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続・下町音楽夜話 0310「7インチ盤でジャズ・ドラマー聴き比べ」

申し訳ないが、今回もオークション話だ。落札した大量の7インチ・シングルに混じってジャズものが少し手に入った。かなり状態の悪そうな写真から判断して、あまり高額になるようなら下りることを決めて入札を見守っていたが、あっさり落札に至った。他の方も、やはり写真から判断して手が出ない代物だったのだろう。自分の場合、欲しいなと思う盤が2~3枚あったので、それを購入するつもりで入札価格を決めていた。結局のところ恐ろしく安い落札価格なので、かえって申し訳ない気分になるほどだ。

それでも手元に届いたものを開梱して思ったが、相当長期間放置されていた箱を丸ごとオークションにかけたもののようで、半分程度は処分することになった。調理で使う使い捨てビニール手袋をつけ、取り出した盤は意外にも状態が悪くない。状態が悪いのは外袋なのである。もう硬くなってポロポロと崩壊してしまうものもあったが、相当大事にされていた代物のようで、外袋が縦横に向きをかえて二重に掛かっているのである。これが予想外の効果を発揮しており、盤やスリーヴ、内袋は経年のダメージが少ない。そして面白いことに、一部の盤はまるでビニール・コーティングしてあったような状態になっており、頗る状態が良いのである。まったくもって、ラッキー以外の何ものでもない。

とりわけ有り難かったのが、数少ないお目当てのジャズ盤がこのコーティング状態で、およそ60年前のブツがタイムマシンに乗って現れた状況に、少々興奮してしまった。まずは、汚いものを直接ゴミ箱に捨てられるような態勢にして、外袋を一気に外すことにした。「長年の埃を纏った外袋さん、ご苦労様」ということで、一気にいっぱいになった30リットルのごみ袋にビニール手袋も捨て、周辺一帯に掃除機をかけ、アルコール消毒液で拭き掃除もしてからマスクを外したところ、古いものにつきものの匂いもない。タバコ臭もカビ臭もない。有り難い。

さらに軽くクリーニングをしながら、普段から使っているセロパック・タイプの外袋をつけていった。カンパニー・スリーヴなどとも呼ばれる内袋も意外に状態がよい。とても再利用や販売ができない盤に関しては、内袋だけいただくことにした。盤のクリーニングはお目当ての盤から始めた。状態は悪くない。レコードのことが分かっている人間が持っていたものなのだろう。残念なことに、一部の盤は塩ビ焼けが見られるが、音への影響は意外に少ないので、やはり予想外の収穫ということだ。

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さて、問題のジャズ盤だが、ドラムスがお好きだったか、マックス・ローチの面白いところが3枚含まれている。アビー・リンカーンをフィーチャーした「WE INSIST!」の7インチ盤は初めて目にする。スリーヴはやや日焼けしているが、シワもシミもない。さらにバディ・リッチとマックス・ローチがドラム対決を演じた「シング・シング・シング」、これば何度か見たことはある盤だが、こんなに状態がいいものはやはり珍しいだろう。そしてソニー・ロリンズ「サキソフォン・コロッサス」のジャケットのままのデザインは「モリタート」だ。こちらは一枚保有しているが、こちらの方が状態は良い。そしてこの盤も、ドラムスはマックス・ローチだ。

残るジャズ盤はフィリー・ジョー・ジョーンズとセロニアス・モンクの2枚だが、この辺は見たことはあってもレアであることには間違いないし、やはりこんなに状態の良い盤はお初だ。モンク盤はアート・ブレイキーがドラムスだから、有名ジャズ・ドラマーの聴き比べが7インチ盤でできることになった。なかなか面白い。そして一通り聴き比べてみて分かったが、長年人気のある有名盤の音源は、音質も頗るよいということだ。サキコロと「ウィ・インシスト」は驚くほどリアルな鳴りで、素晴らしい演奏とともに、その音質に聴き入ってしまう。

さて、その他はイージー・リスニングに近いサム・テイラーなどのサックスものや、昔ながらの男性ヴォーカルが多い。フランク・シナトラやパット・ブーン、ハリー・べラフォンテ、エルヴィス・プレスリーなどといったもので、随分上品な方がお持ちだったのだろうか。そして、極めつけに面白いものが一枚出てきた。店舗や劇場などの閉店を告げるナレーション入りのレコードなのだ。ということは、これらは店舗のBGMで使っていたレコードなのだろうか?それにしては状態が良すぎるので、何とも言えず納得がいかない。結局のところ、よく分からない。これには声優のスタッフ連中が思い切り反応していて面白かった。

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緊急事態宣言も終わりが見えてきたような状況だが、リバウンドは本当に起こらないのだろうか。もうそろそろ終わりにして欲しいと思う一方で、夜営業を再開しろと言われてもやりたくない気もしている。やはり罹りたくないという気持ちがあるのだ。難しいところだ。結局買い出しに行けないため、ウェブ通販やヤフオクなどを活用している昨今だが、これがニュー・ノーマルだとは思いたくない。昔思い描いていた自分の老後は、のんびりレコ掘りしながらカフェ巡りでもして、というお気楽なものだったはずで、やはり今でもその部分は変わっていない。やれやれ、本当にコロナが恨めしい。



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