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さらまわしネタ帳039 - フェイセズ「メンフィス」

えー、大好きなフェイセズのマキシ・シングルです。7インチ盤45回転で4曲入り、無茶します。とにかくこの辺のレコードの呼称は全然統一されておりませんから、いちいち注釈が必要になります。昔は7インチ盤で表と裏に一曲ずつ入っているのがシングルで、7インチ盤に33回転で4曲突っ込んであるのがEPと呼びました。1976年頃から、7インチ盤に45回転のまま短い曲を4曲突っ込んであるものが出始め、これが「4-TRACK MAXI SINGLE」とわざわざ書いてありました。

12インチ・シングルが出始めた頃は普通に「12インチ・シングル」と呼んでいたのですが、いつの間にか12インチ・シングルを「マキシ・シングル」と呼ぶようになってしまったんです。それがCDの時代になって、当初は12cmのアルバムに対して、8cmのシングルがあったんですけど、だんだん12cmサイズのまま、薄いケースに入れられて3~4曲収納して売られるようになり、これを「マキシ・シングル」と呼ぶようになってしまいました。ですから12インチ・シングルとCDの「マキシ・シングル」は整合性はとれていますね。

さて、フェイセズの7インチ盤45回転マキシ・シングルですが、「MEMPHIS」がSide1の1曲目ですから、これは一応「MEMPHIS」のマキシ・シングルなんですね。とにかくこれが、滅茶苦茶ややこしいことになっております。

アルバム「馬の耳に念仏」に収録されていたアルバム・ヴァージョンは、イントロが非常に長く、曲全体で5分29秒あります。だいたい1分30秒あたりからヴォーカルが出てきますから、イントロ1分30秒です。ところが、このマキシ・シングルのテイク、2分44秒しかありません。ヴォーカルは0分30秒あたりから出てきます。つまるところ別テイクです。よくよく盤面のラベルを見ますと「(Edited from the album RVLP 3 THE BEST OF THE FACES)」と書かれております。「なんだベスト盤にはエディット・ヴァージョンが収録されていたんだったけか?」と考えましたが、「…まてよ、メンフィス、入ってたっけ?」となりまして、調べたところ、ベスト盤には収録されておりません。毎度のことながら、やってくれます、ロッドさん。

1976年にリリースされたベスト盤「スネークス・アンド・ラダーズ」ですが、大変評判の悪いベストでした。人間関係が悪くなってロニー・レインが脱退してしまったところまではよくある話ですが、このベスト盤、ロニー・レインの過去を消し去るかのように、ロニーがヴォーカルのものは一曲も収録されておりません。ま、100歩譲って、「ロッドの方が歌上手いし、しょーがねーか」と思うこともできますが、如何せんスナップ・ショットのコラージュ的なジャケットなのに、ロニーの写真がないんです。これでファンはちょいと敬遠してしまったような代物だったんです。

でも、そこはやってくれます。オリジナル・アルバム未収録の「Pool Hall Richard」と「You Can Make Me Dance, Sing or Anything」の2曲が収録されており、さらには「Had Me a Real Good Time」はアルバムと異なるシングル・ヴァージョンだったりします。まあ、正しい商売感覚なのかもしれませんが、こういう音源が多いんだ。時が流れて、今となっては貴重なレア音源収録盤ということになってしまいました。それに加えて、このマキシ・シングルには「Memphis」の別ヴァージョンが収録されているじゃないのというわけです。

如何せん、Side2が「Stay With Me」と「Cindy Incidentally」なんです。フェイセズ好きなら唸ってしまう代表曲がどちらも収録されているんです。嬉し過ぎる盤なんですけど、ここまで記してきたような理由もあり、何だか手放しに喜べない盤でもあるんです。さらにこれ、45回転のままなので音圧高めかと思ったら、全然そんなことはなくて、むしろ音圧低めなんです。LPのほうがはるかにいい音で鳴っております。溝が細いからですかね?

スリーヴもしょーもない写真で、山内テツがちゃんと居るのは嬉しいですけど、ロニー・レインはモエのボトルで半分隠れております。顔は写ってますけどね。…マッタク。まあ「酒好きの悪ガキども」的なキャラで売っていたバンドですから、「しょーもねーなぁ」で済ませられることなんでしょうけど、コロナ禍で時間ができてしまったときに手にとると、少々考えさせられる盤でもあります。

自分はカフェのオーナーでありながら、人の繋がりがどうのという話が嫌いな人間ですから、人間関係に関しては冷た過ぎるヤツですが、さすがにこんなご時世ですと、他人様の有難みが身に染みております。自分一人では何もできないというか、やはり多くの人に支えられているということを実感させられますからね。ちょいとフェイセズを聴くには、タイミングがよろしくなかったようですね。


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