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7インチ盤専門店雑記895「The Sorcerer」

1960年代のマイルスはセカンド・クインテットと呼ばれる、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスを率いて名盤を立て続けにリリースします。63年から68年頃ですね。フリーに行きそうで行かないような非常にスリリングな演奏がいいですね。まずはライヴ盤を出しまくり、それからスタジオ・アルバムを制作し始めます。アルバムで行くと「Miles Smiles」(1966)「Sorcerer」(1967)「Nefertiti」(1967)「Miles In The Sky」(1968)「Filles De Killimanjaro」(1968)あたりです。サイコーという時代ですね。ハードバップ期もエレクトリック・マイルスも80sのマーカス・ミラー主導期もいずれも好きなんですけど、60年代は格別いいですよぇ…。

この時期のアルバムで何が面白いって、マイルスがあまり作曲していないんですよね。「Miles Smiles」収録の好きな1曲「Circle」はマイルス作ですが、この曲だけです。「Sorcerer」や「Nefertiti」は、マイルス作はゼロなんです。ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックが作曲した曲が中心ですね。ジャズ・スタンダードみたいな曲もやっておりません。まさに新機軸という印象ですね。

ヘッダー写真は1981年にリリースされた「ハービー・ハンコック・カルテット」ですが、ここでは若きウィントン・マルサリスをフィーチャーし、リズム隊はロン・カーターとトニー・ウィリアムスです。ウェイン・ショーターはおりませんが、なかなかにスリリングな演奏を聴かせております。…この盤、何気に好きなんですよねぇ…。この盤、信濃町のCBSソニー・スタジオで録音されておりまして、まず日本でのみリリースされまして、後にコロムビアからワールド・ワイドにリリースされたものです。

まず2曲、クインテットの自己紹介がてら、セロニアス・モンクの名曲できます。「Well You Needn't」と「Round Midnight」です。ジャズ・ファンでなくとも知っているような有名曲ですね。この導入がまず好きなんです。その後はトニー、ロン、ハービーの順で自作曲を披露します。ロン・カーター作は「A Quick Sketch」、アルバムのB面を1曲で占める長尺演奏です。

続いてC面ですが、ハービー・ハンコックですが、ここでは1965年にリリースされた自身のリーダー・アルバム「処女航海 Maiden Voyage」で披露した「The Eye Of The Hurricane」で、ドヤときます。これに対して、C面後半はロン・カーターが1979年にリリースしたアルバムのタイトル・チューン「Parade」です。そして、いよいよアルバムのハイライト「Sorcerer」がきます。…まあ、勝手にハイライトと思っているだけですけど。

…何だかここでのハービー君、「ドヤ、これボクが書いた曲なんだもん」と言わんばかりに思えてしまいます。…勝手に思っているだけなんですけどね。聴き始めて「お、マイルスやん」と思うのですが、「待て、待て、「Speak Like A Child」でもやっていたな、…ということは…やはり」ハービー君の自作曲なわけで、「やるじゃねーか」となるわけです。

…そして終わりは、トニー君の曲をはさんで、スタンダード曲「I Fall In Love Too Easily」で決めるわけですが、これはマイルスだと「Seven Steps To Heaven」あたりでやっているわけです。まあ、ウィントン・マルサリスという若い才能を見出して、思い切りマイルスを意識したアルバムを作ってみたかったのかもしれませんが、曲の配置がとにかくいいんですよ。失礼ながら、勝手な思い入れとともに聴いて、ニヤニヤしてしまうんですけどねぇ…。ちなみにライナーノーツはアメイジング油井正一氏の素敵な文章です。…好きなんですよねぇ。

実に私的な聴き方でご紹介してみましたが、私は演奏解説をするほどジャズに詳しくはないので、クレジット・オタク風に書いてみましたとさ。

この後、ブランフォード・マルサリスも加えて「VSOP II」の冒頭でもやっているわけですけど、こっちの盤の演奏が好きなので、触れておくだけにしときます。




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