じものになってしまっていた。そのため、先生から必ず持ち物には名前を書くようにと注意があった。
基本、クラスメイトは鉛筆の端を削り、剥き出しになった木の部分にマジックで名前を書いた。何を気取ってたんだか、それをダサいと考えた私は、デパートまで行ってFの鉛筆を求め、1ダース箱買いすると名前を刻印してくれるサービスを利用することにした。手書きではない自分の名前を刻印してもらえることにものすごい高揚感を覚えた。生まれて初めてのオーダー。
その反面、せっかく刻印してもらうのが自分の名前なのがもったいない気持ちもあった。
次の週に参観日があった。もちろん私の母も来てる。将来の夢についての作文を読む授業だった。教団に上がった先生が
『授業を始める前に落とし物があるぞー、みんなに名前を書けって言ったよなー、お、よしよし、名前書いてあるな、
西城秀樹!西城秀樹はいるか!』
刻印というオフィシャルなものを作れる機会に 思い切ったことをしてしまった私がいた。