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7インチ盤専門店雑記828「ギルバート・オサリヴァンの7インチ」

とうに書いたかと思っていたギルバート・オサリヴァンに関して、noteで検索しても出てきませんから、書いてないんですかね…。ウチのお店では当たり前にリクエストも入りますし、7インチ・シングルもある程度揃えておくようにしているアーティストです。もちろん「アローン・アゲイン」と「クレア」は絶対に切らさないように、それなりの在庫もあります。

でもリクエストをしてくださるお客様は大抵その2曲はお持ちだったりします。…結果として、BGM用に購入したベスト盤LPを売ってくれという話になります。ベスト盤は2枚は売れましたねぇ…。シングルの売れ行きはどうだったか…。ウチでは何となくビッグヒット2曲以外の方が売れたように思います。…意外に見かけませんからねぇ…。

72年から73年がピークであることは間違いありません。英国では「アローン・アゲイン」は3位どまりなんですけど米国は1位、「ウー・ワッカ・ドゥ・ワッカ・デイ」が英国8位米国は売れず、それに続く「クレア」が英米両国で1位、「ゲット・ダウン」は英国1位米国7位です。もの凄い売れ方でした。その後も英国では中ヒットが続きますが、米国では早くも人気に翳りが見えます。実にヴェリー・イングリッシュな歌詞で聴かせるような曲が多い英国人の人気というのは、簡単には続きません。ちなみに、1972年から73年に人気があったということは、自分が洋楽にズブズブにハマっていった時期と符合するわけで、当然ながら思い入れの強いアーティストとなります。

とにかく、自分の場合は、「アローン・アゲイン」でも「クレア」でもなく、歌詞とは裏腹にアッパーな曲調の「ゲット・ダウン」で大好きになったんです。ワーリッツァーの音が印象的なイントロを聴くと、ヘタなロックよりも煽られたようになり、今でも興奮します。

そして個人的には「Nothing Rhymed」という1970年リリースの英国内で最初にヒットした曲が最も好きだったりします。

英国では1967年のデビュー以来、少しずつ人気が出てきたものですが、日本では「アローン・アゲイン」でいきなり人気者になったようなものでした。遡ってそれまでのシングルも再発されたりしました。1969年の不発曲「僕は泣きたい! I Wish I Could Cry」の7インチ・シングルが手元にありますが、「”アローン・アゲイン”でおなじみのオサリヴァンが初期に放った大ヒット曲、只今日本に到着!!」などという謳い文句が見えます。…大ヒットしてませんって。嘘はいけません、嘘は。

まあ、個性的なファッションやら、ネクラな歌詞が好きな人は好きという独特のファン層を形成することになりました。ハードロックやシンガー・ソングライター・ブームとは一線を画した洋楽ヒットのマーケットを作り出したように思います。いまだに好きな方は相当のコアなファンなんでしょうね。

先般、某音楽の杜さんが「そよ風にキッス」がお好きだという内容の記事をアップされておりました。さすがにAOR等お詳しい方ですから、渋いところを推していらっしゃいます。こちらも、「へぇ、オサリヴァン・ファンは数多いるかもしれないが、この曲をお好きという方は珍しいかも」と思い、ついコメントを入れてしまいました。

大ブームの後、英国では中ヒットが続いておりましたが、それも1975年頃で止まり、もう忘れられたような存在になった頃、1980年に英国では19位まで行った中ヒットです。復活するのかと思わなくもなかったですが、パンク/ニューウェーヴの嵐が吹き荒れた後の英国、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンともかなりテイストが違うものでしたからねぇ…。自分は少し経ってから7インチ盤を見つけて購入しましたが、ウルトラレア盤だろうと思っておりました。

でもこの曲、ギルバート・オサリヴァンのファンにとっては永遠の名曲の仲間入りなのだろうという印象もありました。ヒットさせようというというよりも、エヴァ―グリーンな曲が書きたいと思って作られたのではないかと思いましたね。10年やそこらでは声は変わらないかもしれませんが、「アローン・アゲイン」や「クレア」と同じ声だなということでニヤッとした記憶もあります。ポピュラー・ミュージックの世界から少しだけ遊離したような佇まいが、完全に時代性を排除しておりますから、いつまでも残る曲ではあると思います。

…ベスト盤には収録されませんけど、ファンは好きな曲って、他のアーティストでも結構ありそうな気がします。

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