7インチ盤専門店雑記874「Down So Low」
リンダ・ロンシュタットの「風にさらわれた恋 Hasten Down The Wind」のB面ラス前に「Down So Low」というブルージーな曲が収録されております。あまりブルースとは縁がないシンガーですから、ここにこの曲が収録されていること自体、意外は意外です。これはトレイシー・ネルソンのカヴァーですね。ブルージーですが、黒人のそれとは違う、ホワイト・ブルースであることが見えてしまう曲ではあります。
トレイシー・ネルソンはマザー・アースのヴォーカリストですが、このバンドはシスコ界隈のローカル・バンドに近いのですが、フィルモアのヒストリーには欠かせない存在ですし、ボズ・スキャッグスが短期間在籍したことでも知られております。個人的には、全然ご縁がなく、「Down So Low」という多くのカヴァーを生んだ曲を知ってからも、全然手に入らず、そのわりに一部の常連さんに「トレイシー・ネルソンはありませんか?」と訊かれて「ありません!!」と返したことが何度もあり、悔しい気持ちもあります。…まあ、この曲が聴ければいいので、YouTubeで我慢というやつです。
この曲、リンダ・ロンシュタットのカヴァーは、コーラスの入り方がオリジナルに忠実で、このゴスペル感を求めて録音したことが知れますが、8名のchoir vocalsがしっかりクレジットされており、ジム・ギルストラップやクライディ・キングなど、LA界隈の上手い連中がしっかり参加しております。アンドリュー・ゴールド主導の録音だったと思いますが、そこら辺はさすがです。この辺りのクレジットを眺めていると、ついニヤニヤ顔になってしまいます。
多くのカヴァーと申しましたが、とりわけ私の好きなアーティストがカヴァーしているから知っているだけなのですが、まずはマリア・マルダ―です。1994年の「Meet Me At Midnite」に収録されております。売れなくなってからのアルバムですが、好きな盤ではあります。YouTubeで久々に聴きましたが、私が観た時点で視聴回数が207回だったことがちょいと寂しいです。
シンディ・ローパーの2011年のアルバム「Memphis Blues」でもカヴァーされております。
以前に一度記事にしておりますが、大好きなアルバムです。…というか、自分は東日本大震災で少しだけ人生を変えられた自覚がありますから、どうしても愛聴してしまうアルバムです。
他にもエタ・ジェイムスとかいろいろあると思うのですが、それはおいといて、とにかくリンダ・ロンシュタット、マリア・マルダ―、シンディ・ローパーの3人が共通して取り上げた曲だというだけでも気になりますし、ディグする対象になります。クレジット好きというものは、参加メンバーからだろうが、カヴァー曲のオリジナル探求だろうが、音質から見たエンジニアリングの特性だろうが、いろいろな角度から掘り下げて行けますから、案外聴く音楽が幅広くなります。…なりがちです。自分の場合、浅く広く聴くというリスニング・スタイルは、いちいちクレジットをチェックしないと気が済まない性格からもたらされた必然的なものなのかもしれません。